小林政広監督“ギリギリ”女優たちから「天性の女優」と評される
2011年10月29日 17:27

[映画.com ニュース] 小林政広監督の最新作「ギリギリの女たち」が10月29日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映された。小林監督が居宅をもち、東日本大震災の被災地となった宮城・気仙沼で全編ロケした新作。震災を背景に、渡辺真起子、中村優子、藤真美穂演じる三姉妹の愛憎劇を描く。来年夏の公開に先がけ、第24回東京国際映画祭の特別上映「震災を超えて」部門で先行上映され、上映後には小林監督、中村、藤真の3人が観客とのQ&Aに応じた。
小林監督が被災地の復興を願い、2006年に執筆したシナリオを再構築。バラバラになった三姉妹が震災を機に再会し、それぞれが抱える“ギリギリ”な思いをぶつけ合う。全編101分で28カット。冒頭35分はワンカットで撮影され「最近、カット割をしなくなって。冒頭は台本にすると20数ページあるが、現場で『ここまでいけるかな』と感覚的に判断した」(小林監督)。
撮影初日の挑戦は不発に終わり、「やっぱりカットを割ったほうがいいかなって悩んだが、女優さんたちがホテルで猛特訓していると聞いて、ここでやめたら皆の自信を失わせてしまうと思った」と振り返った。そして、「徹底してやったおかげで、(冒頭のシーンが)作品全体のタッチや流れを決めてくれた」と結果に満足そうな表情だ。
厳しい演出で知られる小林監督について、次女役の中村は「まあ恐ろしかった。縮み上がるとは、こういうことかって。監督は、天性の女優みたいなんですよ。3秒前まで笑っていたと思ったら、次の瞬間、烈火のごとく叫んでいたり」。一方、末っ子を演じる藤真は、以前から長女役の渡辺の大ファンだったといい「共演でき、刺激をもらいました。(役柄上)いじめられたり、泣かされたり……。それが幸せでした」と語った。
劇中には9.11、3.11、そしてその後の原発事故への言及もあるが、小林監督は「それらを意識して結びつけたわけではない。我々が不幸にもこういう時代を生きていると表現したかっただけ」と説明。「国際映画祭という場で、日本の問題に目を向けてもらうのと同時に、家族という世界共通のテーマから何かを感じてもらえれば」(中村)、「被災地は、今も被災地のまま。作品を通して改めて何かを感じ取ってほしい」(藤真)と訴えた。
「ギリギリの女たち」は2012年夏公開予定。
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