コラム:細野真宏の試写室日記 - 第114回
2021年2月24日更新
映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。
また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。
更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)
試写室日記 第114回 「鬼滅の刃」が異次元の興行収入400億円突破の可能性は?
2020年10月16日(金)から公開されている「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」ですが、公開から73日と僅か2か月半足らずで興行収入324億7889万5850円となり「歴代興行収入1位」になる快挙が起こりました。
そして、その後も列車は走り続けていて、公開12週目で興行収入350億円突破という、かつては誰もが想像できなかった記録を打ち立てました。
さらに驚くことに、今週末の公開20週目には興行収入380億円突破は確実な勢いで、本当に前人未到な興行収入400億円という記録を打ち立ててしまうのかもしれません。
そこで、今回は、その可能性について考察したいと思います。
まず、私が「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」を見た時の衝撃は大きすぎて、当初から、この勢いはどこまで続くのだろうか、ということを考え続けていました。
その一つの答えは、「『鬼滅の刃』に匹敵するような作品が現れた時だろう」というものがありました。
その仮説が正しいとすると、現時点ではそのような作品にまだ出合えていないため、暫くこの勢いは止まらなそう、ということになります。
ここ数週間の動きを見ていると、大まかに毎週3億円規模の興行収入を叩き出しています。
通常の作品では「あと20億円」というのは、相当にハードルが高いのですが、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は作品力が極めて強いため、決して不可能ではないと思われます。
しかも、まだ今は「公開してから4か月が過ぎたくらい」というのも驚くべき状況です。
簡易的な試算をすると、仮にこのまま毎週3億円規模の興行収入を維持できると、公開27週目の4月18日の時点で「異次元級の興行収入400億円突破」となります。
では、本当にこのような状況は起こり得るのでしょうか?
まず、「鬼滅の刃」という作品の原動力となっているのは、「作品力」に加えて「話題性」というのもあります。
例えば、先週の2月14日(日)に「鬼滅の刃」のアニメの続編となる第2期放送の発表があり大きなニュースとなりました。
このTVアニメはもちろん「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の続きなので、第2期アニメが始まる前に見ないと、という人も出ているでしょうし、「また映画館に見に行きたい」という人たちは(私も含めて)非常に多いと想定されるので、何かニュースがある度に背中を押されるような状況があります。
例えば、3月5日(金)から日本マクドナルドが、ハッピーセットで「鬼滅の刃」とのコラボをするのも意外と大きなニュースになり得ます。
なぜなら新型コロナの影響で飲食業界は軒並み大きなダメージを受けていますが、日本マクドナルドにおいては、2020年12月期連結決算で、 本業の儲けを示す「営業利益」が前期比11.7%増の312億円となり「過去最高益」を更新するなど絶好調だからです。
私は普段は物欲はないのですが、なぜか「鬼滅の刃」関連の商品は私ですら興味があったりします。これで行列ができたり、物凄いスピードで売り切れなどが起これば、社会現象がまだまだ続き、映画にもプラスに作用すると思われます。
また、3月15日(月)には2021年のアカデミー賞ノミネート作品の発表があったり、3月19日(金)には日本アカデミー賞の授賞式があったりと、「鬼滅の刃」関連のニュースが途切れなさそう、というのも大きな追い風となります。
つまり、このペースは決して絵空事でもなさそうなのです。
とは言え、仮説にあるような「鬼滅の刃」のライバルとなりそうな作品が現れた際には、影響が出始めるでしょう。
具体的には、緊急事態宣言によって、急きょ公開延期となっている「シン・エヴァンゲリオン劇場版」はライバルとなり得る作品です。
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は上映時間が2時間34分と長く、レイトショーがないと厳しい興行になるため、突然の緊急事態宣言によって緊急的に公開延期が決まりました。
ただ、裏を返せば緊急事態宣言が解除され、レイトショーが機能するようになれば、当初のように早めの公開となるだろうと想定されます。
ちょうど東宝配給で3月5日(金)から大規模公開予定だった「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争2021」が公開延期となっているため、緊急事態宣言が解除されそうな3月7日(日)の段階で全国の映画館の座席は空いている状態になっています。
さらには、3月5日(金)から公開されるディズニー作品「ラーヤと龍の王国」ですが、こちらも公開館数が通常よりかなり規模が小さくなったため、まさに「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の公開を多くの劇場が待っている状況なのです。
そのため、緊急事態宣言解除の具体的な発表が国から出たタイミングで、私は最速で「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が公開されるのでは、と考えています。
その場合は、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」のペースにも影響は出てくるだろうと思っています。
そして、現在、公開中の「名探偵コナン 緋色の不在証明」ですが、これは単なる「テレビ版の総集編」なのです。
ところが、4月16日(金)公開の「名探偵コナン 緋色の弾丸」の準備的な作品のため、興行収入10億円規模のヒットになりそうなのです。
この動きを見ても、「名探偵コナン 緋色の弾丸」への期待は高くなります。
この4月16日(金)公開の「名探偵コナン 緋色の弾丸」は、これまでの流れから興行収入100億円を狙えるようなポテンシャルだと想定されるため、まさにこの辺りが大きな転換点となりそうな予感がします。
もちろん、ライバル作品が出てきてもマイナス要素だけでなく、今から1か月後にはようやく「春休み期間」となるため、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」には追い風となります。
また、受験生がようやく映画を見られるようになるタイミングでもあるため、この辺りで巻き返しも予想されます。
さらには、これまで興行収入300億円という時点で「奇跡」というような状況だったのに、それが興行収入400億円といった異次元級の記録となると、それだけでも大きなニュースとなります。
そのため、390億円を超えた辺りからカウントダウンが始まり、何とか興行収入400億円という、我々が一生に一度目撃できるかどうかといったレベルの記録の実現に向け動く現象も起こると思われます。
このように見ていくと、私は「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の興行収入400億円という大記録は生まれるのではないか、と想定しています。
筆者紹介
細野真宏(ほその・まさひろ)。経済のニュースをわかりやすく解説した「経済のニュースがよくわかる本『日本経済編』」(小学館)が経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」(日販調べ)を記録。
首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」(扶桑社新書) はAmazon.co.jpの年間ベストセラーランキング新書部門1位を獲得。映画と興行収入の関係を解説した「『ONE PIECE』と『相棒』でわかる!細野真宏の世界一わかりやすい投資講座」(文春新書)など累計800万部突破。エンタメ業界に造詣も深く「年間300本以上の試写を見る」を10年以上続けている。
発売以来15年連続で完売を記録している『家計ノート2025』(小学館)がバージョンアップし遂に発売! 2025年版では「全世代の年金額を初公開し、老後資金問題」を徹底解説!
Twitter:@masahi_hosono