食を通して浮かび上がる福島の“いま”――「ロッコク・キッチン」公開決定! 予告編&ポスタービジュアル完成
2025年12月19日 17:00

ノンフィクション作家・川内有緒と映画監督・三好大輔が共同監督したドキュメンタリー「ロッコク・キッチン」が、2026年2月14日よりポレポレ東中野、3月6日よりシモキタ - エキマエ - シネマ「K2」ほかで全国順次公開が決定。予告編とポスタービジュアルが完成した。

本作は、川内と三好が東京と福島をつなぐ国道6号線(通称「ロッコク」)を車で旅し、原発被災地でツアーを企画するインド人女性のスワスティカ・ハルシュ・ジャジュさん、「おれたちの伝承館」を運営する写真家・中筋純さん、夜だけオープンする本屋「読書屋 息つぎ」の武内優さんの“キッチン”を軸に、その日常や人生を軽やかに描き出すドキュメンタリー。川内がインタビューと構成を担い、三好が映像撮影を中心に担当した。


キッチンに立つ姿、料理の手ざわり、食卓で交わされる言葉。一人暮らしのキッチンや、大勢で囲む鍋、寒い夜のスープ。どれもこの過酷な体験をした土地で育まれた「生活の色」であり、喜びや悲しみの記憶であり、希望の証である。「食」という切り口もあり、これまで作られてきた震災関連のドキュメンタリーとは一線を画す映画となる。また、本編には、地元住民の協力のもと、震災以前のホームムービー映像も挿入、かつての町の日常や家族の風景を映し出した映像は、震災後の再開発や解体により消えつつある「暮らしの記憶」を、次世代へ受け渡す貴重な手がかりとなっている。


このプロジェクトは、ドキュメンタリーだけでなく、川内のノンフィクションエッセイにもなっている。2024年10月より文芸誌「群像」(講談社)にてスタートした連載を収録した書籍版「ロッコク・キッチン」は、第35回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞するなど大きな話題になった。また、10月に開催されたアジア最大級のドキュメンタリー映画祭「山形国際ドキュメンタリー映画祭2025」にて本作がワールドプレミア上映された際には、立ち見がでるほどの大盛況となり、満員の観客とともに無事世界初上映を終え、このほど劇場公開される運びとなった。

完成したポスタービジュアルは、「読書屋 息つぎ」のポートレートをメインに、かき氷を分け合う子どもたちや、台所で野菜をざく切りする男性など、それぞれの暮らしのあり方が切り取られている。予告編(https://youtu.be/HrRTahmwIYI?si=YjFbqGVsRvOmTZ8D)は、今もなお震災、原発事故の爪痕が残る福島の映像から始まり、そこに暮らすスワスティカさんらの仕事風景やインタビューのほか、チャイやポトフ、クラムチャウダーなど、おいしそうな料理の映像が次々に紡がれていく。彼らの食卓から見えてくる福島の“いま”、そしてそれぞれの故郷への思いが伝わるものとなっている。公開決定を受けての川内監督、三好監督からのコメントは下記の通り。


震災から時を経たある日、避難指示が解除されたばかりの暗い町に、たった一軒だけ灯りがもれる家がありました。あの家の人はいま夜ご飯を食べているのだろうか――。それから、「みんな、なに食べて、どう生きてるんだろ?」という問いと共に、ロッコクを駆け抜けてきました。人と人が出会い、一緒に温かいスープを飲む。それは、当たり前に見えて当たり前ではありません。一度全ての光を失ったこの地に来るたびに、人とのつながりの儚さを思い、それでも人生の中で出会えた喜びで胸がいっぱいになります。ぜひ本作を見ていただけたら嬉しいです。
東日本大震災が起こり世界も自分も変わった。放射能から逃げるように東京から長野に移住したけれど、これでいいのか?という思いがずっと燻っていた。そんな原発事故でさえ、時間が経てば記憶が薄れていく。忘れることは簡単だ。でも忘れたくない。訪れるたびに変化する町で、そこに暮らしている人たちと出会い話をし、ご飯を食べながらカメラをまわし続けた。想像を遥かに超える生き方に心が震えた。あぁ、この人たちのあるがままを伝えたい。共に過ごした時間を忘れないために。
(C)一之瀬ちひろなお、公開記念のプレイベントも開催決定。1月16日から18日まで、恵比寿のギャラリー「山小屋」にて写真の展示イベントを、1月31日には作品にも登場する福島県の富岡町にて先行上映イベントも行われる。
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