エレナの惑い

劇場公開日:

解説

「父、帰る」のロシア人監督アンドレイ・ズビャギンツェフの長編第3作。男性優位主義の現代ロシアで必死にもがくひとりの女性の業をサスペンスフルに描き、2011年・第64回カンヌ国際映画祭「ある視点部門」で審査員特別賞を受賞したヒューマンドラマ。初老の資産家男性と再婚した元看護士エレナは、高級マンションで何不自由ない生活を送っているかに見えたが、夫からは家政婦のような扱いを受けていた。その一方で、エレナは前夫との間にもうけた無職の息子家族の生活費を工面し続けていたが、急病に倒れた夫が遺言書を作成すると言い出したことから、エレナの心境に変化が訪れる。妻として、母として苦悩する主人公エレナを、ベテラン女優ナジェジダ・マルキナが熱演。夫役に「作家の妻の日記」のアンドレイ・スミルノフ。

2011年製作/ロシア
原題:Elena
配給:アイ・ヴィー・シー
劇場公開日:2014年12月20日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第64回 カンヌ国際映画祭(2011年)

受賞

ある視点部門
ある視点部門 審査員特別賞 アンドレイ・ズビャギンツェフ

出品

ある視点部門
出品作品 アンドレイ・ズビャギンツェフ
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映画レビュー

3.0愚かな母の悲しい結末

2023年6月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

冒頭、冬の早朝の張りつめた空気の中、
鳥の声に混じって一発の銃声と
やがて遠くから救急車のサイレン。
カメラは裸木越しに、コンクリートのベランダから
生活感の乏しい高級マンションの室内に入って行く。

その一連の流れがこの映画の恐ろしさと
どうしようもない悲劇を感じさせる。

主人公のエレナは元看護師と言う設定なのに
其の息子の内面の崩壊の甚だしさはどうだろう。
看護師さんの息子がみんな立派だとは言わないけど
それなりに努力と献身が必要な仕事をしていた母の背中を
全く観ていなかったのか〜。
それとも、裕福な夫と再婚して10年、
エレナ自体が金の虜になってしまった結果の
息子の内部崩壊なのか〜

エレナの愚かさがやがては孫にまで伝播し
間もなく大学生になる孫が、ベランダから観ているのは
冒頭の銃声との関係を思わせる若者達の姿、そして
父と同じ内部崩壊を思わせるある行為。

更にはその兄弟の赤ちゃんの上にも
やがて悲劇を呼び寄せる事を案じさせて映画は終る。

何と言う救いの無い映画だろうか〜

貧困は連鎖すると言われるけど
貧困で完全に内部崩壊してしまった者にお金を渡したところで
そのお金で立ち直るどころか
更なる悲劇を呼び寄せるだけなのだなあ〜〜
貧困とお金の罪の重さをつくづく感じてしまった。

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共感した! 0件)
星のナターシャnova

3.0愚かな母の悲しい結末

2015年3月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

冒頭、冬の早朝の張りつめた空気の中、
鳥の声に混じって一発の銃声と
やがて遠くから救急車のサイレン。
カメラは裸木越しに、コンクリートのベランダから
生活感の乏しい高級マンションの室内に入って行く。

その一連の流れがこの映画の恐ろしさと
どうしようもない悲劇を感じさせる。

主人公のエレナは元看護師と言う設定なのに
其の息子の内面の崩壊の甚だしさはどうだろう。
看護師さんの息子がみんな立派だとは言わないけど
それなりに努力と献身が必要な仕事をしていた母の背中を
全く観ていなかったのか〜。
それとも、裕福な夫と再婚して10年、
エレナ自体が金の虜になってしまった結果の
息子の内部崩壊なのか〜

エレナの愚かさがやがては孫にまで伝播し
間もなく大学生になる孫が、ベランダから観ているのは
冒頭の銃声との関係を思わせる若者達の姿、そして
父と同じ内部崩壊を思わせるある行為。

更にはその兄弟の赤ちゃんの上にも
やがて悲劇を呼び寄せる事を案じさせて映画は終る。

何と言う救いの無い映画だろうか〜

貧困は連鎖すると言われるけど
貧困で完全に内部崩壊してしまった者にお金を渡したところで
そのお金で立ち直るどころか
更なる悲劇を呼び寄せるだけなのだなあ〜〜
貧困とお金の罪の重さをつくづく感じてしまった。

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星のナターシャ

2.0近未来の人類の問題に戦慄

2014年12月31日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

知的

 自立の意志に欠けるどうしようもない息子を溺愛する母親の姿は、今年公開されたルーマニア映画「私の息子」と重なる。
 社会が豊かになると、この豊かさのバスに乗り遅れた者の中には、不平等や運の悪さばかりを言い訳にして自助努力をしない人間が現れる。旧共産圏に限らず我が国にもありふれたケースである。
 主人公エレナは、悪い状況の原因は息子自身の無気力や怠惰であることを分かっている。しかし、彼女が最後に下す決断は良心に反したものだった。我が子を導くどころか、その無気力にとめどもなく経済力を費やす親の姿。これがわが国だけでなく、諸外国でも珍しいことではなくなったいるこの世界は一体どうなるのだろう。一国の問題ではなく、大げさかもしれないが、人類の問題のように思えて戦慄を覚える。
 何よりもこの救いがたい状況を象徴しているのはラストのシーン。死んだ夫の使っていたベッドで赤ん坊の孫が寝そべっている。家族の平安を示すアイコンが、恐るべき犯罪が行われた亡き夫のベッドの上で微笑んでいる光景のなんと皮肉なことか。我々の子孫は、親世代の築き上げた資産の切り崩しでしか生きてはいけないという恐ろしい話に思えた。

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佐分 利信
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