コラム:熱狂!インド映画天国 この沼はスパイシー - 第3回

2022年12月2日更新

熱狂!インド映画天国 この沼はスパイシー

【「RRR」宣伝の裏側:後編】S・S・ラージャマウリ監督は“人格者” 来日プロモーションで見えた人柄

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この“沼”にハマってしまったら、抜け出すことは難しい……。本コラムでは、熱狂的信者を生み出し続ける“インド映画の魅力”を存分に伝えていきます!

前編&後編に分けて取り上げるのは、SNSを中心に絶賛評があふれかえる「RRR」(S・S・ラージャマウリ監督)。本年度のインド映画世界興行収入No.1作品で、オープニング興収5400万ドル(約74億円)を記録。10月21日に日本公開を迎えると「最高濃度の映画体験」に惚れ込んだファンが続出! 初週2日間での洋画興収第1位、日本公開されたインド映画オープニング興収歴代1位となりました。

テーマとなるのは、宣伝サイドから見た「RRR」ブーム。話をうかがったのは、株式会社ツインの配給営業マネジャー・古田雄揮さんと、宣伝会社マンハッタンピープル・原悠仁さん。後編では、「RRR」を支えたファンの存在、大盛り上がりだった来日プロモーションの裏側をお聞きしました。


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【「RRR」作品概要】

「バーフバリ」シリーズのS・S・ラージャマウリ監督が、英国植民地時代の激動のインドを舞台に、2人の男の友情と使命がぶつかり合う様を豪快に描くアクションエンタテインメント。「バードシャー テルグの皇帝」のN・T・ラーマ・ラオ・Jr.(通称NTR Jr.)、「マガディーラ 勇者転生」のラーム・チャランが出演。タイトルの「RRR」(読み:アール・アール・アール)は、「Rise(蜂起)」「Roar(咆哮)」「Revolt(反乱)」の頭文字に由来する。

1920年、英国植民地時代のインド。英国軍にさらわれた幼い少女を救うため立ち上がったビームと、大義のため英国政府の警察となったラーマ。それぞれに熱い思いを胸に秘めた2人は敵対する立場にあったが、互いの素性を知らずに、運命に導かれるように出会い、無二の親友となる。しかし、ある事件をきっかけに、2人は友情か使命かの選択を迫られることになる。


●愛でしかない! 「RRR」を支えるファンに感謝

――公開からしばらく経った現在もヒットが続いています。お2人が考える「RRR」の魅力とは?

原:最初はインド映画だと思って見たのですが、もはやインド映画というカテゴリーを超えていました。個人的には“映画”というカテゴリーも超えて、フェスに行ったような感覚でした。映画は見て聞いて楽しむと思いますが、こんなに体が震えるようなエンタメにはなかなか出合えない。劇場でしか体験できないエンタメ体験として、まさに“全人類が見るべき”だなと思いました。

古田:「バーフバリ」と同じく、ラージャマウリ監督節の効いた有無を言わさないエンターテインメント性が魅力だなと思います。よくよく見ればつっこみどころ満載ですが、それを考えさせないところも魅力です。僕らも正直最初は衝撃の連続過ぎて……初めて「RRR」を観たときは皆さんが感じられたように見せ場の連続で大興奮しましたね。特に肩車のシーンが監督のアイデアに度肝を抜かれました!

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――「RRR」を支えるファンの方々について教えてください。SNS等で盛り上がっていますが、印象に残っているファンの方はいますか?

古田:インド映画に限ったことではないかもしれませんが、「バーフバリ」「RRR」で出会ったファンの方々は愛にあふれていて、作品を非常に大事にしてくださる方々が多いです。コスプレや応援グッズを自作されたり、地方劇場に遠征されたり……、今楽しいと思うことを全力で楽しまれている印象があります。「バーフバリ」のときは応援上映でファンの方と交流する機会もあったのですが、100回以上劇場で見ていますっておっしゃっている方もいました。そこまでの愛情を注いでいただけるのは、映画業界の人間としては本当にありがたいことです。「バーフバリ」の応援上映は全国各地で特色のあるものをやっていたのですが、ファンの方も各地に遠征して、そこでお友達ができましたっていう話も聞いたので、エネルギッシュだなと。インドまで行かれた「バーフバリ」ファンの方もいました。会社宛てに「人生が変わりました」というお手紙をいただく機会もあって……、本当にありがたいことだなと思っています。

公開記念舞台挨拶にはファン500人が駆け付けた
公開記念舞台挨拶にはファン500人が駆け付けた

原:インド映画の宣伝は今回が初めてだったのですが、自分自身で楽しむことは大前提で、さらにそれを周りにおすすめしてくださる方がすごく多い印象です。SNSでは、「RRR」の主人公のモデルとなった叙事詩を丁寧に解説してくださった方や、劇中のシーンについて解説してくれていたり、日本に住んでいるテルグ語を話すインド人に向けて、映画の情報を翻訳して案内してくれていたり。そういった行動は映画や監督へのリスペクトと愛でしかないので、こんなに素敵な方々に支えられている作品なんだと、皆さんに感謝しています。

古田:インド映画の背景などは知らない話も多く、我々も本当に勉強になっています!布教活動をしてくださるファンの方々に恵まれて、日本の宣伝は本当にありがたかったです。

●ラージャマウリ監督は人格者 来日プロモーションで見えた人柄

――「RRR」のプロモーションでは、ラージャマウリ監督、キャストのNTR Jr.ラーム・チャランが来日しました。実現されるまでの苦労や想定外だったことはありますか。

古田:もともとはコロナの状況もあって、ラージャマウリ監督一人だけ来日する予定でした。実際に来られるのかわからない状態だったので、空港に降り立つまでは不安でした。規制が緩和されたことや、監督がキャストに日本のファンの熱さを見せたいとおっしゃっていたこともあって、来日できる人数が多くなりました。

原:本当は、音楽を担当されたM・M・キーラバーニさんも来日される予定だったんです。舞台挨拶の台本も用意していたのですが、体調不良で来られなくなってしまいました。

古田:皆さんが来日して、空港で人数を数えていたら一人足らなくて(笑)、あのときは焦りました。そこでインド側のスタッフに確認したところ、飛行機に乗る直前でキャンセルになったことがわかりました。取材も予定していて、ご本人も来たがっていたので残念でした。

日本の伝統衣装である法被がプレゼントされた
日本の伝統衣装である法被がプレゼントされた

――舞台挨拶では、ラージャマウリ監督やキャストがとても仲が良さそうでした。

古田:監督がお父さんで、やんちゃなお兄ちゃんがNTR Jr.、弟がラーム・チャランといった感じで、みんな本当の家族みたいに仲が良かったです。

原:本当に親子みたいでしたよね。自由なキャスト2人(監督は舞台挨拶で2人をお猿さんのようだと表現していましたが)を監督がコントロールしてくれました。ポスターのサインも結構な量をしてもらったのですが、監督が2人に「サイン書いた?」って促してくれて、現場でもプライベートでもそうだったんだろうなっていう関係性が垣間見えました。

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古田:舞台挨拶のときも、キャスト2人がぎりぎりまで準備していると、監督が「もう時間だからスタッフを待たせるな」って声をかけてくれたり……本当にお父さんのようでしたね。

原:本当にラージャマウリ監督は人格者でした。舞台挨拶のときにラーム・チャランのコスプレをしてくださったファンの方がいたのですが、監督があの人と写真を撮りたいって言っていたので、ご案内させていただき写真を撮ったんです。その方への感謝はもちろんですが、その後に、案内した自分にもちゃんとお礼を言ってくれるんです。そういった皆には見えないような小さな行動のひとつひとつからも優しさがにじみ出ていました。

古田:監督は本当に素敵でした。まったく偉ぶらないですし、インド側のスタッフの誰より集合も早いですよね。

原:キャスト2人もインドの国宝のような方たちなので少し構えてしまっていたのですが、とても気さくでした。気軽に冗談を言ってくれたり、渋谷が気になっていたみたいで、渋谷への行き方やオニツカタイガーについて聞かれたりしました。ファンの皆さんのなかでは、ラーム・チャランが鮭おにぎりを食べていたことが話題になったのですが、実はコンビニで売っているポテトサラダが挟んであるサンドイッチも美味しそうに食べていましたよ(笑)。

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筆者紹介

映画.com編集部のコラム

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