コラム:Celeb☆Graphy セレブ☆グラフィー - 第73回
2018年3月6日更新

【vol.73】レッドカーペット3大クイーンのファッションで賞レースをおさらい
第90回アカデミー賞は、ギレルモ・デル・トロ監督のファンタジーロマンス「シェイプ・オブ・ウォーター」の4冠でフィナーレ。昨年末から続いた賞レースも終わりを迎えました。今シーズンは、セクハラ・性的加害撲滅運動が一気に過熱。ゴールデングローブ賞や英国アカデミー賞で、女優たちが黒いドレスで出席したことが話題を呼びました。そこで、女性のオスカーノミニーの中でもレッドカーペットでひときわ輝きを放っていた3人のファッションをチェック。「レディ・バード」で主演女優賞にノミネートされたシアーシャ・ローナン、同作で監督賞・脚本賞の候補に挙がったグレタ・ガーウィグ、そして「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」で主演女優賞ノミネートのマーゴット・ロビー、レッドカーペットの3大クイーンの着こなしを振り返ります。
○ゴールデングローブ賞
写真:The Mega Agency/アフロ 写真:Jordan Strauss/Invision/AP/アフロ Photo by Steve Granitz/WireImage
もう終わり――セクハラや性的暴力の被害女性たちを法的に支援するために立ち上げられた「Time's Up」。女性を貶めるような行為がまかり通る時代に終止符を打つべく、ハリウッドの女性たちが一致団結。1月7日(以下すべて現地時間)に開催されたゴールデングローブ賞は、ほぼ全員が黒いドレスで出席し、まるでお葬式のような光景になりました。
23歳にしてレッドカーペット歴10年を誇るシアーシャは、アトリエ・ヴェルサーチにカルティエのアクセサリーをあわせて上品に。女優としても活躍するグレタは、オスカー・デ・ラ・レンタのワンショルダーをチョイス。ハリウッドきっての売れっ子のマーゴットは、アールヌーボー風の装飾が施されたグッチで登場。ブラック一択のなか、3人とも存在感のあるジュエリーやデコレーションで見事に華やかさを演出していました。
○クリティックチョイス・アワード
写真:Jordan Strauss/Invision/AP/アフロ 写真:Shutterstock/アフロ Photo by Jon Kopaloff/FilmMagic
ゴールデングローブ賞から5日後、クリティックチョイス・アワードでは色とりどりのドレスが解禁。マイケル・コースのロングドレスにプラムカラーのリップで大人っぽく仕上げたシアーシャとは対照的に、マーゴットはシャネルの最新リゾートコレクションからベージュ×ブラック×ゴールドで若々しい印象。そしてグレタは、胸元のハートのモチーフがラブリーな、フェンディの純白ドレス。“インディ界のミューズ”の称号にぴったりです。
○全米俳優組合賞
写真:Shutterstock/アフロ 写真:AP/アフロ Photo by Steve Granitz/WireImage
1月22日には全米俳優組合賞が開催。シアーシャは、かわいらしいペールピンクにスレンダーなフォルムが美しいルイ・ヴィトンの1点もの。グレタは、ブロンズとシルバーのスタッズが個性的なボッテガ・ヴェネタを着こなしました。実は彼女、スタイリストのクリスティーナ・エーリッヒたちに「監督になったけれど、それは何を着るかとは関係ない」と宣言。ファッションにも強いこだわりが感じられます。マーゴットのミュウミュウはウェストのファーがとっても印象的でした。
○英国アカデミー賞
写真:Shutterstock/アフロ Photo by Jeff Spicer/Jeff Spicer/Getty Images
2月に入り、海を渡ったイギリスで開催された英国アカデミー賞で、「Time's Up」のドレスコードが再発動。通常モードに戻ったと思いきや、またも黒ずくめの授賞式となりました。シアーシャはシャネル、グレタはジョナサン・コーエン、マーゴットはジバンシーのオートクチュール。それにしてもゴールデングローブ賞から6週間しか経っていないのに、よくぞここまで違うドレスをそろえた! デザイナーやスタイリストといった影の功労者たちに拍手を贈りましょう。
○インディペンデント・スピリット・アワード
Photo by Jason Merritt/Getty Images Photo by Jon Kopaloff/FilmMagic
アカデミー賞前日の3月3日には、インディペンデント映画の祭典、インディペンデント・スピリット・アワードが開催。ひときわ目を引いたのは全身レオパード柄のマーゴット。女豹感たっぷりのルイ・ヴィトンのワンピースが、ゴージャスな顔立ちによく似合うんです。シアーシャは春らしい色使いのプラダのミニドレス。グレタはさわやかなスカイブルーに花柄のレースがガーリーなロージー・アスリーヌ。日中のセレモニーなのでカジュアルテイストが目立ちます。
○アカデミー賞
Photo by Frazer Harrison/Getty Images Photo by Neilson Barnard/Getty Images
いよいよ賞レースのクライマックス、アカデミー賞がやってきました! もっとも格式高いオスカーナイトは、誰もが最高の一着で着飾りました。シャネルのカール・ラガーフェルドがデザインしたオートクチュールに身を包んだのはマーゴット。ところが、会場内でビーズのストラップがとれてしまい、自分で縫い付けるハメになったそう。だけど、その臨機応変な行動力はシャネルが表現してきた自立した女性のイメージにぴったり。そしてシアーシャは、カルバン・クラインのメジャートゥメイドライン「By Appointment」。フレッシュなピンクとシンプルなラインは、若さと自信にあふれたいまのシアーシャを象徴しているよう。ドレスに合わせてカットしたボブスタイルも生き生きしています。グレタは鮮やかなイエローがまばゆいロダルテ。なんと昨年10月頃からスタイリストたちと相談していたんだとか。入念な準備のおかげで、明るくフェミニンな彼女のパーソナリティを見事に表現したドレスが完成しました。
○アカデミー賞アフターパーティ
Photo by Dia Dipasupil/Getty Images Photo by Jon Kopaloff/WireImage
残念ながら3人とも受賞は逃してしまいましたが、オスカーナイトは授賞式の後が本番。締めくくりは、バニティ・フェア主催のアフターパーティです。ところが最後の最後に、シアーシャがまさかの着まわし。でも、長いすそを取ったことで全体のバランスがよくなったかも。グレタは羽をまとったようなディオールのオートクチュールにお色直し。そして同日、シャネルのアンバサダーに就任したことが発表されたマーゴットは、もちろんシャネル。3人とも授賞式よりもソフトで軽やかな印象のドレスで、賞レース最後の夜を楽しんだようです。
ファッションの影響力の大きさを世界にしらしめた、「Time's Up」の黒いドレス。シアーシャのスタイリスト、エリザベス・サルツマンは「宣伝のためではなく、人々がつながり、才能を支えあうために力を合わせたことがすばらしい」と、イギリスのVOGUEでコメントしています。レッドカーペットのドレスは、単に着る人を美しく見せるだけでなく、パーソナリティや主義・主張の表現ツールとして、今後ますます重要性が高くなっていくかもしれません。
(映画.com編集部/政氏裕香)