コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第225回
2013年5月17日更新
第225回:人気シリーズに引っ張りだこのJ・J・エイブラムスを直撃!
先日、「スター・トレック イントゥ・ダークネス」のロンドン取材に行ってきた。スタジオがワールドプレミアの場所にロンドンを選んだのは、物語の舞台となっていることに加えて、アメリカ国外に強くアピールする狙いがあったからだと思う。2009年に公開された前作「スター・トレック」は、アメリカ国内では2億6000万ドル近い大ヒットになったにも関わらず、国外では1億3000万ドル程度しか稼ぐことができなかった。最近のハリウッド大作は国外で倍の収益を上げるのも珍しくないから、これはかなり残念な結果だ。
続編「スター・トレック イントゥ・ダークネス」を公開するにあたり、国際的な認知度をあげるべく、スタジオはキャストやプロデューサーを世界中に送り、時間をかけてプロモーションを行ってきた経緯がある。映画は期待通りの娯楽超大作に仕上がっているから、今回はアメリカ国外でもヒットが期待できそうだ。
さて、エンタープライズ号のメンバーから、悪役のベネディクト・カンバーバッチまで参加した今回の取材において、僕のお目当てはやはりJ・J・エイブラムスだ。新「スター・ウォーズ」の監督が決まってから初めてのインタビューとなるため、この話題を避けるわけにはいかない。まだ企画開発の初期段階にあるため、内容についてはいっさい明かしてくれなかったけれど、「スター・ウォーズ」のクリエイターであるジョージ・ルーカスとの関係について話してくれた。
「ジョージとは、ビジネスとは関係なく、社交的な場所で何度も会っているんだ。そのたびに、デジタルとフィルムの違いとか、VFXに対するアプローチとかについて雑談をかわしていた。実は、『スター・トレック』をオファーされたとき、ジョージに助言を求めたことがある。『どうしたらいいと思いますか?』ってね。するとジョージがなんと言ったと思う? 『そんなの知らないよ。ライトセーバーでも出しておいたら?』だって(笑)。『スター・トレック』に関してはまったく役に立たなかっただけど、いつもユーモアに溢れて、とても親切なんだ。ジョージには心の底から感謝している。子どものときに見た映画を作ってくれただけじゃなく、自らの経験や知恵を惜しみなく共有してくれるからね」
「スター・ウォーズ」を引き受けることに、プレッシャーはないのだろうか?
「これまで幸運にも関わることができたプロジェクトは、いずれも怖いという感覚よりも、エキサイティングな感情が勝っているんだ。『スター・トレック』のときも、『ミッション:インポッシブル』のときもそうだった。もちろん、これまでに足を踏み入れた既存の物語世界のなかで、『スター・ウォーズ』ほど壮大なものはない。だから、とても怖いけれど、それ以上にものすごくエキサイティングなんだ」
「スター・ウォーズ エピソードVII」は2015年の公開予定だ。映画の完成を楽しみに待つとしよう。
筆者紹介
小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。
Twitter:@miraikonishi