コラム:熱狂!インド映画天国 この沼はスパイシー - 第1回

2022年10月20日更新

熱狂!インド映画天国 この沼はスパイシー

“インド沼”への誘い――踊るインフルエンサー・Mayoのおすすめインド映画鑑賞術

この“沼”にハマってしまったら、抜け出すことは難しい……。本コラムでは、熱狂的信者を生み出し続ける“インド映画の魅力”を存分に伝えていきます!

記念すべき第1回目は、オンライン配信サービス「シネマ映画.com」で10月14日から開催中の「『RRR』公開記念JAIHOインド映画フェスティバル in シネマ映画.com」にあわせ、インドと日本をつなぐ活動をしているインフルエンサー・Mayoさんにインタビュー! インド映画鑑賞初心者への心得や、ダンスの魅力、インド映画がもっと楽しくなる熱狂ポイントなどを聞きました。

日印つなぐインフルエンサー・Mayo
日印つなぐインフルエンサー・Mayo

Mayoさんはヒンディー語能力を活かして、インド向けユーチューバー活動をしています。インドからのYouTubeチャンネル登録者数は185万人を突破(10月現在)。インド市場で一定の認知を獲得しており、日印の架け橋となることを目指して多岐にわたる活動を続けています。また、日本向けにもYouTubeチャンネルを運営中。インドの魅力を発信したり、ヒンディー語を教えるなど、計4つのチャンネルを更新しているんです。


●どうしてインド向けユーチューバー活動を行うようになったのか?

――今の活動をスタートするきっかけや、活動する上で重視している点はなんでしょうか?

Mayo:大阪大学外国語学部ヒンディー語専攻に進学したので、ヒンディー語の言語から入ったんですが、インドへの留学後、いったん、一般的な外資系のコンサルティングファームという、インドとは関係のないところに就職しました。けれども、インドと関係ない生活を送っているうちに「ヒンディー語を忘れていっている」とか、「せっかくインドというアイデンティティがあったのに、それが薄れていっている」と感じていたので、ヒンディー語を日本人向けに教えるYouTubeチャンネルを開設しました。そこがユーチューバーとしての活動の一歩目でしたね。最初はユーチューバーになりたいとか、広めたいということよりは、自分がヒンディー語を忘れないようにというところからスタートしました。1年くらい動画をアップしているうちに、インドの方々が私の動画を見つけてくれて「ヒンディー語で日本語を教えて欲しい」というコメントが増えてきたんですね。そういったリクエストにお応えして、現在のMAYO JAPANというチャンネルを開設するに至りました。

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最初はヒンディー語で日本語を教えているチャンネルがなかったので、すごく好評ではあったんですが、私からすると日本語を教えるだけの動画ってそんなに面白くもなかったんです。もうちょっと動画の幅を広げたかったので、渋谷へ行って動画を撮ったり、トラベルブログのようなことを始めたら、そちらの方が人気になったんです。やっぱり言語を勉強したいという人たちよりも、日本についてもっと知りたいという人の方が圧倒的に多い。そのコンテンツの方が、動画の再生数が伸びることに気づきました。今は、日本全般のこと、日本とインドに関することをMAYO JAPANチャンネルにアップし、日本語を教えるチャンネルは途中で切り分けました。

●インドへのリスペクトは欠かさず 踊る時のポイントは?

――では、ダンス動画を作る際に意識し、大切にしているポイントはなんでしょうか?

Mayo:元々高校生までクラシックバレエをやっていたので、ダンスは得意だったんです。そんな私とインドを繋いだのは、“踊る”という文化なんですね。「インド=踊る」というと、ステレオタイプのような感じがするのですが、実際にみんな踊るんですよ。結婚式とかちょっとした催し物、家族や親戚が集まった時、なぜか踊るような文化なんです。ダンス動画も非常に有名なので「…だったら、私も踊るしかない。踊っていた方が面白いことになる」という感じでした。

大切にしているポイントは、インドへのリスペクト。ダンス動画の中でも、色々なジャンルがあって、古典舞踊の要素が入っていることが多いんです。ただ、古典舞踊と言っても、地域ごとにさまざまな踊りがあります。私は東インド古典舞踊「オリッシーダンス」を習っているのですが、スタイルや衣装がだいぶ違うわけです。その辺を理解して「ここは古典の要素が入っているからおふざけはやめておこう」とか、「そのダンスを踊る時は、セクシーな衣装はやめておこう」など抑えておくべきポイントがあります。

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一方で、女優さんがセクシーに踊り上げるようなものもあります。そういうジャンルであれば、セクシーに踊ったとしても問題ないんです。けれども、古典のような文化を重視しているようなもの――例えば、映画の中で神様に捧げるようなものですね。それをセクシーなダンスで攻めてしまうと、インドに対するリスペクトがないと、捉えられても仕方がありません。ダンス動画を切り取るのではなくて、映画全体のストーリーをまず把握して、どういった趣旨の音楽、衣装、スタイルなのかというのを理解する。そんなリスペクトを心掛けたうえで踊ることを意識しています。

――「Main Tera Boyfriend」というダンス動画はとてもクオリティが高いですね。

Mayo:男性ダンサーのKAKETAKUさんという方が、最近インドのダンスを踊っているのを私がインスタで見かけたんです。「Like」を押したら向こうから連絡をいただいて、「インドでも活動されている方なんですね、今度コラボしませんか」というところからスタートしました。

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彼はダンサーさんが沢山いるコミュニティみたいなものを持っていて、かつ映像関連のお仲間もいらっしゃるという方だったので、皆さんのお力を借りることができました。さまざまな分野で活動されている方々が集まって成り立った、珍しいタイプのダンス動画なんです。

――これまで一番反響のあった動画が「Main Tera Boyfriend」になりますか?

Mayo 最近あげたばかりの動画なので視聴回数はまだ多くありませんが、短期間では一番再生数を稼いでいますね。「ピンガ」というダンス動画がありまして、それはサンジャイ・リーラー・バンサーリー監督の映画のダンスなんです。2019年、コロナ前くらいに踊ってアップしました。そうしたらまわりまわって、バンサーリー監督が見てくださって、お褒めの言葉をいただきました。それを伝えてくださったのが、バンサーリー監督の別作品で振付を担当した女性です。さらに、その振付師の方の作品のダンスも教えてもらって踊ったんです。製作サイドにまでダンス動画が届いたというのが、一番大きな反響でした。ソーシャルメディアで発信することで報われる時代なんだなと実感した出来事です。

サンジャイ・リーラー・バンサーリー監督(右)
サンジャイ・リーラー・バンサーリー監督(右)

●インド映画の魅力を語る! もっと楽しくなる”ポイントも

――では、初めて見たインド映画はなんでしょうか?

Mayo:「恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム」に衝撃を受けて、劇中のダンスを大学の学祭で踊ったりしたので、凄く印象に残ってます。「恋する輪廻」はいわゆるスタンダードなインド映画。ストーリーも輪廻転生的な要素がありつつ、ダンスも典型的な感じでしたし、とても楽しめたので、思い入れのある作品です。

「恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム」
「恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム」

――では、今までで“ベストワン”となるインド映画はどんな作品でしょうか?

Mayo:サンジャイ・リーラー・バンサーリー監督の作品が好きです。最近では「ガングバイ・カティヤワディ」という作品がありまして、それはインドの風俗街で逞しく生きた女性の話なんですけど、かなり感情移入できるタイプの作品でした。

「RRR」
「RRR」

それと、これから日本で公開されるからと……いうわけではないのですが、「RRR」は衝撃的でしたね。私はインドの映画館で、みんなと一緒に叫びながら見たんです。179分の作品ですが、一気に「ワアー!」となる感じ。私はヒンディー語の話者なので、ヒンディー語の作品を挙げたいのですが……盛り上がる作品としてのベストワンを選ぶとしたら、今は「RRR」ですね。

――“インド映画初心者”におススメしたい作品を1本あげるとしたら、どの作品でしょうか?

Mayo:やっぱり「きっと、うまくいく」(2009)が最初の作品としてはいいと思います。例えば、「バーフバリ」シリーズもいいんですけど、ヒンドゥー教の背景などがわかっていないと、完全には楽しめないと思うんです。「きっと、うまくいく」は学生モノ。みなさん学生を経験されているでしょうから、共感しやすいと思いますし、ダンスシーンも王道。オススメです!

「きっと、うまくいく」
「きっと、うまくいく」

――インド映画鑑賞が“もっと楽しくなる”ポイントを教えてください。

Mayo:インド映画と言ってもボリウッド、タミル、テルグなど、地域によって、ジャンルや、ダンスのスタイルが違うんです。そういう点をわかったうえで見ると、より楽しめると思います。ダンスのスタイルは、北部が美しく洗練されていて、古典を交えたものが多い。一方、南部は土着的、みんなでワイワイ踊る、激しい感じのダンスが多いと思っているんですが、そんな違いがわかってくると、通な気持ちになりますよね。

また、北部にもコメディ、他にも色々なジャンルの作品があるので、どの地域にも表現の違いがあると思います。ダンサー視点で見た場合、確かに南の方がコミカルでダイナミック、コメディのネタが大袈裟のような感じがしています。ダンス時の衣装は「自分も着てみたい!」と思いながら見ていて、そのスタイルの違いも面白いと思っています。

――「JAIHOインド映画フェスティバル」で上映される作品についての印象を教えてください。

Mayo:どの作品も楽しめると思います。「ニールジャー」は飛行機の中で見ました。かなりシリアスなので好き嫌いがわかれると思いますが、インドって“偉人系の映画”が多いんですよね。メアリー・コム、ガンディー等々。今回のニールジャーさんもそうですし、インド軍で活躍した女性の映画もあったと思うんですけど、そういうのを見ていると、インドってやっぱり自分の国に対して誇りがあって、それを忘れないようにしようとか、偉人を称える風潮が強いのかなと思います。そういう中で、インド人の生き様とか、考え方とか気概とかを感じ取ることができるので、偉人系の映画は勉強になるなと思います。そういう意味でもおススメですね。ただ、私はやっぱり踊る系の作品を気軽に見ちゃうところがあります。

「ニールジャー」
「ニールジャー」

●インドと日本の架け橋となる活動 今後の展望は?

――インド映画に興味を持っていて「これから見てみよう」と考えている方に、改めてポイントを教えていただけませんか?

Mayo:インド映画という先入観をなくして見て欲しいという思いがあります。日本ではテンプレ化されてしまっているように思えるんです。あまりストーリーの中身はないけど、いきなり踊り始めて楽しい……そんな固定概念を持っている方がいるかもしれません。インド映画は、地域によってシリアスなものもあれば、コメディもありますし、踊りで見せることもあれば、ストーリーで見せる作品もあります。また、CGで見せるものもあれば、演技力で見せるものも。国土が広くて製作地域が分散しているため、本当に多種多様な映画があると思います。もしかしたらドハマりできるジャンルがあるかもしれません。まずは、いくつかのジャンルの作品を見ていただきたいです。

個人的なオススメポイントは、やっぱりダンスを含んだインド映画の美しさです。実は、最初の頃は言語をきちんと聞き取りたかったので、ダンスシーンをとばして鑑賞していました。でも、古典舞踊は絶妙な目の動き、手の形で魅せるので、1回見ただけではその良さがわからない。「RRR」のように最初からドはまりできるものもあれば、何度も見ることで良さがわかってくるものもあります。今ではダンスシーンが大好きになりましたし、踊り、衣装、目や手の動きなど、細部を見ながら楽しめるようになりました。少し探索していくような気持ちで見ていただけると、その良さに気づけるんじゃないかなと思います。

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――最後に、今後の活動や目標を教えて下さい。

Mayo:インドでは日本に対して良いイメージがあるんですよね。その一方で、日本ではインドに対して、まだまだ負のイメージを持っている方が多いような印象があるんです。好きな人はめちゃくちゃ好き。でも、全く興味のない人にとっては、あまり……と言うのが現状なのかなと感じています。

そのイメージをどうやって変えていこうかなと考えた時、やっぱり映画は間口が広くていいなと思えたんですよね。ライトなところから入っていただき、みなさんを“インド沼”に突き落としたい(笑)。インドの良い側面をもっと紹介していきたいです。インドに関する知識、映画、ダンスを通じて“まずは入りやすいところから日本の方々に伝えていく”ということが、今の私の役目かなと思っています。


>>日印つなぐインフルエンサー・Mayo【SNS情報・プロフィール】

>>【JAIHOインド映画フェスティバルはこちら!】

筆者紹介

映画.com編集部のコラム

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