マラン・カルミッツ : ウィキペディア(Wikipedia)
マリン・カルミッツ(Marin Karmitz、1938年10月7日 ブカレスト - )は、フランスの映画興行者、映画配給者、映画プロデューサー、映画監督であり、いわゆる「作家」のインディペンデント映画に特化した映画会社MK2の創業者である。マラン・カルミッツと誤記しがちだが、フランス名ではないので注意。
来歴・人物
1938年10月7日、ルーマニアの首都ブカレストに生まれる。一家はユダヤ人家庭で、9歳のときにフランスの首都パリへ移住する。
バカロレアを取得し、IDHECに入学、チーフ撮影助手になる。とりわけアニエス・ヴァルダとジャン=リュック・ゴダールと仕事をしている。自らの作品を自らの手で演出したい欲求がつのり、ハウスプロダクション「MK2」社を設立、まずは排他的なまでに短編(とくに1969年の『Camarades』を含むカルミッツ監督作)の製作に同社は捧げられた。
同社は作品をいかに普及するかの問題にいきあたり、自ら劇場興行者になることを決意する(最初の劇場は1974年、バスティーユにオープンした)。
インディペンデント映画のプロデューサーとしての彼の役割において急速に知られ始め、エンタテインメント映画、とくにアメリカの産業に合わせたポジションをとるようになる。彼自身このように語っている。「創造なき企業、クリエイターなき企業は、記憶もなくアイデンティティもなく、社会とも一体化していない企業である。さもなければ、同一時間帯に同じ「余暇」の放送番組を観るような企業であり、墓地の企業が社会平和を保つようなものである」(『La création face aux systèmes de diffusion』からの引用)。
カルミッツはアンテルミッタン(intermittent)の運動にも助成金の文化にも、「創造と見世物とが混同された、色濃い協調組合主義(コルポラティスム、corporatisme)の闘争」にも反対を表明している。彼いわく「芸術家(artiste)とは被援助者(assisté)であるべきではない」と。
現在では、カルミッツの興行会社の保有するシネコンは11サイト(すべてパリ市内)となった。彼のおもな活動は依然映画製作であり、数年にわたって、彼は自社の映画をDVDとして供給するために映像編集を行っている。非常に興味深い映画作家のカタログである。アラン・レネ、クロード・シャブロル、フランソワ・トリュフォー、ジャック・ドワイヨン、ミヒャエル・ハネケ、ルイ・マル、チャールズ・チャップリン、そしてカルミッツ自身。
2004年の初め、メル・ギブソン監督の映画『パッション』の配給を拒絶、タラク・ベン・アマールが配給権を買い取った。
2005年10月、彼は「MK2」社とすべての子会社を退き、息子のナタナエル(Nathanaël Karmitz)に譲った。
フィルモグラフィー
- デフォルトでは製作年の昇順に配列。作品名は50音順ソート、原題はアルファベット順ソート。
- 左3列はソートボタンが表示されていないが、見出し枠をクリックすればソート可能。
- 分類の列の空欄は長編作品。
監 | 製 | 他 | 作品名 | 原題 | 分類 | 製作年 | 監督 | 製作 | スタッフ/出演者/備考 |
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助監督 | Les Honneurs de la guerre | 1960年 | ジャン・ドヴェール | 脚本/ジャン=シャルル・タケラ | |||||
助監督 | 5時から7時までのクレオ | Cléo de 5 à 7 | 1961年 | アニエス・ヴァルダ | ジョルジュ・ド・ボールガール、カルロ・ポンティ | ||||
|製作 | パリの一日 | Un jour à Paris | 短編 | 1962年 | セルジュ・コルベール | カルミッツ | |||
助監督 | Aurelia | 1964年 | アンヌ・ダストレ | ||||||
監督 | Nuit noire, Calcutta | 短編 | 1964年 | カルミッツ | 脚本/マルグリット・デュラス出演/モーリス・ガレル | ||||
監督 | Les Idoles | 短編 | 1964年 | カルミッツ | 出演/ジョニー・アリディ、シルヴィ・ヴァルタン | ||||
監督 | Comédie | 短編 | 1966年 | カルミッツ | 脚本/サミュエル・ベケット撮影/ピエール・ロム | ||||
監督 | 製作 | Adolescence | 1966年 | カルミッツ | カルミッツ | 出演/ソニア・ペトロヴナ | |||
|製作 | チュイルリー公園 | Le Jardin des tuileries | 短編 | 1966年 | ギー・ジル | カルミッツ | |||
監督 | 脚本 | Sept jours ailleurs | 長編デビュー作 | 1968年 | カルミッツ | クロード・ルルーシュ | |||
監督 | 製作 | 脚本 | Camarades | 1969年 | カルミッツ | カルミッツ | 撮影/ピエール=ウィリアム・グレン共同製作/ダニエル・ドゥロルム、クロード・ルルーシュ、ジャック・ペラン、イヴ・ロベール出演/ジュリエット・ベルト | ||
監督 | 出演 | Coup pour coup | 1972年 | カルミッツ | 独仏合作 | ||||
|総指揮 | 勝手に逃げろ/人生 | Sauve qui peut (la vie) | 1980年 | ジャン=リュック・ゴダール | カルミッツ | 出演/イザベル・ユペール撮影/ウィリアム・リュプチャンスキー、レナート・ベルタ音楽/ガブリエル・ヤレド | |||
|製作 | 赤い影 | L'Ombre rouge | 1981年 | ジャン=ルイ・コモリ | カルミッツ | 撮影/ウィリアム・リュプチャンスキー音楽/ミシェル・ポルタル英語字幕付きシネクラブ上映 | |||
|製作 | Le Mur | 1983年 | ユルマズ・ギュネイ | カルミッツ | |||||
|製作 | ル・ボン・プレジィール~大統領の秘め事ボン・プレジール~秘め事(TV放映題) | Le Bon Plaisir | 1984年 | カルミッツ | 音楽/ジョルジュ・ドルリュー東京国際映画祭上映TV5MONDE字幕付き放映 | ||||
|製作 | 意地悪刑事 | Poulet au vinaigre | 1985年 | クロード・シャブロル | カルミッツ | 撮影/ジャン・ラビエシネクラブ上映 | |||
|製作 | ノー・マンズ・ランド | No Man's Land | 1985年 | アラン・タネール | カルミッツ | 仏英スイス西ドイツ合作フィルムセンター無字幕上映 | |||
|製作 | イザベルの誘惑 | La Tentation d'Isabelle | 1985年 | ジャック・ドワイヨン | カルミッツ | ||||
|製作 | 刑事ラヴァルダン | Inspecteur Lavardin | 1986年 | クロード・シャブロル | カルミッツ | 仏スイス合作特集上映のみ | |||
|製作 | 三文オペラ リオ1941 | Ópera do Malandro | 1986年 | ルイ・ゲーラ | カルミッツ | ||||
|製作 | メロ | Mélo | 1986年 | アラン・レネ | カルミッツ | ||||
|製作 | マスク | Masques | 1987年 | クロード・シャブロル | カルミッツ | ||||
|総指揮 | グッドモーニング・バビロン! | Good Morning, Babylon | 1987年 | タヴィアーニ兄弟 | カルミッツ | ||||
|製作 | 幻の女 | La Vallée fantôme | 1987年 | アラン・タネール | カルミッツ | 仏スイス合作 | |||
|製作 | さよなら子供たち | Au revoir les enfants (enwp) | 1987年 | ルイ・マル | カルミッツ | ||||
|製作 | 主婦マリーがしたこと | Une affaire de femmes | 1988年 | クロード・シャブロル | カルミッツ | 出演/イザベル・ユペール | |||
|製作 | 人生は長く静かな河 | La vie est un long fleuve tranquille | 1988年 | エティエンヌ・シャティリエーズ | カルミッツ | 共同製作/シャルル・ガッソ | |||
|製作 | お家に帰りたい | I Want to Go Home | 1989年 | アラン・レネ | カルミッツ | ||||
|総指揮 | タクシー・ブルース | Taxi Blues | 1990年 | パーヴェル・ルンギン | カルミッツ | ソ仏合作 | |||
|製作 | ボヴァリー夫人 | Madame Bovary | 1991年 | クロード・シャブロル | カルミッツ | 出演/イザベル・ユペール | |||
|製作 | L'Amour en deux | 1991年 | ジャン=クロード・ガロッタ | カルミッツ | 仏スイス・ベルギー合作 | ||||
|製作 | ベティ | Betty | 1992年 | クロード・シャブロル | カルミッツ | 特集上映のみ | |||
|製作 | トリコロール/青の愛 | Trois couleurs: Bleu | 1993年 | クシシュトフ・キェシロフスキ | カルミッツ | 出演/ジュリエット・ビノシュ | |||
|製作 | ジェリコー・マゼッパ伝説 | Mazeppa | 1993年 | カルミッツ | |||||
|製作 | トリコロール/白の愛 | Trois couleurs: Blanc | 1994年 | クシシュトフ・キェシロフスキ | カルミッツ | 出演/ジュリー・デルピー | |||
|製作 | 愛の地獄 | L'Enfer | 1994年 | クロード・シャブロル | カルミッツ | ||||
|製作 | トリコロール/赤の愛 | Trois couleurs: Rouge | 1994年 | クシシュトフ・キェシロフスキ | カルミッツ | 出演/イレーヌ・ジャコブ、ジャン=ルイ・トランティニャン | |||
|製作 | En mai, fais ce qu'il te plaît | 1995年 | ピエール・グランジュ | カルミッツ | |||||
|製作 | 沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇 | La Cérémonie | 1995年 | クロード・シャブロル | カルミッツ | ||||
|製作 | Prea târziu(Too Late) | 1996年 | カルミッツ | ||||||
|製作 | 深紅の愛 DEEP CRIMSON | Profundo carmesí | 1996年 | アルトゥーロ・リプスタイン | カルミッツ | 仏メキシコ・スペイン合作 | |||
|製作 | Les Médiateurs du Pacifique | ドキュメンタリー | 1997年 | シャルル・ベルモン | カルミッツ | ||||
|製作 | 最後の賭け | Rien ne va plus | 1997年 | クロード・シャブロル | カルミッツ | ||||
|製作 | サイレンス | Sokout(Le Silence) | 1998年 | モフセン・マフマルバフ | カルミッツ | イラン仏タジキスタン合作 | |||
|製作 | Terminus paradis | 1998年 | カルミッツ | ||||||
|製作 | りんご | Sib | 1998年 | サミラ・マフマルバフ | カルミッツ | 仏蘭イラン合作 | |||
|製作 | 嘘の心 | Au cœur du mensonge | 1999年 | クロード・シャブロル | カルミッツ | ||||
|製作 | 少年たち | Petits frères | 1999年 | ジャック・ドワイヨン | カルミッツ | 特別上映 | |||
|製作 | 風が吹くまま | Bād mā rā khāhad bord(Le vent nous emportera) | 1999年 | アッバス・キアロスタミ | カルミッツ | ||||
|製作 | Cours toujours | 2000年 | カルミッツ | ||||||
|製作 | 啓示と奇蹟 | Signs & Wonders | 2000年 | カルミッツ | |||||
|製作 | コード・アンノウン | Code inconnu: Récit incomplet de divers voyages | 2000年 | ミヒャエル・ハネケ | カルミッツ | 出演/ジュリエット・ビノシュ仏独ルーマニア合作 | |||
|製作 | 甘い罠 | Merci pour le chocolat | 2000年 | クロード・シャブロル | カルミッツ | ||||
|製作 | ABCアフリカ | ABC Africa | 2001年 | アッバス・キアロスタミ | カルミッツ | ||||
|製作 | イカレた一夜 | [[:fr:Carrément à l'ouest]] | 2001年 | ジャック・ドワイヨン | カルミッツ | ||||
|製作 | ケドマ 戦禍の起源 | Kedma | 2002年 | アモス・ギタイ | カルミッツ | 仏伊イスラエル合作 | |||
|製作 | Matir moina(L'Oiseau d'argile) | 2002年 | カルミッツ | 仏パキスタン・バングラデシュ合作 | |||||
|製作 | 10話 | Ten | 2002年 | アッバス・キアロスタミ | カルミッツ | ||||
|製作 | アパートメント5C室 | Apartment #5C | 2002年 | カルミッツ | 米仏イスラエル合作 | ||||
|製作 | 悪の華 | La Fleur du mal | 2003年 | クロード・シャブロル | カルミッツ | ||||
|製作 | 5 five 〜小津安二郎に捧げる〜 | Five Dedicated to Ozu | 2003年 | アッバス・キアロスタミ | カルミッツ | 日仏イラン合作 共同製作NHK | |||
|製作 | アンデスマ氏の午後 | L'Après-midi de Monsieur Andesmas | 2004年 | ミシェル・ポルト | カルミッツ | 原作/マルグリット・デュラス | |||
|製作 | 10 on Ten | ドキュメンタリー | 2004年 | アッバス・キアロスタミ | カルミッツ | 仏イラン合作 | |||
|製作 | 女は男の未来だ | Yeojaneun namjaui miraeda(La Femme est l'avenir de l'homme) | 2004年 | ホン・サンス | カルミッツ | 仏韓合作 | |||
|製作 | 映画館の恋 | Geuk jang jeon(Conte de cinéma) | 2005年 | ホン・サンス | カルミッツ | 仏韓合作 | |||
|製作 | Daddy, Daddy USA | 2005年 | ピエール・ホジスン | カルミッツ | |||||
|製作 | パラノイド・パーク | Paranoid Park | 2007年 | ガス・ヴァン・サント | カルミッツ | 米仏合作 | |||
|総指揮 | トスカーナの贋作 | Copie conforme | 2008年 | アッバス・キアロスタミ | カルミッツ | 仏イラン合作 | |||
|製作 | 夏時間の庭 | L'Heure d'été | 2008年 | オリヴィエ・アサヤス | カルミッツ | 出演/ジュリエット・ビノシュ、シャルル・ベルリング |
外部リンク
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