コラム:板尾創路の脱獄映画万歳! - 第2回
2009年8月31日更新
第2回:自分の身にも起こりえる恐怖「ミッドナイト・エクスプレス」
第2回は、アラン・パーカー監督による社会派サスペンス「ミッドナイト・エクスプレス」をピックアップ。若き日のオリバー・ストーンが実話を基に脚色を手がけたことでも知られるこの作品を、板尾創路が語る。
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◇「ミッドナイト・エクスプレス」ストーリー◇
70年代のトルコ。恋人と旅行中だったアメリカ人青年ビリーは、ほんの出来心からハシシ(麻薬)をアメリカに運び出そうとして空港で身柄を拘束される。禁固4年の実刑判決を受け投獄されたビリーは、看守の暴力が横行する刑務所で地獄のような日々を過ごす。さらに、出所目前になってトルコとアメリカの関係が悪化し、刑期が30年に延長されてしまう……。
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※「板尾創路の脱獄王」は本文中では「脱獄王」と表記します。
――「パピヨン」とは一転、非常に暗いトーンの映画ですね。
「息苦しくなるようなストーリーで、見ていてつらくなりますよね」
――この映画を初めて見たときのことは覚えてますか?
「いつどこで見たかは忘れてしまったんですが、けっこうヒットしていたのは覚えてますよ。最初はタイトルにピンと来なくて、『もうちょっとマシなタイトルつけたらええのにな』と思ったんですが、実際に映画を見て納得しました」
―――番印象に残っているシーンはどこですか?
「それこそ『ミッドナイト・エクスプレス』というセリフが出てくるところですね(編集部注:劇中に登場するミッドナイト・エクスプレス=深夜特急とは、脱獄を意味する隠語。主人公は受刑者仲間から『この刑務所に入れられたら、半病人になるか、深夜特急に乗るかのどちらかだ』と告げられる)。そうか、だからここ(刑務所)には停まれへんのや、とショックを受けたシーンです」
――この作品も実話がベースになっているそうですね。
「ホンマにあった話ということで、自分の身に起こる可能性もあるかも知れない、という恐怖を感じますよね。今でも十分に有り得る話ですよ。この映画の舞台は(70年代の)トルコですが、政治的な理由で国交がなかったりすると、一度捕まると出る手段がないんです。この映画でも、主人公は半ばアメリカに見捨てられたような状況になってしまい、周りの弁護士も金や何やと言ってばかりの腐った奴しかいないんです」
――そんな環境に置かれた主人公が、なりふり構わず暴れるシーンがありますが……。
「あそこはスカッとするような気持ちもありますし、やりすぎやという気持ちにもなりますね。自分もこういう状況に陥る可能性があるからこそ、主人公にはすごく感情移入しながら見てしまう。だからああいう感情を爆発させるシーンは、『そうや!もっとやれ!』と『もう止めておけ』が複雑に混ざり合って気持ち悪さを感じますね」
――暴力描写のリアルな痛々しさは「脱獄王」でも描かれていました。このあたりは意識して取り入れたのでしょうか?
「すごくいれたかったという訳ではないんですが、話を面白くしていくために必要なシーンやったと思います。刑務所生活をあまり快適に描いてしまっては、出たときの開放感がなくなりますからね」
――この映画をまた見たいと思うのはどんなときですか?
「映画関係の人と話している時に、ふと共通の好きな映画の話題になったりするんですよ。そこで話が盛り上がって、また見ようかなと思うんですよね」
――「ミッドナイト・エクスプレス」をチョイスした理由は何ですか?
「この作品に関しては、好きな映画という位置付けでは全然ないんです。『パピヨン』の場合は大河ドラマ的というか、壮大で夢があるストーリーなんですが、この映画はちょっとした出来心から大変なことに巻き込まれていく話なので、そういう意味では『パピヨン』とは対極にある映画やと思います。内容はホラーではないんですが、どちらかと言うと怖い印象が強く残る忘れられない1本です」
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「Blu-ray ミッドナイト・エクスプレス」
原題:Midnight Express
監督:アラン・パーカー
脚本:オリバー・ストーン
出演:ブラッド・デイビス、ランディ・クエイド、ボー・ホプキンス、ジョン・ハート
製作国:1978年アメリカ・イギリス合作映画
上映時間:2時間1分
価格:4980円(税込)/9月2日発売
発売・販売元: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント