コラム:編集長コラム 映画は当たってナンボ - 第15回
2008年9月22日更新
第15回:アンジェリーナ・ジョリーは名実ともにハリウッドの女王
例年、9月は祝日が2回あるが、夏休みの後ということもあって、長距離の旅行やお金のかかるレジャーでなく「手軽に映画で」済ませる人たちが多いようだ。今年は13~15日が3連休となったが、新作では「パコと魔法の絵本」や「おくりびと」「大決戦!超ウルトラ8兄弟」などの新作が封切られ、それぞれ好調なスタートを切った。3連休の興収上位5傑は下記(カッコ内は配給会社、その後の数字は3日間の興収・100万円以下切り捨て)。
1「20世紀少年」(東宝) 5億3300万円
2「パコと魔法の絵本」(東宝) 4億6700万円
3「崖の上のポニョ」(東宝) 4億0700万円
4「おくりびと」(松竹) 3億4800万円
5「大決戦!超ウルトラ8兄弟」(松竹) 3億2500万円
何と、5本すべて日本の配給会社による日本映画という結果となったのだが、実はこのランキングには例によって注意書きが必要だ。3連休の間ブチ抜きで先行上映を行った、アンジェリーナ・ジョリーの「ウォンテッド」の成績がこのランキングには反映されていない。
「ウォンテッド」の3日間の成績は、動員が約35万6200人、興収およそ4億5100万円というもので、上のトップ5の中に当てはめると3位に相当する。通常、先行上映の数字は公開週の土日の成績に加算されて発表されるので、次週のランキングで「ウォンテッド」は通算7億円以上の興収を記録して初登場首位になるという仕掛けだ。
アンジェリーナ・ジョリー主演作のこれまでのオープニング記録は、05年末の「Mr.&Mrs.スミス」の興収5億6100万円。今回の「ウォンテッド」は先行上映の数字を含むが、一応、ジョリーの日本における過去最高のオープニング記録ということになる。
そもそもジョリーは、アクション映画で主役を張れる数少ない女優として非常に興行価値が高い。01年の「トゥームレイダー」は興収27億円稼いでその真価を示し、03年の続編「トゥームレイダー2」で20億円、そして「Mr.&Mrs.スミス」は現パートナーのブラッド・ピットとの共演ということもあって46.5億円。今回の「ウォンテッド」も先行上映の成績を見る限り、最終的に30億円以上は稼ぎそうな勢いである。
彼女以外に、アクション映画で同規模の売上が計算できる女優は、「バイオハザード」シリーズのミラ・ジョボビッチぐらいだろう。他には「チャーリーズ・エンジェル」の3人がいることはいるが、3人とも単独ではアクション映画で見かけない。
アンジェリーナ・ジョリー、今年33歳。セクシー女優にして、未婚のパートナーと共に6人の子供を育て、世界中を慈善活動で駆け回り、アクション映画で大ヒットを叩き出すという、常人離れしたセレブ像を呈示して止まない。今年のフォーブス誌のランキングでも、映画人ではパワーリスト第1位。まさに、ハリウッドの女王たる存在だ。(eiga.com編集長・駒井尚文)
筆者紹介
駒井尚文(こまいなおふみ)。1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。
Twitter:@komainaofumi