ケイコ 目を澄ませてのレビュー・感想・評価
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アイツがあんな事件を起こす前に
ケイコが自分に勝った相手と出会うラストシーン。
相手も働いてボクシングをしていることに気づく。
アイツがあんな事件を起こす前にこの映画を観ていたら、
自分には自分の孤独があるように、他人には他人の孤独があることを気づけたかもしれないのに。
音の無い世界から感じたもの
岸井ゆきの演じる生まれつき難聴と言う
ハンデがありながら、研ぎ澄まされた感覚で
相手の動きを見てボクシングに打ち込む
熱心な姿が丁寧に描かれていました。
ボクシングジムの会長はケイコの人間として
真摯に向き合う生き方や器量があることを
見込んでいました。
日常生活の不便さ、ケイコの耳に聞こえてこない電車の踏み切りのカンカンなる警報の音
黄昏のなか、野原を走るケイコのシルエットは、しっかりと前向きに生きる、ケイコの新しいスタートをイメージしながら見ました。
ほぼ全てのシーンで無駄がない
10年くらい前の実話を基にしているそうですが、作中がコロナ禍になってるのは驚きました。口元が見えない事が重要になってますが、それ以外に意図があったのかな?自分が気付いてないのかもしれません。
決して深いテーマではないんですが、ほぼ全てのシーンで登場人物の心理変化が感じられる、ドラマとしての意味があり、無駄がない作品でした。
静寂で波立たない
岸井ゆきのさんが素晴らしい。
あの「愛がなんだ」の弱い女の子が、
こんな顔出来るんだと驚いた。
女優さんって凄い!
岸井ゆきのの気概とは別に内容はと言うと、
熱を感じられなかった。
ケイコと題打ってる割には、
ケイコよりジム周りの人の方が気持ちが伝わって来た。
耳が聞こえないと言う主人公だから敢えてそう言う演出だったのかな?
途中弟に、心を勝手に読むなと言っていたし、
結局人の気持ちなんて分からないよねと言う事なのか。
ケイコの心情がイマイチ掴めなかった。
マスクをしていて何言ってるか分からないと言うシーンはコロナ禍を上手く使った良い演出だなと思いました。
耳の聞こえないボクサー
主人公(岸井ゆきの)は耳の聞こえないプロボクサー、一戦一勝している。
ジムでは愛想のない人と思われているが仕方がない。
ジムの会長(三浦友和)は病気で、そろそろ止めようかと思っている。
二戦目も勝つが、気力が萎えてきたことを自覚し・・・。
人生、自分は自分だ。
これは名作
近年稀にみる素晴らしい映画だった。
ケイコは生まれついての聴覚障害を持っていますが、それを健常者とのハンデだなんだと言い訳にしません。1つも。ただただひたむきに、日々のジム練習と向き合い、日々の仕事と向き合う事の美しさを見事に描いた名作でした。
自分探しとか、自己表現とか、そんなチンケなテーマではありません。頑固なほどに1つの事を愚直にやり切る事の美しさを、淡々と描き切っています。
ボクシング引退?を醸すシーンも出てきますが、そうではない。途中で弟が「心が軽くなるから俺に話してみろよ」も断固拒否。。まるで、人にペラペラ話して気分が良くなるような程度の軽い悩みなんて悩みではない!っとでも言わんばかりに、ケイコは1人で葛藤し、自分で答えを見つけます。ケイコは痛みも悩みも、自分でしっかりと受け止め、戦う強さを持っています。
ケイコは聴覚障害ですから、喋れませんし、喋りません。共演した俳優さんたちも含め、セリフは非常に少ない映画です。その代わり、街の喧騒や生活音がそのまま、気になるぐらいガヤガヤと流れていきます。ただ、ケイコはそんな街の喧騒も聞こえていないんですね。
ひたすらにミットと仕事に向き合うだけの音のない世界の中で、毎日毎日小さな体に不釣り合いなほど大きなドラムバッグを肩に下げ、ジムへとテクテク通い歩く彼女の姿は、他のどの映画のヒロインよりも凛とした美しさがあります。
下町の古い荒川ボクシングジム。。どんどん練習生も辞めて行ってしまいます。辞めて行く者たちは、男女がどうだの、設備の古い新しいだの、大体そんな事を言って辞めていきます。しかしジムに残る練習生たちは、ケイコと同じくひたむきで、真剣で、男女の違いなど気にもならない者たち。。これも良かった。
会長からジムの閉鎖を突然申し渡されても、しっかりと受け止め、またすぐさま自分のやるべき練習に戻っていく描写。。きっと、だからケイコは荒川ジムが好きだったのでしょうね。
モヤモヤと(ダラダラと)悩みだトラウマだなんだと、大した事でもない事をいつまでもこねくり回しながらあっちの女・こっちの男と分別のない目移りを人間ドラマ風に仕立てる軟弱映画に対する強烈なアンチテーゼです、この映画は。
ケイコは生まれてこのかた耳が聞こえてねーっつの!っです。彼女はその障害については葛藤すらしていない。葛藤してるのは、大好きなジムとボクシングに対する自らの姿勢と在り方だけです。素晴らしい・・・。
ひさしぶりに、映画で強い女性の美しさを観ました。
大満足です。
闘う女の肖像
この映画は美談ではない。
耳の聞こえない女性の「リアル」を正しく伝える映画。
障がい者の「悔しさ」、「憤り」、「不公平」、
それがケイコの硬い背中から聞こえてくる。
その鬱屈を、
「ボクシングで闘うこと」に見出したケイコ。
その不条理を岸井ゆきのは、完璧に表現した。
その小さい身体から怒りのマグマが噴き出して来る。
しかしその思いは時に埋もれていく。
ケイコはあまりに無力で非力だ。
彼女はなぜボクシングジムの扉を叩いたのだろう。
「強くなりたい」
「見下す奴らを見返してやりたい」
ただひたすら、痛みを感じ、
その痛みを相手に返す。
この映画は美談ではない・・・と同じに、
サクセスストーリでもありません。
職場のケイコは自信に溢れている。
仕事仲間とも良い関係。
ボクシングジムの会長(三浦友和)も、
ケイコを理解してるし、ケイコも信頼している。
ジムの先輩も優しい。
耳が聞こえないことを知っている人は、皆受け入れてくれる。
しかし通りすがりの人、
そして無理解な人はどうだろう?
そこまでの関係になるまでが、困難なのだろう。
馬鹿にされ、見下され、無視されてきたことだろう。
もっともっと感涙にむせぶような映画に出来たはずなのに、
敢えて監督の三宅唱はそれをしない。
「感動してほしいのではない」
耳の聞こえない女性が生きる上での困難、
そして憑かれたようにボクシングに打ち込む日々を、
ドキュメンタリーのようにフィルムに刻んだ。
映画のラスト近くにある「試合のシーン」
小川恵子(ケイコ)があご下の急所に一発食らって、
ノックアウトされる定石破りのシーンで終える。
負けて終わる。
どう考えても、勝って終わるのが、
《セオリーというか、ふつうは、感動の場面で終わる》
ところがリングに這いつくばって悔しさの頂点で終わる。
底辺で這いつくばる。
でも、ここの所は公平である。
耳が聞こえたって、聞こえなくたって、
不公平なことは世間に無数にある。
ケイコに困難でないバラ色の未来など、
容易くは手に入らない事を、
私たちは誰よりも知っている。
そうなのだ、この世は不公平で報われない世界なのだ。
ジムの会長(三浦友和)との交流はとても良かった。
会長の奥さん(仙道敦子)が病室で横たわる会長に
読み聞かせるケイコの日記。
某月某日晴れ
ロード、10キロ
シャドー、3ラウンド
サンドバッグ、3ラウンド
ロープ、2ラウンド
来る日も来る日も、
走る、
打つ、
闘う、
日記は、言葉は、やはり心を伝えるには雄弁だ。
はじめて生のケイコの声が聞こえた。
しかし、
無言の岸井ゆきのの演技は、
言葉以上の感情を伝えていた。
そこがこの映画の肝(きも)だ。
荒川の土手、
隅田川は大きく太い、
古ぼけたボクシングジム、
見上げる中高層ビル群、
変わりゆく光景、
16ミリフィルムの映像に、とても味があり、
暖かい。
ゆきのちゃん、凄い女優さんだわぁ
なんだか、ドキュメンタリーを観ているようでしたね。
帽子ひとつとっても、リアルというか。
下町風情の昭和感にほっこりしながら
純粋に岸井ゆきのちゃんがボクサーに見える、、
耳が聞こえないというハンデも演じて、
凄い、、っていう女優魂に感激でした。
もうちょっとだけ、ドラマチックな展開が
欲しかったけど、、。
また彼女の芝居、観たいです。
久しぶりの三浦友和さんもキラリでした!
2本立て2本目。マニアック臭漂う作品。 オープニングタイトル、BG...
2本立て2本目。マニアック臭漂う作品。
オープニングタイトル、BGMがほぼなし、カメラワーク。悪く言えば低予算臭も漂う(笑)
聴覚障害女性ボクサーの悲哀。岸井ゆきのは頑張っていたが、あまり大きな事件はなく、お子ちゃま脳の私には今一つ。様々な映画的技法が駆使されているようだが、そんなことはお子ちゃま脳にゃ、知ったこっちゃない(笑)
ラスト、ケイコはボクシングを続けるのか?まあ別にどっちでもええけど…とか思ってたら、おいおい、そう来るんかい。責任持って描けよ!フランス🇫🇷映画か!そしてこういう作品は高評価なのだ(笑笑)
あの三人で頑張るシャドウのシーンが
一つ一つ普通のシーンを積み重ねていくことで、自らと言うよりも、何かに突き動かされて続く「生」を描いた作品と言うことでしょうか。聴覚障害を持つ女性ボクサーの物語ながら、二度出てきた試合のシーンに突出したインパクトはなくて、ケイコの強弱様々な息遣いや視線、荒川の河川敷、足立の町並みなど、敢えて言うなら物語の背景のような日常が丁寧に描かれた。
生きていくことは、それ自体が大変なことであるが、大袈裟に構えたからうまくいく訳でもない。そう判っていても、入れ込んだら必ず見返りがあると願ってしまう。その願いを胸の奥にしまったケイコは、息を吐いてシャドウを続け、やや息を荒くして走り、息を整えて内なる声を発する。
歩みや走りを止めた時にいったん現れたりする結果は、道端の石塊に過ぎないこともある。しかし、諦めるか続けるかの両方の答えを抱えたボクサーの脇を、人生は傍観者のように無情に通り過ぎる。
ケイコが心に抱くものは、例えば「継続は力なり」と言う意思でもあったろうし、あるいは彼女が何かがきっかけで感じてしまった、運命とかだったかも知れない。ケイコを突き動かしてきた大きなもの。ただ、その手がかりをこの作品の中から推し量ることは、私には難しかったです。
ジムの会長から貰った帽子を、愛おしむように被って走るケイコ、自分を打ち負かした相手から挨拶されて一瞬、戸惑うケイコ。そうしたシーンは、観る者の心地を緩ませてくれました。特に、街灯に照らされながら、弟とその彼女と3人でシャドウにいそしむケイコの微笑み。このシーンの温もりこそが、私にとって最高のシーンだったと思います。
ギッシリ詰まった胸の内を危うく堪えている、岸井ゆきのの演技は素晴らしかったし、三浦友和の本当に喋るのが苦手で、若い頃は口より手が先に出て相手を殴っていた(かも知れない)オヤジ感も見事だと思いました。
「そば煮るね」以来の岸井ゆきのさん、好きです。
岸井さん、すごいですね。
決してかっこいいファイトとは言えませんが、倒されて向かって行く時の前のめりの姿がよかったです。
「百円の恋」や「レッドシューズ」でかっこいい女性のボクサーの姿を見たので、減量の反対に、この役のために太ったという岸井さんの猫背の歩き方、まさにノーメイクの表情などに圧倒されました。
最後の終わり方も好きでした。
助演男優賞
岸井ゆきのは勿論素晴らしかったのですが
佐藤緋美に助演男優賞をあげても良いと思いました!!!
岸井ゆきのが好きなので、公開前から気になっていたものの、近所の映画館では上映せず…少し遠出して鑑賞しました。
遠出しても見る価値ある作品でした!
人との距離
彼女が求める人との距離。
ボクシングを通し、(ジムの閉鎖も相まって)会長、トレーナーたちの想い、感情そして拳のぶつけ合いを通して徐々に想いを通わせる過程を丁寧に描いてた。
また手話(会話)を交わすことでの繋がりではなく人と人との触れ合いを基軸に、孤独を抱える女性の歩む姿を淡々と描くことで誰しも孤独を抱える人の日常の断片の如く捉え観るものの心の中にスッと入り込んできた。
そして主演の岸井さんの表情、特に目がとても印象的でした。
やっと見ました主演女優賞
こんだけ映画見てて主演女優賞を見てなかったのはよろしくない。基本喋らない役。表情でよく表現できますな。ラストシーンとか。さすが。ストーリーはやや地味というか。味わう感じの映画ですな。
静かに流れていく川の如く
思ってたより平穏な映画だった
流れる川のように、
感情が揺れているうちに、
人生の時間が過ぎていく
時には石にぶつかって急流になったり、
時には落差を感じず流れていくのをやめそうになったり...
それでも川がちゃんと見ている
この世界のこと、川沿いの景色
静かで力強いようで。
私はこの映画,好き
主人公ケイコは
無音の中に生きているのに
映画を見る私には
紙に鉛筆で何かを書く音,お茶をすする音など
いろんな音がしっかり聞こえてきて
私たちは普段いろんな音の中で生活し
情報を受け取っているんだということに
改めて気付かされた。
ケイコはアウトプットも困難が伴い,
自分の得意な言語である手話を通して
自分の気持ちを思うがままに語り
意見をもらえる相手は
家族以外では
分母が少ない上に限られている。
人とのコミュニケーションが
うまくいきづらいケイコだけれど
言葉を超えて心が通じ合う人たちや
大好きなものに
出会ってしまったんだろうと思う。
それがジムの会長を初めとするジムの人たちで
ボクシングだったから
練習にのめり込んだし
ホントは休みたかったのに試合にも出場した。
最後のシーンの
相手ボクサーの言葉を聞いて
相手を尊重しているからこそ
殴ったり殴られたりするボクシングは成立するし
弟さんが言っていたように馬鹿らしいものでなく
尊いスポーツなんだと私も思えた。
きっと
ケイコもボクシングの尊さを感じられたからこそ
また,縄の音が聞こえてきたのではと思った。
それにしても
三浦友和さんは
嫌な顔つきにならず
綺麗な心が映し出されたような
お年を召され方で
画面に清々しさを生み出すいい俳優さんだと思う。
静かな映画
ここ数年で観た映画で一番静かだと思った。
諸々説明しすぎない、主人公の気持ちは少しの会話と日記のみ。言葉では。あとは表情だけ…すごい役をされているなあと思った。
ボクシングに詳しくないので、ボクサーも殴られるのは嫌なんだってシンプルに驚いた。プレッシャーや怖さとかとんでもない負荷なんだろうなあ…
逃げ出したいと思いつつも立ち向かう、人間味があって、かっこいい主人公だった。
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