第86回アカデミー賞 全部門ノミネート
監督賞
デビュー作「Spanking the Monkey」(94)がサンダンス映画祭でプレミア上映され、観客賞を受賞、インディペンデント・スピリット・アワードでも新人監督賞と新人脚本賞を受賞する。続く「アメリカの災難」(96)も評価され、異色の戦争映画「スリー・キングス」(99)には、ジョージ・クルーニーやマーク・ウォールバーグらビッグネームが参加した。ウォールバーグを主演に迎え、実在したアイルランド系ボクサーを題材にした「ザ・ファイター」(10)では、アカデミー監督賞に初ノミネートされた。続く「世界にひとつのプレイブック」(12)は、第85回アカデミー賞で作品賞はじめ、監督賞や脚本賞など8部門にノミネートされた。
メキシコ・メキシコシティ出身。91年、「最も危険な愛し方」(日本劇場未公開)で長編映画監督デビューし、メキシコのアカデミー賞にあたるアリエル賞のオリジナル脚本賞を実弟のカルロス・キュアロンとともに受賞。シドニー・ポラック制作総指揮のTVシリーズ「堕ちた天使たち」(93)で米国に進出し、95年に映画「リトル・プリンセス」でハリウッドデビュー。10年ぶりに母国で撮影した「天国の口、終りの楽園。」(01)が世界的に評価され、アカデミー脚本賞にカルロスとともにノミネート。人気シリーズの第3弾「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」(04)の監督に抜てきされ、SF「トゥモロー・ワールド」(06)も絶賛された。その後、同じくメキシコ出身のギレルモ・デル・トロ、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥと製作会社チャ・チャ・チャを設立する。「ゼロ・グラビティ」(13)が世界中で大ヒットを記録、第86回アカデミー賞では監督賞と編集賞を受賞し、同年度最多となる7部門を制した。19年、Netflixの製作でモノクロのメキシコ映画として手がけたヒューマンドラマ「ROMA ローマ」(18)で、2度目のアカデミー監督賞のほか外国語映画賞、撮影賞の3部門を受賞した。
スタンフォード大学を卒業後、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の映画学科に通う。数本の短編映画を制作した後、「The Passion of Martin(原題)」(91)で長編映画監督デビュー。同作をはじめ、全ての監督作で脚本も担当している。劇場映画3作目「ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!」(99・日本劇場未公開)で、共同執筆者のジム・テイラーとともにアカデミー脚色賞にノミネートされた。スティーブン・スピルバーグ監督の最大のヒット作となった「ジュラシック・パーク III」(01)の脚本を手がけ、自身の監督作「アバウト・シュミット」(02)でゴールデングローブ賞の脚本賞を受賞。「サイドウェイ」(04)ではアカデミー脚色賞を受賞し、監督賞にもノミネートされた。7年ぶりの長編監督作「ファミリー・ツリー」(11)で2度目のアカデミー脚色賞を再び手にしたほか、LA批評家協会賞の作品賞を受賞するなど高い評価を得ている。
英ロンドン出身。カリブ系移民の家庭に生まれ育つ。大学在学中に映像制作を始めた。ロンドンのコンテンポラリー・アート界で注目を集め、99年にビデオ・インスタレーション 「Drumroll」で、英国の美術館・テート主催のターナー賞を受賞。03年には公式戦争アーティストとしてイラクに赴いた。08年、マイケル・ファスベンダーを主演に迎えた「HUNGER ハンガー」で長編映画監督としてデビュー。カンヌ国際映画祭の新人賞カメラドールや、英国アカデミー賞の新人賞カール・フォアマン賞を受賞する。続く「SHAME シェイム」(11)では、ファスベンダーにベネチア国際映画祭の男優賞をもたらした。製作も務めた監督3作目「それでも夜は明ける」(13)ではマックイーンの才能にほれ込んだブラッド・ピットが製作と出演を兼ね、ファスベンダーも出演。自由の身である黒人男性が裏切りにあい奴隷として過ごした12年間を描き、アカデミー賞で見事作品賞を受賞した。
シチリア系イタリア移民の家に生まれる。ニューヨークのリトル・イタリーで少年時代を過ごし、ニューヨーク大学で映画を専攻する。卒業後は母校の講師を務めながら、様々な映画関係の仕事をこなし、72年低予算映画の帝王ロジャー・コーマンがプロデュースした「明日に処刑を…」で商業映画監督デビュー。翌年「ミーン・ストリート」が評判となり、76年「タクシードライバー」でカンヌ映画祭パルムドールを受賞、主演のロバート・デ・ニーロとともにアメリカ映画の新世代を代表する存在となる。以後、「レイジング・ブル」(80)、「キング・オブ・コメディ」(83)、「グッドフェローズ」(90)、「カジノ」(95)とデ・ニーロとともに傑作を連発した。
近年のアカデミー賞では、「ギャング・オブ・ニューヨーク」(02)や「アビエイター」(04)で監督賞にノミネート。香港映画「インファナル・アフェア」のリメイク「ディパーテッド」(06)で作品賞と監督賞を受賞。自身初の試みとなった3D映画「ヒューゴの不思議な発明」(11)でも、アカデミー賞技術部門で5部門を受賞した。
第63回エミー賞ドラマ部門最優秀監督賞を受賞したHBOのTVシリーズ「ボードウォーク・エンパイア 欲望の街」(10~14)、自身の監督作では歴代最高の世界興収を記録した「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(13)、長年念願だった企画を実現させた遠藤周作原作の「沈黙 サイレンス」(16)などを経て、19年にはデ・ニーロとの黄金コンビを復活させたNetflixオリジナル映画「アイリッシュマン」を発表し、9度目となるアカデミー監督賞にノミネートされた。