コラム:大高宏雄の映画カルテ 興行の表と裏 - 第1回
2011年9月2日更新
テレビ局製作映画には反省材料多き夏興行
邦画は、テレビ局主体の作品が、いずれも目標に届かなかった。「アンダルシア 女神の報復」は最終で20億円を切り、上位5位にさえ入れなかった。「ロック わんこの島」は最終8億5000万円前後。「こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE 勝ちどき橋を封鎖せよ!」が同じく8億円前後と、想像を超えるような厳しさだった。
テレビ局が製作する作品が、少し飽きられてきたのではないだろうか。テレビドラマの映画化、見せ場や感動などをちりばめた娯楽作といった企画のありようから、テレビ媒体をフル稼働する宣伝手法まで、これまでうまくいっていた作品の中身や伝達のあり方に、疑問符が付いてきたと言ってさしつかえない。
なかで、やはり高い安定感を見せたのが、スタジオジブリの「コクリコ坂から」だろう。ジブリの真骨頂であるキャラクターものやファンタジーものとは一線を画す内容にして、最終で45億円前後まで数字を伸ばしてくるのは、やはりたいしたものだと言える。
他が真似できないジブリの独自性はそれとして、テレビ局はより一層、時代に合った企画の練り上げが必要になろう。それを得意としてきたのが他ならぬ、テレビ局だったのではないか。
そうした労苦を厭い、安易にできるテレビドラマの映画化や、いささか薄手な娯楽作品の映画化でお茶を濁していくと、さらなる危機が広がる気がする。だから、この夏興行はテレビ局にとって、非常にいい反省材料が出たのだと、私は思っている。決して、悲観することはない。
▽「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」=627万5367人・88億6310万9550円
▽「劇場版ポケットモンスター ベストウィッシュ ビクティ二と白き英雄レシラム」
「劇場版ポケットモンスター ビクティ二と黒き英雄ゼクロム」=381万7258人・39億3623万6800円(2本の成績)
▽「コクリコ坂から」=300万9128人・37億7876万500円
▽「トランスフォーマー ダークサイド・ムーン」=244万7788人・37億5090万5150円
▽「カーズ2」=208万842人・27億783万700円
▽「アンダルシア 女神の報復」=152万6510人・18億1824万5000円
▽「劇場版 仮面ライダーオーズ WONDERFUL 将軍と21のコアメダル」
「海賊戦隊ゴーカイジャー THE MOVIE 空飛ぶ幽霊船」=135万4107人・15億6167万7900円
※(夏興行作品で、興収で10億円を超えているもの。いずれも8月28日現在の成績。「アンダルシア」のみ8月21日現在)