コラム:若林ゆり 舞台.com - 第30回
2015年7月16日更新
第30回:心も体も踊り出さずにいられない。ミュージカル版「天使にラブ・ソングを…」が爽快!
人との出会い、音楽との出会いが人生を変える。そんな直球メッセージのパワーと音楽の力で、見る者すべてをハッピーにしてくれる映画が「天使にラブ・ソングを…」だ。また最近、リメイク版製作のニュースが飛び込んできたことでも人気の高さが知れるというもの。マフィアの追っ手から逃れるため修道院へと逃げ込むクラブ歌手デロリスは、ウーピー・ゴールドバーグ最大の当たり役となった。そのウーピーが自らプロデューサー役を務めてミュージカル化し、ロンドンとブロードウェイで大ヒットを飛ばした作品が、この「天使にラブ・ソングを…(シスター・アクト)」。日本でも昨年、森公美子・瀬奈じゅんのWキャストで上演され大旋風を巻き起こした本作が(本コラム第6回で森公美子にインタビュー。さらに来年5月・6月には森公美子・蘭寿とむ主演で再演が決定)、今度はアメリカ版キャストで上陸する!
今回、デロリスを演じるのはケリッサ・アリントン。映画版とはデロリスの設定が少し変わっているため、若くて快活そのものだ。修道院長役は赤毛のベテラン、マギー・クレノン・リーバーグ。2人からはキラキラした明るいオーラが発散されまくり。まずは2人に、この作品との出会いから聞いてみよう。
ケリッサ「私は友達から『この作品のオーディションを受けるべきだよ、デロリス役にピッタリだから』って言われたの。それからYouTubeで動画を見たりして、知れば知るほどこのミュージカルが好きになっていった。実はそのとき、映画版は見ていなかったの。続編の『天使にラブ・ソングを2』のほうは見ていて好きだったんだけど(笑)。結局、映画の『天使にラブ・ソングを…』を見たのはお稽古が終わって、ミュージカルに出演し始めた後だったわ(笑)。感想は……『あら、これまったくミュージカル版と一緒じゃない!』。細かい設定で変わっているところはあるけれど、伝えている中身はまったく同じだって感じた。私はデロリスでもあるから、自分自身を外側から見ているような感覚もあって、それも面白かったな。そして、やる前に見なくてよかったと思ったわ。ウーピーの芝居に影響されちゃってたかもしれないから」
マギー「出会い方としては、私はまったく対照的ね。映画は見て大好きだったんだけれど、ミュージカル化されていたとはまったく知らなかったの。エージェントから教えてもらって見てみると、ストーリーが素晴らしい、音楽が素晴らしいって大感動。どうしてもこの役をやりたいと思うようになったわ」
映画版と同じように、いや、プロデューサーのウーピーによれば「映画版よりもっとフレッシュでエキサイティングな」お楽しみを味わえるこの作品。映画版との違いでいちばん大きいのは音楽だろう。映画の音楽もよかったけれど、本作は「リトル・マーメイド」や「アラジン」を手がけたアラン・メンケンが音楽を担当しているのだ。
ケリッサ「アラン・メンケンは、70年代の音楽をすごくうまくアレンジしてミュージカルに取り入れているの。教会だとか修道女の世界を舞台にはしているけど、音楽的にはディスコでしょ(笑)。そこがすごく魅力だと思うわ、演じている側にとっても、観る側にとってもね」
マギー「すごくノレちゃう音楽よね! 血が騒ぐというか、踊りたくてウズウズしちゃう(笑)。70年代の音楽言語というのは、パルスを感じるクラブミュージックなの。そこに、アラン・メンケンがゴスペルだとかR&Bの要素をミックスして、実に賢く構成していると思う。そういった音楽のジャンルを知っていると、より楽しめるんじゃないかしら」
筆者紹介
若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。
Twitter:@qtyuriwaka