コラム:板尾創路の脱獄映画万歳! - 第1回
2009年7月31日更新
第1回:マックイーン&ホフマンが魅せる男同士の友情「パピヨン」
お笑い芸人、俳優としてTV、舞台、映画と幅広く活躍中の板尾創路が、長編映画で初メガホンをとった「板尾創路の脱獄王」。eiga.comでは、脱獄映画好きが高じて自身も脱獄映画を撮ってしまった板尾監督が、自らイチ押しの脱獄映画を紹介する「板尾創路の脱獄映画万歳!」を、毎月1本、6回にわたって掲載する。
第1回は、スティーブ・マックイーン&ダスティン・ホフマンの2大スターが共演し、実話に基づく名作である「パピヨン」(73)の魅力に迫る。
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◇「パピヨン」ストーリー◇
1930年代のフランス。胸に蝶の刺青を入れていることから“パピヨン(蝶)”と呼ばれる主人公は、金庫破りで捕まったはずが殺人の罪を被せられ、終身刑の判決を言い渡される。南米ギアナのデビルズ島で過酷な強制労働を科せられたパピヨンは脱獄を決意し、偽札作りの天才ルイ・ドガと手を組むが……。
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※「板尾創路の脱獄王」は本文中では「脱獄王」と表記します。
――脱獄映画を好きになったのは何がきっかけだったのですか?
「やっぱり『大脱走』を見てからやと思います。僕らは日曜洋画劇場や水曜ロードショー(当時)などテレビを見て映画が好きになった世代なんですよ。当時は小学生ぐらいやったかな。『パピヨン』もテレビで見ましたね」
――板尾さんの初監督作「脱獄王」には、「パピヨン」に登場する刺青、孤島の刑務所、独房など共通点が多数見受けられますが、意識して撮ったのですか?
「特に意識したわけではないんですが、『パピヨン』は子供心にすごく印象に残っている映画なので、そういったシーンは無意識のうちに取り入れたのかもしれませんね」
――「パピヨン」の一番の見どころは何でしょうか?
「とにかくスティーブ・マックイーンとダスティン・ホフマンの演技力に尽きるんじゃないかな。『パピヨン』の場合は実話というのが本当にすごいですよね。僕が持ってるDVDの特典には、本人の映像や当時の刑務所跡地も入っていたのでリアリティがありますし無実の罪で捕えられた主人公の胸にある蝶の刺青は、『蝶のように飛んで逃げたい』という彼の想いを連想させますね。劇中にも蝶々を捕まえるシーンがありましたが、あそこはけっこうポイントになっているシーンやないかと思います」
――スティーブ・マックイーン、ダスティン・ホフマンが演じるキャラクターの魅力について聞かせてください。
「パピヨン(マックイーン)とドガ(ホフマン)はどちらも主役と言えますが、『逃げたい』という共通の目的以外はまったくキャラクターが違いますね。お互いが持ってないものを持っている、という分かりやすさがいいんやと思います。無鉄砲なパピヨンに対して、ドガは頭が切れるしお金も持ってるけど、体力がないし度胸もない。そんな2人をマックイーンとホフマンが対照的に演じている。キャスティングが素晴らしいですね。
映画の中では、狭い刑務所という場所でものすごく長い年月を共有していて、ほとんど彼らの人生そのものと言える。そんな中でああいう男同士の友情関係は理想ですね。それに友情を描いているからといって、クサいセリフなんてほとんどないんです。たとえお互いについて多くを語らなくとも、態度や行動で伝わってくる。そのあたりも魅力的なところですね。あとは音楽もドラマチック。ジェリー・ゴールドスミス(編集部注:ハリウッド映画の作曲家の大家で、『猿の惑星』『氷の微笑』など170作品以上の映画音楽を手がけた。04年没)の音楽と、夢か現実か分からなくなるような映像美が相まって、何とも切なくなるんですよ」
――2大スターの名演、優れた映像と音楽、「パピヨン」は公開から30年以上経っても色あせない名作ですね。
「そうなんですよ。この映画を知らないという人にはとにかく勧めています。『大脱走』は見ていても『パピヨン』は知らない人が意外に多いんですよ。僕の中ではマックイーン作品の中で一番好きといっても過言ではない作品。この映画を知らないのはもったいない! 見ないと絶対損やし、何度でも楽しめる映画やと思います」
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「パピヨン」
作品情報
原題:Papillon
監督:フランクリン・J・シャフナー
製作:フランクリン・J・シャフナー、ロベール・ドルフマン
原作:アンリ・シャリエール
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
製作国:1973年フランス・アメリカ合作映画
上映時間:2時間31分