斬る(1968)

劇場公開日:

解説

山本周五郎の『砦山の十七日』を原案に、「日本のいちばん長い日」の岡本喜八と「兄弟仁義 関東兄貴分」の村尾昭が共同でシナリオを執筆し、岡本喜八が監督した時代劇。撮影は「春らんまん」の西垣六郎。

1968年製作/114分/日本
原題または英題:Kill!
配給:東宝
劇場公開日:1968年6月22日

あらすじ

天保四年。空っ風が砂塵を巻き上げる上州は小此木領下に二人の男がふらりと現われた。ひとりはやくざの源太。実は二年前に、役目の上から親友を斬り、武士を棄てた男、兵頭弥源太である。もうひとりは、田畑半次郎。実は百姓に厭気がさし、田畑を売って武士になろうとしている男である。二人が姿を現わしてから間もなく、野々宮の宿場で城代家老溝口佐仲が青年武士七名に斬られた。小此木藩は溝口の圧制下住民たちの不満が絶えず、つい最近、やくざまで加った一撲を鎮圧したばかりだった。しかし、血気盛んな青年武士たちにとって、腐敗政治は許せるものではなかったのだ。そして、さしもの権勢を誇った溝口も、ついに倒されたのだった。しかし、ひそかに機会を狙っていた次席家老鮎沢は、私闘と見せかけて七人を斬り、藩政をわが物にしようと討手をさしむけたのだ。青年たちはやむなく国境の砦山にこもり、期待と不安を抱いて江戸にいる藩主の裁決を待った。鮎沢はそれに対し、腕の立つ狼人を募り、砦山に向かわせたのだ。半次郎は、武士にとり立てるという鮎沢の誘いに応じた。しかし、源太は藩政改革を志す青年たちの味方になり、二人は敵味方に分れて戦うことになった。一方、砦山に篭った青年たちも、その一人笈川の許嫁千乃が来たことから、美貌の彼女を間に対立する雰囲気が生まれてきた。また討手の狼人たちも、鮎沢に見殺しにされる状態になったため、藩士と戦いを交える有様だった。この戦いで、狼人たちの組長十郎太が死んだ。こうした情勢から、半次郎もようやく鮎沢の狡猾な政略を見抜いて怒った。それは鮎沢の命令を受けている藩士たちも同じ気持で、彼らはついに青年たちを討つことは出来なかった。その頃、源太は鮎沢を斬っていた。藩政改革の騒動は終った。源太、そして武士になる志を捨て“土の匂いのする”トミを連れ、それぞれこの地を去っていった。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画レビュー

5.0岡本喜八を堪能するための最高の一本

2021年5月19日
PCから投稿

軽妙と反骨という岡本喜八監督の持ち味が、おそらく最大限に発揮されたのがこの映画ではないか。先輩・黒澤明の『椿三十郎』と、プロットが双子のように似ているのは原作者が同じ山本周五郎で、設定が似通った短編小説を翻案しているからという理由が大きいが、同じ東宝のスタッフ&キャストによって、これほど似ていて、これほど違っている2作品ができてしまったことは非常に面白いし興味深い。

もっとも共通するのは、藩内の汚職に義憤を覚えた若侍たちが決起し、風来坊の浪人が助太刀するという設定。しかし、仲代達矢扮する主人公は、力むことなく、あくまでも飄々と、つかみどころがない風情で立ち回る。このモヤっとしているけれど実は切れ者という仲代達矢のキャラクターは、そのまま「パトレイバー」の後藤隊長のモデルになっているのだが、とにかく粋でカッコいい最高の仲代が見られることを保証する。

そして、小気味よい編集のテンポ、いきいち決まりまくる画のみごとさ、胸のすくような娯楽活劇に仕込まれた権力なんてくそくらえというヤンチャな反骨精神。喜八の最高傑作というと別の作品が挙がることは承知で、この映画が一番喜八らしくて、そして老若男女に勧められて、世界のどこに出しても絶対に面白い傑作だと断言したい。

コメントする (0件)
共感した! 4件)
村山章

3.5【侍の愚かしさを自ら知り、侍を捨てた男を演じる仲代達矢が、飄々としながらある藩の諍いを解決する岡本喜八監督ならではの、武士の愚かしさや哀しさと、農民の逞しさを描いたマカロニウエスタン風時代活劇。】

2025年3月27日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

興奮

幸せ

■江戸末期。上州小此木藩では、その圧政と悪政に耐えかねた7人の武士が城代家老溝口を斬った。この機に藩政を手に入れようとするとする次席家老・鮎沢(神山繁)は、7人の武士を討つべく、すご腕の剣客・荒尾十郎太(岸田森)と半次郎(高橋悦史)たち30人の浪士を武士たちの潜む砦へと差し向ける。
 一方、全てを見抜く源太(仲代達矢)は、飄々とした態度ながら、鮎沢の企みを阻止しようとする。

◆感想

・いつもの、仲代達矢の役と違い今作の源太は、どこか飄々としている。彼は過去に武士の愚かさを知り、自ら武士を捨てているからである。

・だが、彼は神山繁演じる次席家老・鮎沢の企みを見破り、それを阻止しようとする。あくまでも飄々とした態度で・・。

<今作は、岡本喜八監督ならではの、武士の愚かしさや哀しさ(岸田森演じるすご腕の剣客・荒尾十郎太がそれである。)と、農民の逞しさを描いたマカロニウエスタン風時代活劇である。
 演じる役者さんの一部は、チビッ子だった頃に再再放送で観ていた、水戸黄門に出ていた人を少し覚えている。特に、当たり前だが東野英治郎と、悪い役を演じさせたら一番の神山繁かな。
 あとは、岸田森さんも良い味を出している。
 皆、昭和の名優である。>

コメントする (0件)
共感した! 3件)
NOBU

4.0まじめでも悪どくもなく

2024年12月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

単純

興奮

軽妙なテンポで進む時代活劇。独立愚連隊のようにやっぱり悪いやつがいるのだが、それを全否定する勧善懲悪劇ではなく、それはそれとしてそれに立ち向かう者たちとも自分は違うという独特の立ち位置の主人公たち。そして最後は百姓遊女たちのお祭り騒ぎでまじめな奴らをあざ笑います。社会の上に立つまじめで時に悪どい人間たちがありつつも、自分はそうではないが一本貫く道がある人間と監督は言いたいのかなと思いました。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
FormosaMyu

5.0斬る!BILL。

2024年5月13日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 2件)
マサシ