JFK 新証言 知られざる陰謀 劇場版 : 映画評論・批評
2023年11月14日更新
2023年11月17日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかにてロードショー
オリバー・ストーンのライフワーク到着。JFK暗殺の真相に関する最新アップデート
ジョン・F・ケネディ大統領暗殺から、今年(2023年)で60年だそうです。暗殺事件の起きた11月22日を目がけて、日本でも本作「JFK 新証言 知られざる陰謀 劇場版」が公開されることになりました。
監督はオリバー・ストーン。1992年日本公開の「JFK」以来、久しぶりのJFK案件です。しかも今回はドキュメンタリー。プレス資料などを読むまでもなく、ケネディ暗殺事件の解明はオリバー・ストーンのライフワークだと伝わってきます。
それもそのはず。当初、2029年まで機密解除されないはずの本事件の記録文書は「JFK」全米公開の翌年、同作がトリガーとなって「ジョン・F・ケネディ大統領暗殺記録収集法」が成立したことで、数百万ページにおよぶ規模で機密解除されたのですから。オリバー・ストーンがその後も事件の真相を追い続け、映画を作るのは「映画監督の性」と言っていいでしょう。
つまり、今作は「JFK」からのスピンオフであり、アップデート版でもあるのです。前半は、JFK狙撃の瞬間を暴いていきます。リー・ハーベイ・オズワルドは3発撃った。教科書倉庫ビルの6階から撃った。そのうちの1発はケネディの身体を貫通し、前の座席にいたコナリー知事に当たり、合計で7回もの人体損傷を起こした……。オズワルドの狙撃への関与と、いわゆる「魔法の銃弾」について、いかに荒唐無稽な調査結果が示されたのかを解明していきます。
そして映画の後半は、オズワルドの経歴に関する調査が主題となり、展開は俄然加速します。スパイだった、二重スパイだった、カストロ(キューバ革命の)信奉者だった、ソ連に亡命していた、CIAにマークされていた、などなどオズワルドの数奇な経歴が詳らかにされていきます。
全体を通じ、ケネディ暗殺を調査する「ウォーレン委員会」がいかにいい加減で、欺瞞に満ちた組織だったか。また、委員会の出した「事件はオズワルドが起こした単独の犯行である」という結論がでっち上げ以外の何ものでもないということが明かされます。
オリバー・ストーンが言うように、暗殺事件の背景に陰謀があったことは間違いないでしょう。そして、暗殺を企んだ人々が、周到な準備の末にケネディ暗殺に成功。その後、事件の後始末をするためにウォーレン委員会を設置して、オズワルド単独犯と結論づけて幕引きを目論んだ。事件の輪郭が明確に浮かび上がってきます。
これは相当に面白い。面白いし、新しい。私は、このドキュメンタリーを見終わった後に、速攻で「JFK」を再見してしまいました。3時間半かけて。そして本作が「JFK」よりも、さらに踏み込んだ内容になっていることを再確認しました。
オリバー・ストーンは、事件の真相にほぼ到達しています。ざっくり言えば、これは単なる暗殺事件じゃなくて、ケネディの政敵たちが起こしたクーデターであったという真相に。そして、黒幕が誰であったのかもほぼ特定できている。
こうなったら、オリバー・ストーンにはより具体的に、当時CIAやFBI、ペンタゴンの奥の院で何が起きていたのか描いた「JFK ファイナル」的な一本を作って欲しいです。登場人物のロールがもっと分かりやすくて、誰にでも理解できるようなベタなやつを是非!
(駒井尚文)