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デビッド・リンチの感動作「ストレイト・ストーリー」 リンチの元パートナー、メアリー・スウィーニーが明かす制作秘話

2025年12月27日 10:00

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メアリー・スウィーニーと撮影中のデビッド・リンチ監督
メアリー・スウィーニーと撮影中のデビッド・リンチ監督
(C)AFLO

愛すること、許すことをシンプルに描き、デビッド・リンチ史上唯一無二の感動作とされる「ストレイト・ストーリー」。リンチ自身が監修した4Kリマスター版が、リンチの1周忌にあたる1月9日から公開される。当時のリンチの公私にわたるパートナーで、製作・脚本・編集を担当したメアリー・スウィーニーのインタビューが公開された。

画像6(C)1999 - STUDIOCANAL / PICTURE FACTORY - Tous Droits Reserves

1994年、ニューヨークタイムズ紙で、73歳のアルビン・ストレイトが、10年来仲違いしていた兄が病に倒れたことを知り、時速8kmのトラクターに乗って6週間の旅をするという実話の記事を読んだスウィーニーが、リンチ監督による映画化を構想した。

――なぜこの実話を映画化されようと思ったのでしょうか?

私はウィスコンシン州出身で、父も祖父も農家なんです。ストーリーというよりは、アルヴィンのキャラクターに魅了されました。いわば典型的な中西部の男性で、昔からよく見てきた人々です。口数が少なくて、頑固で皮肉っぽいユーモアの持ち主です。そんな彼は運転免許もお金もない、どんなにクレイジーに見えても自己流でやりたい人です。それでも彼は兄に会うために、トラクターというとんでもない方法で旅に出る。あの地域では誰もがトラクターが大好きですから。

画像2© 1999 – STUDIOCANAL / PICTURE FACTORY – Tous Droits Réservés
――事実に基づいた作品ということで、脚本を執筆する前にどのようなリサーチを行ったのでしょうか?

権利を得るまでに時間がかかったので、正式にリサーチを始めたのは1998年になってからでした。というのも1994年には彼の記事を読んで興味を持っていたのですが、その後アルヴィンが亡くなったため、家族を探して映画化の許可をとりました。そして1998年の春、ついに映画化の権利を取得した私は当時のニュース記事や取材資料を基に、彼が実際に通ったルートについて調べました。さらには彼の故郷であるアイオワ州ローレンスを訪れ、彼を知る多くの人々に会って話を聞きました。また6人か7人いた彼の子どもたちにも会い、丸一日かけて思い出話を聞きました。彼はすでに亡くなっていたので、それが彼について直接知るための最も貴重な情報源だったんです。その後、私たちは実際のルートを車で走りました。北アイオワの平坦な土地からミシシッピ渓谷、そしてウィスコンシン州南西部のドリフトレス地域(氷河による浸食がない地域。アメリカ中西部で見られる)へと地形が変化していくのを体験しました。それは物語を理解するうえで非常に重要な助けとなりました。

画像3© 1999 – STUDIOCANAL / PICTURE FACTORY – Tous Droits Réservés
――リンチ監督が初めて脚本を読んだときの反応はどうでしたか?
私は、ウィスコンシンの幼馴染であるジョン・ローチとともに、1998年4月にリサーチを行った後、離れた場所に住みながらも電話で話し合い、脚本を書き上げました。リンチには、時折、アルヴィンの話はしていたのですが、4年間もの間「興味がない」と言い続けていました。しかし、脚本を読んで感動して、すぐ「ぜひとも撮りたい」と言われたのです。彼に直接理由を聞いたわけではないんですが、その当時、彼の年老いた両親がご存命でもあったので、そういった点で感情移入した部分もあるのではないかと思います。
――公開当時、周囲の「ストレイト・ストーリー」の反応はいかがでしたか?

デビッドはあまり批評は読まないですが、当時、インタビューで「なんでこの映画を作ったのか?」と聞かれていました。物語と脚本に惹かれたし、自分が撮るべきだという直観を信じたと答えていました。私はデビッドのことをよく知っているので、この映画がデビッドらしくないとは思わないんです。彼の作る作品は、混乱していたり、暗かったりしますが、実際に彼に接すると優しいし、明るい人間です。

画像4© 1999 – STUDIOCANAL / PICTURE FACTORY – Tous Droits Réservés
――リンチ作品の多くを編集されていますが、どのようなコラボレーションをされるんでしょうか?

私もわりと直感的なタイプですが、彼も直感的な人です。全く話し合わないわけではないのですが、例えばまずリールごとにファーストカットを見て、彼がこうしてほしいということをメモしていなくなります。それを私が見て編集し、また彼がチェックします。そしてまたメモを残していなくなる。その繰り返しという感じです。いなくなるのは、彼は映画製作以外にも絵をかいたり、陶芸をしたりと、色々とやる人だから忙しいのです。

――リンチ監督が逝去されてから早くも一年が経ちますね。今の率直なお気持ちをお聞かせ願えますか?

彼の死は私にとってだけでなく、皆にとっても大きな変化でした。まったく予想していなかった訳ではないですが、物事の有限性を改めて実感しました。その喪失が世界中に与えた衝撃は計り知れません。でも彼は今も私たち——家族や作品の中だけではなく、彼の創造性に触れた世界中の人々——の中に生きています。彼は本当に多くの人々の人生に影響をもたらした。その事実は今もこの先も変わることはありません。

画像5(C)1999 - STUDIOCANAL / PICTURE FACTORY - Tous Droits Reserves
――26年ぶりの再上映となります。日本の観客にメッセージをお願いします。

今、世界は戦争が増えて、より不寛容になっていると思います。以前より、この映画が多くの方に響くといいなと思います。自然の素晴らしさ、隣人の大切さ。そしてもっとゆっくりと生きること。そんなことを皆さんに感じていただけると嬉しいです。

1月9日からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開。

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