「コナン」「ドラえもん」「しんちゃん」の興行収入の謎 : 細野真宏の試写室日記

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コラム:細野真宏の試写室日記 - 第3回

2018年4月10日更新

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。

また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。

更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)

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第3回 「コナン」「ドラえもん」「しんちゃん」の興行収入の謎

2018年4月5日@東宝試写室

春休みは、ハリウッド製アニメの「リメンバー・ミー」と「ボス・ベイビー」がいずれもヒットしています。「リメンバー・ミー」は想定通りの動きですが、「ボス・ベイビー」が想定以上の動きをしていて経済的に面白い!

ボス・ベイビー」で注目をしていたのは、過去に「シュレック」や「マダガスカル」といったヒット作を放ちながら、最近、日本では事実上の撤退状態だったドリームワークス・アニメーションが、「ミニオンズ」などでヒットを飛ばすユニバーサルと組んだ最初の作品だったからです。

果たしてそのシナジー効果がどこまで日本で受け入れられるのか、という点に注目していました。

結果は、第1作目としては見通しの良いヒットで、CGを主体としたアニメーション(以下、3D型アニメーション)においては、「ディズニー/ピクサー」と「ユニバーサル/イルミネーション」に次いで、今回の「ドリームワークス×ユニバーサル」という3つ目の勢力が映画業界に誕生したということかもしれません。

(C)2017 DreamWorks Animation LLC. All Rights Reserved. (C)2017 DreamWorks Animation LLC. All Rights Reserved.

ボス・ベイビー」で生まれたのは、ヘンな赤ちゃんだけにはとどまらないかもしれないのです。

さて、そんな海外の3D型アニメーションに対して、日本ではまだまだ圧倒的に手書きを主体としたアニメーション(以下、2D型アニメーション)が主流で、公開中の「ドラえもん」に加えて、今週公開される「名探偵コナン」と「クレヨンしんちゃん」という鉄板的な3作品がこれからGWに向け映画業界を大いに盛り上げていく、という構造が続いています。

ただ、この鉄板的な3作品について、私は根本的な部分でずっと大きな謎を抱えています。

それは、「映画の完成度」と「映画の興行収入」があまり一致しないということです。

単発映画の場合は、マーケティングがうまくはまらなかったり、公開時期のタイミングが悪かったり、など「映画の完成度」と「映画の興行収入」が一致しないケースがたまに出るのは仕方のない面としてあります。

一方で、定番のシリーズとなれば、親子連れなどターゲットもほぼ同じようになりますし、ある程度は相関関係があるのではないかと想像できます。ところが、この2D型アニメーションの代表格である定番3作品は、どうも違うようなのです。

「ドラえもん」は、2005年以降の「新シリーズ」になってからの最高興収をここ3年記録し続けていますが、いずれも出来が過去最高かと聞かれたら、必ずしも「そうでもない」。

そんな中、興味深いのが4月13日に公開される「名探偵コナン ゼロの執行人」なのです!

(C)2018 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会 (C)2018 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

「名探偵コナン」も作品の出来は当たりはずれの差が大きいのですが、なぜかこの5年は興行収入が過去最高を記録し続けています。

「ドラえもん」と同様に、前作の「コナン」の完成度は過去最高かと聞かれたら、「ノーコメント」な感じです(笑)。

ところが、今回の「名探偵コナン ゼロの執行人」は、かなりクオリティーが高く、過去最高の出来と言ってもいいレベルなのです。

脚本、映像、テンポなど、ほぼすべてで。

(強いて言うと、ゲスト声優の上戸彩ははまっていますが、博多大吉の声は少し重い? エンディング曲はあのトーンで正解??)

脚本が「相棒」も手掛ける櫻井武晴なので、その比較で言うと、この感じで「相棒」の脚本を書けば、「相棒」の興行収入も一気に上がって大ヒットできるのに、と思ってしまったほど、大人としても面白かったのです。

(C)2018 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会 (C)2018 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

唯一の心配は、大人が面白いと感じるだけあって、展開が少し入り組んでいます。もっと言うと、子供は理解しきれないのでは? という疑問もあります。

ただ、批評家以外の一般的な場合では、そんなにディテールを気にせずに、単純に「面白かった」「つまらなかった」ということで大部分が動く、というのが映画の興行収入の世界の実態なのではないでしょうか。

その前提に立てば、理解できない箇所がいくつかあっても、恐らく多くの人から「面白かった」と言ってもらえる作品だと思います。

さらに言うと、大人の場合は「2回は見たい」というリピーターがいつもよりも増えると予測できます。

「映画の完成度」と「映画の興行収入」が一致する、珍しい、しかし理想的な結果が今作で出てくれるか注目です。

[筆者紹介]

細野真宏

細野真宏(ほその・まさひろ)。経済のニュースをわかりやすく解説した「経済のニュースがよくわかる本『日本経済編』」(小学館)が経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」(日販調べ)を記録。

 発売以来9年連続完売となっている2019年版の「家計ノート 2019」(小学館)が発売中!

 首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」(扶桑社新書) はAmazon.co.jpの年間ベストセラーランキング新書部門1位を獲得。映画と興行収入の関係を解説した「『ONE PIECE』と『相棒』でわかる!細野真宏の世界一わかりやすい投資講座」(文春新書)など累計800万部突破。エンタメ業界に造詣も深く「年間300本以上の試写を見る」を10年以上続けている。

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