「第18回東京フィルメックス」ラインナップ決定 原一男監督がコンペ部門審査委員長に
2017年10月5日 16:30
[映画.com ニュース] アジアの映像作家育成に貢献している映画祭「第18回東京フィルメックス」のラインナップ発表会が10月5日、都内で行われ、映画祭ディレクターの林加奈子氏と同プログラムディレクターの市山尚三氏をはじめ、コンペティション部門の審査委員長を務めることになった原一男監督、特別招待作品部門に出品する園子温監督が登壇した。
シルビア・チャンが監督&主演を兼ねた「相愛相親(そうあいそうしん)」をオープニング、16年7月に他界したアッバス・キアロスタミ監督の遺作「24フレーム」をクロージングにコンペティション9本、特別招待作品(クラシック含む)10本を選出。コンペ部門の発表を担当した林氏は「今年は中国映画が強い傾向。どの映画も新鮮で挑戦的、今を切り取っており、ズシンと響く。ただならぬ作品ばかり」と分析した。日本映画で唯一ノミネートされた五十嵐耕平&ダミアン・マニベルによる共同監督作「泳ぎすぎた夜」については、「見ているそばから引きずり込まれる。ハッとするようなすごさを持ったユニークな1本」と評していた。
原監督が「東京フィルメックス」の存在を強く意識し始めたのは、昨年の上海国際映画祭でのこと。「チベットのペマツェテン監督(『オールド・ドック』『タルロ』)とお会いして、誇り高い口調で『フィルメックスで賞をもらったんだ』と仰っていた。その経験があって東京フィルメックスの名前が強く心に刻まれた」と告白。そして、特別招待作品として披露される新作「ニッポン国VS泉南石綿村」(18年3月公開)を、「私は今まで過激な主人公を選んで、過激な映画撮ってきたつもり。だが、昭和が終わり平成に入ると、過激な主人公がどこにもいなかった」と思いの丈を述べると「普通の人を撮っても“普通の映画”にしかならないと思っていたんです。“普通の人”を撮るのは、なんとも難しい。ですが、最後の最後で登場人物のひとりが私好みのセリフを言ってくれた。そこで今回の作品に、自分のメッセージが入ったなと実感したという珍しい作品です」と語っていた。
同じく特別招待作品部門に「東京ヴァンパイアホテル 映画版」を出品した園監督は「いつ公開されるのかわからないので『東京フィルメックス』での上映が最初で最後になるかもしれない」と話すと「Amazonプライム・ビデオで配信されているドラマ版とは、全く違うラスト。映画用に撮影されたものも含まれています」とこだわりを明かした。そして「『東京フィルメックス』は映画祭らしい映画祭。ここで上映できることは、僕にとって常に名誉で、非常に誇らしく思っています」と胸中を吐露した。
そのほか、特集上映企画として「キャット・ピープル(1942)」で知られるジャック・ターナー監督作「私はゾンビと歩いた!」「夕暮れのとき」の2作をお披露目。11月20日の「私はゾンビと歩いた!」上映後には、黒沢清監督と篠崎誠監督のトークショーを実施する。また、映画評論家ジャン=ミッシェル・フロドン氏を招く「国際批評フォーラム『映画批評の現在、そして未来へ』」、聴覚障がい者向け日本語字幕付き鑑賞会などを行う「映画の時間プラス」などが新企画として発表された。
「第18回東京フィルメックス」は11月18~26日、東京・有楽町朝日ホールをメイン会場に開催。コンペから最優秀作品賞、審査員特別賞、学生審査員賞が選ばれるほか、クロージング作品とクラシックを除く作品が対象となる観客賞が決まる。
「馬を放つ」(アクタン・アリム・クバト監督)キルギスタン、フランス、ドイツ、オランダ、日本
「見えるもの、見えざるもの」(カミラ・アンディニ監督)インドネシア、オランダ、オーストラリア、カタール
「殺人者マルリナ」(モーリー・スリヤ監督)インドネシア、フランス、マレーシア、タイ
「暗きは夜」(アドルフォ・アリックスJr監督)フィリピン
「ジョニーは行方不明」(ホァン・シー監督)台湾
「とんぼの眼」(シュー・ビン監督)中国
「シャーマンの村」(ユー・グァンイー監督)中国
「氷の下」(ツァイ・シャンジュン監督)中国
「泳ぎすぎた夜」(五十嵐耕平、ダミアン・マニベル監督)日本、フランス
「相愛相親」(シルビア・チャン監督)中国、台湾
「24フレーム」(アッバス・キアロスタミ監督)イラン、フランス
「時はどこへ?」(ウォルター・サレス、アレクセイ・フェドルチェンコ、マドハル・バンダルカル、ジャーミル・X・T・クベカ、ジャ・ジャンク―監督)ブラジル、ロシア、インド、南アフリカ、中国
「サムイの歌」(ペンエーグ・ラッタナルアーン監督)タイ、ドイツ、ノルウェー
「天使は白をまとう」(ビビアン・チュウ監督)中国
「ファンさん」(ワン・ビン監督)香港、フランス、ドイツ
「ニッポン国VS泉南石綿村」(原一男監督)日本
「東京ヴァンパイアホテル 映画版」(園子温監督)日本
「モアナ(サウンド版)」(ロバート・J・フラハティ、フランシス・H・フラハティ、モニカ・フラハティ監督)アメリカ
「山中傳奇(デジタル修復版)」(キン・フー監督)台湾
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内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。
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