コラム:シネマ映画.comコラム - 第15回

2022年8月25日更新

シネマ映画.comコラム

ヒップホップカルチャーを知らしめた「ワイルド・スタイル」を体感せよ!

第15回目となる本コラムでは、9月2日からの劇場公開を前に、8月26日から28日までの3日間、先着100名様限定で“公開直前プレミア上映(配信)”する「ワイルド・スタイル」をピックアップして、見どころなどを紹介します。

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【作品概要】

1982年の米ニューヨーク、サウス・ブロンクスを舞台に、ひとりのグラフィティアーティストの生きざまを描いた作品です。DJ、ラップ、ブレイクダンス、グラフィティアートからなるヒップホップカルチャーを世界に広めるきっかけにもなったと言われています。実際のグラフィティライターやダンサー、DJ、ラッパーなども多数登場し、ヒップホップムーブメントが生まれる瞬間を鮮明に描き出しました。

1982年製作/82分/G/アメリカ
原題:Wild Style

【物語】

社会に不満を抱く青年レイモンドは、そのはけ口をグラフィティアートに求めていました。夜な夜な地下鉄の操車場に忍び込んでは地下鉄車両にスプレーでグラフィティを描き、“ZORO”とサインします。ゾロの作品はやがて評判を呼び、彼のタッチを真似た絵も出まわっていますが、不法行為であるためレイモンドは自分がゾロであることを恋人にも明かすことができません。そんなある日、レイモンドはアーティストとして華やかな表舞台に立てるチャンスを得ますが、アンダーグラウンドの世界で自由に描くこととの狭間で揺れ、思い悩むことに…。


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■すべてはここから始まった

日本でも生活や文化に当たり前のように定着しているヒップホップカルチャーは、今から40年前の1982年にニューヨークのサウス・ブロンクスで生まれました。DJ、ラップ、ダンス(ブレイキン)、そしてスプレーアートのグラフィティなどは、それまでの世の中には存在しなかった全く新しいサブカルチャーなのです。その存在を最初に世に知らしめたのが、映画「ワイルド・スタイル」と言われています。日本でも1983年に公開され、世界中で熱狂を呼び、音楽やファッション、文化に影響を与え続けています。そしてこの度、製作40周年記念と銘打って特別上映されることになりました。

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■1982年ニューヨークのリアルな熱気がここに!

この映画は、グラフィティに注目していた監督のチャーリー・エーハンが、「ラップ音楽とグラフィティを融合させた映画を作らないか?」と当時のシーンに顔が広かったFab 5 Freddyに提案され、Fab 5 Freddyが仲間に声をかけて制作されました。「Lee」のサブウェイアートで有名なグラフィティライターのリー・キノネスをはじめ、当時のシーンの真っ只中にいた本物のライターやDJ、ダンサーたちが出演しています。

当時はまだインディペンデント映画が世に出ることはほとんどなかった時代です。「ストレンジャー・ザン・パラダイス」のジム・ジャームッシュ監督や、「ドゥ・ザ・ライト・シング」のスパイク・リー監督もまだ有名になっていませんでした。そんな時代に資金集めに苦労しつつ、エーハン監督は脚本を書き、キャスティングを進めていきました。

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■カルチャーが融合した映画として完成

しかし、グラフィティを公共物などに描くことは当時すでに違法行為として取締られ、キノネスも警察からマークされていました。そのため、映画を作るにあたって、出演者はほぼ自分自身がモデルになっていても、名前を変え、あくまで“架空のキャラクター”として出演するしかなかったのです。

実現しなかったキャスティングもありましたが、現実に起きていることは脚本に取り入れていきました。まだ「HIPHOP」という言葉も存在しなかった当時、Fab 5 Freddyがハブになり人と人をつなげて、地下鉄やアンダーグラウンドで活動していたグラフィティのカルチャーと、パーティで活動していたDJやMC、ダンサーのカルチャーが融合した映画として完成させたのです。

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■大人ではなくキッズ=子どもたちによって作られたカルチャー

なお、1983年の日本での劇場公開に合わせて、総勢36人のスタッフと出演者が日本に招聘されました。東京では、西武百貨店でイベントを実施し、テレビ番組にも出演するなどプロモーション活動を行い、当時新宿にあったクラブでライブも行いました。これが、日本人が初めてヒップホップに触れた“歴史的事件”と言われており、日本のDJにも大きな影響を与えました。

エーハン監督は「ヒップホップとは、最もダイレクトに人々の心を掴めるカルチャーなんだ。自分自身をオープンに表現することができ、また、大人ではなくキッズ=子どもたちによってつくられたものだった。企業の力でなく、レコードを売るためではなく、洋服ブランドをプロモートするためでもない。それは子どもたちが自らを表現するためにグラフィティやダンス、そしてDJという手法を選びとったものなんだ」と述べています。

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■バスキアやへリング、バンクシーらへとバトンをつなぐ

劇中でキノネスが、ポップアートの代表的な画家のひとり、ロイ・リキテンスタインの影響を受けていると述べていますが、映画の製作から40年近くを経て、バスキアやキース・へリング、バンクシーらへとバトンがつなげられ、彼らはアーティストとして「作品」を手がけるようになりました。さらに、世界中のミュージシャンがラップを当たり前のように楽曲に取り入れ、ブレイキン(ブレイクダンス)が2024年パリ五輪の追加競技種目にも決定するなど、今ではメジャーカルチャーとなったヒップホップがどう誕生したのか、当時のリアルな空気感を体験できる1作です。

当時のヒップホップ界隈にはヒスパニック系なども多かったことがこの映画によってわかります。社会に不満を抱く先の見えない青春時代に、自分自身をオープンに表現することによって生まれたカルチャーは、米ニューヨーク、サウス・ブロンクスから、人種を超えて、世界中で共感を得ていったのです。その誕生の熱気を、ぜひ目撃してください。ヒップホップカルチャーへの理解と興味がより深まることでしょう。(執筆&編集/和田隆

ワイルド・スタイル」の公開直前プレミア配信は8月26日から28日までの3日間、先着100名様限定ですので、劇場公開前に是非いち早くご覧ください。

>>【「ワイルド・スタイル」を体感せよ!】

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