コラム:細野真宏の試写室日記 - 第203回
2023年3月31日更新
映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。
また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。
更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)
試写室日記 第203回 「ダンジョンズ&ドラゴンズ」吹替版で面白さが格段にアップする背景と興行収入の行方
今週末3月31日(金)から日米で「ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り」が同時公開されました。
ただ、本作は日本では、ほぼタイトルも知られていないですし、正直私は内容に期待していませんでした。
ところが、字幕版の鑑賞後に吹替版を見て、驚くほど作品のイメージが変わり、一言でいうと「凄く面白い!」と、感想が180度変わった非常に珍しい作品だったのです。
そもそも「ダンジョンズ&ドラゴンズ」は、1974年に発売されたボードゲーム。「世界初のロールプレイングゲーム」として、世界的には有名です。
恐らくこの前知識や実体験があるかどうかで本作の面白さの体感度合いが変わってくるように思われます。
最初に字幕版を見た際には、壮大で馴染みのない世界感だったため、字幕を追うだけで精一杯。映像などを楽しむ余裕がなかったのだと思います。
ただ、アメリカ人と同様に「母国語」の吹替版で見たら、画面に集中ができて小ネタにもキチンと反応することができましたし、出来が良いことに気付けました。
近頃MCU作品を筆頭にハリウッド映画の元気がなくなってきているように感じていますが、本作は、まさに「MCUの黄金時代」を感じられるような「良い所取りの作品」になっています。
これは、ジェレミー・ラッチャムというプロデューサーの存在が大きいのではと推察します。
ジェレミー・ラッチャムは独立前までマーベル・スタジオにいて、「アベンジャーズ」「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」「スパイダーマン ホームカミング」では製作総指揮を務めています。そして「スパイダーマン ホームカミング」の際に本作の監督・脚本のジョナサン・ゴールドスタインとジョン・フランシス・デイリーのコンビに脚本を依頼していたのです。
このような経緯から、本作ではMCU作品に関わっているスタッフが視覚効果も含め多数いるのです。
本作の魅力はキャストにもあるといえるでしょう。「スター・トレック」シリーズのクリス・パインと「ワイルド・スピード」シリーズの“レティ”を演じるミシェル・ロドリゲスの2人が物語の中心を担っています。そして、ヒュー・グラントもメイン級で登場しています。
本作の良さは「百聞は一見に如かず」で、見てみないとわからないと思います。もちろん吹替版がおススメです。
さて、本作は、割とコメディ要素のある作品でもありますが、アメリカの辛口レビューサイトRotten Tomatoesでは、批評家の評価は89%、一般層の評価は91%(2023年3月31日14時時点)となっていて、「プロと一般のどちらの評価も高い」という非常に珍しい事態となっているのです!
日本での興行収入は、興行収入5億円に届けば御の字という結果かもしれません。ただ、せっかくの良作なのに、この魅力が伝わりきらずに終わってしまうのは非常にもったいない!
宣伝にはかなり力を入れているようですし、口コミで興収を伸ばしていってほしいところです。
筆者紹介
細野真宏(ほその・まさひろ)。経済のニュースをわかりやすく解説した「経済のニュースがよくわかる本『日本経済編』」(小学館)が経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」(日販調べ)を記録。
首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」(扶桑社新書) はAmazon.co.jpの年間ベストセラーランキング新書部門1位を獲得。映画と興行収入の関係を解説した「『ONE PIECE』と『相棒』でわかる!細野真宏の世界一わかりやすい投資講座」(文春新書)など累計800万部突破。エンタメ業界に造詣も深く「年間300本以上の試写を見る」を10年以上続けている。
発売以来15年連続で完売を記録している『家計ノート2025』(小学館)がバージョンアップし遂に発売! 2025年版では「全世代の年金額を初公開し、老後資金問題」を徹底解説!
Twitter:@masahi_hosono