「王道の編集でテーマに迫って欲しかったが…」21グラム KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
王道の編集でテーマに迫って欲しかったが…
ランダムなフラッシュバックの編集手法は、
観客の謎解き思考への
ポジティブな手法になったか、はたまた
混乱させるだけになったしまったのか。
フラッシュバックが頻繁で、
最終盤の状況にどのように至ったのか、と
観客に推理思考をもたらすという意味では
確かに飽きさせないで観せる作品ではある。
しかし、例えば、
夫の心臓を提供した女性が覚醒剤を
使用するのは、家族の事故前からなのか、
事故後の精神対応のためだったのか、
また、
大学教授がその彼女にアプローチしたのは
事故前からだったのか、
ドナーの家族と分かってのことだったのか
等々、後で分かることではあるが、
再鑑賞しないと、本当にそうなのかを
確認するすべのない厄介な作品にも感じる。
また、事故を自首した前科者が
釈放されてしまうのも
ストーリー展開上の安易な扱いに感じる。
3家族の交錯からの命の貴重さを謳う
とした内容であるが、これに絡めて
「21グラム」が精神の量だとしても、
タイトル名と大学教授の死が
全体の流れの中で
唐突で浮いた印象を感じる。
この作品は三つの家族が命という要素で
絡み合う重層的テーマ。
フラッシュバック手法という編集に
溺れないで、
王道で勝負して欲しかった作品
ではなかっただろうか。
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