田中泯、生前の坂本龍一との会話は”宇宙的世間話”「Ryuichi Sakamoto: Diaries」公開記念舞台挨拶
2025年11月29日 20:30

世界的音楽家・坂本龍一の最後の3年半の軌跡を辿ったドキュメンタリー映画「Ryuichi Sakamoto: Diaries」公開記念舞台挨拶が11月29日、TOHOシネマズ シャンテにて行われ、本作で朗読を担当した田中泯と、大森健生監督が登壇した。
(C)“Ryuichi Sakamoto: Diaries” Film Partners「Ryuichi Sakamoto: Diaries」は、3年半にわたる闘病生活とその中で行われた創作活動。目にしたもの、耳にした音を多様な形式で記録し続けた本人の「日記」を軸に、遺族の全面協力のもと提供された貴重なプライベート映像やポートレートをひとつに束ね、その軌跡を辿ったドキュメンタリー映画。日記の朗読を務めるのは、生前親交のあったダンサーで俳優としても活躍する田中泯。本作は、24年にNHKで放送され大きな反響を呼んだ「Last Days 坂本龍一 最期の日々」をベースに、未完成の音楽や映像など映画オリジナルとなる新たな要素を加えて制作された。
生前、坂本と交流があったという田中は「ちょうどYMOが世界を回り始めたのと同じくらいの時期に僕も世界中を回り始め、それから2000年代に入るまで毎年8カ月ぐらいは日本以外で踊っていましたが、どこへ行ってもリュウイチ・サカモトの名前は知られていました。本当に驚くべき浸透力というか、音楽の力だと思います。坂本さんの名前は、クラシックの作曲家と同じくらいに、若い人からもずっと知られているんだと思います」と、国も世代も超えて影響を与えてきた坂本さんについて語った。
(C)“Ryuichi Sakamoto: Diaries” Film Partners大森監督は田中に朗読を依頼した理由を「坂本さんと深い関係にあった人たちと議論を重ねる中で、坂本さんの日記を読むという非常に難しい仕事を担えるのは田中泯さんしかいない。ということでオファーさせていただき、ご快諾いただいた」と振り返る。
そのオファーを受けた田中は、「文学者や詩人が心境を綴った日記のようなのを僕も随分読んできました。坂本さんの日記というのは、日記を読む人や世界に対してペンを走らせていた気がしてしょうがない。今生きている私が、その文字を私の感覚で読む、上手に聞かせよう考えるのは違うなと思いました」と振り返り、「僕はダンサーなので、自分の体で踊って口に出していく。それが映画を観る人に声として伝わっていくということに、猛烈なプレッシャーを感じました」と、依頼を受けた時の心境を明かした。
また、日記で綴られている言葉について、「坂本さんが書いた“みかん”と、自分が捉える “みかん”とではどのぐらい違うのか自信がなかったんです。でも、いろんな環境を空想しながら自分の口から言葉を出してみる、ということをやりました。自分の踊りを総動員してその言葉を捉えていった気がしています。大変な出来事でした」と述懐した。
続けて、坂本さんと生前交わした会話についての話題に。「自分たちが今、この世に生きているということから始まって、人間って一体何をしていくんだろうか、これからどうしていくんだろうとか。宇宙的世間話というか、“生き物”としての人間の未来ややってきたこと。そんな話ばかり何時間もダラダラとしていました」という。さらに、「会話の続きは、彼が死んだから終わりというものではなく、これからずっと続けるものなんだと思います。それは僕の癖で、先輩たち、大好きだった人たち、残念ながら若くして死んでしまった人たちとの会話をずっと続けているつもりで生きています。それは恥ずかしい思いをしたくないという気持ちもあるし、見ていてほしいという気持ちもある。一緒に戦わなきゃいけないということも。特に坂本さんの場合はそれが強くあります」とその思いをせつせつと語った。
(C)“Ryuichi Sakamoto: Diaries” Film Partners最後の瞬間まで創作に取り組んできた坂本さんについて「坂本さんは選んだわけでもないのに病気になりました。そしてその意味においては、わたしはまだ生きている。皆さんも生きている。でも、いつ死ぬかわからない。分かっている人もいるかもしれないが、みんな違うんです」と語った田中。その上で坂本さんの日記には「死ぬことだけに囚われていたわけではない。全くの孤独で文字を書いてはいません。絶望も書いてはいません。『悔しい』と言っているんですから」と続け、観客に向けて「皆さん暗くなる必要はないです。僕たちは死ぬんです、間違いなく。そして間違いなくたった一回の人生を送っています。これが一番大切なことなんじゃないですか」と強調した。

そしてあらためて坂本さんの魅力について問われた田中は「それを言葉で言わなきゃいけないんですか?」と笑いながらも、「大人だったら長いものには巻かれろで、それでいいじゃないかとか言うのを、絶対に『うん』と言わないで生き続けた人なわけじゃないですか。そういった意味では “ガキンチョ坂本龍一”というか。皆さんもたぶん彼に共感するのは、そういうところなんだと思うんです。そういう人に会いたくて、僕は生きています。たぶん皆さんもそれに近い感覚をお持ちだから、今日足を運んでいるんじゃないでしょうか?」とかみ締めるように語る。
そして最後のメッセージを求められた田中は「人間って死んでいった人のことは忘れるようにできているんです。だからこそ墓石とか、お盆とか、銅像を作ったりするわけですが、でもそんなことは忘れましょう。坂本龍一という名前すら忘れてもいいのかもしれません。彼がくれた刺激を忘れないようにすれば、それでいいんじゃないでしょうか。ぜひこの映画のこと、誰かに伝えてあげてください。それがたぶん坂本さんへの一番の供養かもしれません」と語りかける。
(C)“Ryuichi Sakamoto: Diaries” Film Partners続く大森監督も「大手を振って『観てね』となかなか言い難い面があるタイプの映画ではありますが、作品が、深く、静かに、じんわりと浸透していくといいなと思っています。できれば身近な親しい人、あわよくばその隣の人まで、多くシェアしてくださるとありがたいなという気持ちでいっぱいです」と呼びかけ、大きな拍手がわき起こった。
(C)“Ryuichi Sakamoto: Diaries” Film Partners
関連ニュース
「Ryuichi Sakamoto: Diaries」あらすじ・概要・評論まとめ ~命と音に向き合う“人間・坂本龍一”を通じ、最期の日々を想う映像体験~【おすすめの注目映画】
2025年11月27日 06:00
映画.com注目特集をチェック
問題です。
【子ども17人が同時に行方不明に…】このヒミツ知りたい? ネタバレ厳禁考察ミステリー緊急公開
提供:ワーナー・ブラザース映画
かっこよすぎだろ…
ビジュアルもアクションも友情も絆も主題歌も、すべてクリティカルヒットしました
提供:ワーナー・ブラザース映画
ズートピア2
【待望の最新作がもうすぐ公開!!】でも「1」を観た人、意外と少ない…なんてもったいない!!!!
提供:ディズニー
ナイトフラワー
【衝撃の感動作】昼、母親。夜、ドラッグの売人――大切な人のためならどこまでも頑張れる。
提供:松竹
人生にぶっ刺さる一本
すべての瞬間が魂に突き刺さり、打ち震えるほどの体験が待っている。
提供:ディズニー
日本で実際に起きた“衝撃事件”を映画化
【前代未聞の事件】そして鑑賞後、あなたは“幸せ”の本当の意味を知る――
提供:KDDI