草彅剛×三宅喜重監督が濃密に語らう「三宅監督は“僕がきれいに映る角度”を分かっている」【「終幕のロンド」対談】
2025年11月29日 18:00

カンテレ・フジテレビ系月10ドラマ「終幕のロンド もう二度と、会えないあなたに」(毎週月曜午後10時)で、遺品整理人の鳥飼樹を演じる草彅剛と、草彅とは長く親交のある演出担当・三宅喜重監督の対談が実現した。
草彅の初主演ドラマ「いいひと。」(97)で助監督だった三宅は、“僕シリーズ3部作”“戦争シリーズ3部作”などで長年にわたり、草彅×カンテレのタッグ作品に携わってきた人物。共に作品を作り続けてきた戦友とも呼べる2人の対談をインタビュー形式でお届けする。
前回の草彅さんとの「戦争シリーズ」3部作では、復讐劇をテーマに、激しい怒りや悔しさをたぎらせるドラマに取り組んだのですが、今回はそれとは全く違うテイストの“人の想いを大切にする”、そんなドラマを一緒に作りたいと思いました。題材を探している中、いろいろとアドバイスしていただくこともあり、遺品整理人にスポットを当てた作品に挑戦することになりました。
僕もこれまでとは違うベクトルに、三宅監督と一緒に行けたらなという思いがあって。このドラマで遺品整理人という存在について詳しく知ることができて、僕自身、大変勉強になりました。実際に遺品整理のお仕事をされている方が現場に来てくださってお話を聞きながら、いままで三宅監督と作り上げてきたものとは違うステージで、新しいものを生み出そうという心掛けで挑みました。
自分たちも昔に比べて年齢を重ねてきて、周りの関係者や、親族も高齢になってきて、遺品整理について考える機会が増えたということも題材を選ぶ一つの要因になったかなと思います。
遅かれ早かれ自分が持っているモノをいつか整理するわけで。早いうちに意識していたほうが楽なのかなと思う一方で、自分のことになると無頓着というか。決してネガティブなことではなくて、生前整理や遺品整理を前向きに捉えてもらえたらなと思います。
(C)カンテレ僕は、役として遺品整理に向き合っていることもあり、実際の仕事としての感覚は掴めていないかもしれないけれど、樹は遺品を通して亡くなった方の“最後の声”を聞いてその想いをご遺族様に届けなくてはという使命感を抱いている。その行為はどこか聖なるものというか、そこに触れていくためにはやはり研ぎ澄まされた感覚が必要で。肉体的にというよりは精神面ですごくエネルギーを使うなと感じました。
現役の遺品整理人の方に、何度も現場に来ていただいて話を聞きながら撮影を進めていくことが多かったのですが、やはりすごく丁寧というか、そこに“何かがあるんじゃないか”と想いを馳せて遺品を扱っているとおっしゃっていました。そして、その残されたモノの意味を探っていくには、故人様の遺品と向き合うことはもちろん、依頼人の方ともいろいろと話をしないと、その意味までは分かってこないと。
実は、樹をはじめ、「Heaven’s messenger」で働く人たちの苗字は神社名からとっていて、脚本を担当されている高橋(美幸)さんが、メンバーたちに対して、神の使い手のようなイメージで書かれているところもあると聞きました。
樹は、基本的に相手のことを受け入れる人ですが、草彅さんが言う通りそれは昔からではなくて、過去を経て今はそういう人になっている。僕自身は、樹を崇高な人物とは捉えていなくて、“鳥飼樹”という人間を描くことに徹しています。確かにその中で、崇高な人に見えたり別のイメージを持ったり、見る人によってその印象は変わってくるだろうなと思います。
(C)カンテレ三宅監督には伝えていないのですが、あくまで自分の中だけのシチュエーションとして、僕としては、パラレルワールドというか、どこかで実在するお話という感覚の中で、樹を演じている部分がある。それは、いかにも“ドラマ作品”として分かりやすく演じるためではなくて、自分なりのリアルを追求したいという思いから。そのうえで、あまりにも普通のキャラクターだと面白くないし、もうひとつなにかをプラスする作業が、僕は好きなんです。
そんな雰囲気を漂わせている樹だからこそ、家庭での息子とのやりとりは、とてもアットホームで、より樹のキャラクターが生きているよね。
(C)カンテレあと、三宅監督が僕のいい表情を引き出してくれるんです。三宅監督が撮ってくれる僕のアップの顔、すごくきれいでしょ! 三宅監督とは長い付き合いだから“僕がきれいに映る角度”を分かっているんです。だから時としてフィルターを通して樹が聖人のように見えるのかも。
草彅さんならどの角度からでも大丈夫。すべて分かっていますから。
僕のアップを時間をかけてカメラの角度を調整してくれるのですが、やはりカメラの位置が1㎜ずれるだけでも鼻の高さや目の見え方など全然違う。三宅監督はシチュエーションごとに、どの角度で、どの顔が一番視聴者に想いが伝えられるかが分かっているからこそこだわってくれている。自分で見ても「すごくいい顔だな」と思ってしまうくらいなので(笑)。
(C)カンテレそれは僕だけではなくて、カメラマンの力が大きいし、本当に草彅さんがいい顔をしているからです。
三宅監督はもちろん、カメラマンさん、照明さん、メイクさん、衣装さん…僕はみんなの愛情をすごく感じています。この作品には清らかで優しい空気が流れていて、それは三宅監督作品の根底的かつ揺るがないものだなと思います。
僕は三宅監督のことをすごく覚えてます。当時、星(護)監督(「いいひと。」チーフ監督)に怒られながらも、すごく一生懸命で。とにかくガッツがあったし、僕の目には一番頑張っていました。だから監督としてこんなに活躍されているんです。
東京に出てきて初めての連続ドラマの助監督で、こんなに大変なんだ…と思いながら当時はカメラ位置を移動させるためのレールの準備などをしていました。草彅さんは本当に一生懸命な人という印象でした。
お互い一緒ってことですね。
(C)カンテレ僕は必死だっただけなんだけど(笑)。
僕も初めての主役だったから必死でした。そういえば今回の『終幕のロンド』の東京駅での撮影時に、『いいひと。』の1話で僕が演じる北野優二が足を1歩踏み出すと北海道から東京駅になるというシーンを撮ったことを思い出して。位置的にも数メートルしか離れていない、ほぼ同じ場所だったんですけど、その時、三宅監督も僕の顔を見て「思い出してる?」という表情をしていて。
その後、草彅さんと「ここで『いいひと。』の撮影をしたね」と話をして。
三宅監督との意思の疎通でいうと、もうひとつエピソードがあって。実は「終幕のロンド」の1話のエンディングに近い回想の泣くシーンで時間がかかってしまって、僕の“涙待ち”になってしまったんです。その後なんとか乗り越えて無事その日の撮影は終わったんですけど。次の日、三宅監督と、「僕の生きる道」の1話の最後、カップラーメンを食べながら泣くシーンでも泣くのに時間がかかったことを思い出していたら、三宅監督も実はそのことを思い出してたと聞いて。
そうですね。「僕の生きる道」のカップラーメンのシーンを思い出してましたね。長く共に携わるって、作品ごとに思い出があって、同じ想いを分け合う瞬間がある。感慨深いですね。
(C)カンテレ「37歳で医者になった僕 研修医純情物語」でも一緒だったし、三宅監督は一番僕を撮ってくれている監督かもしれないですね。
僕は、助監督から監督になって三番手、二番手、そしてチーフに昇格していったけれど、草彅さんはその全部を見ている人だから、いまさら草彅さんの前でカッコつけてもしかたがないという間柄ですね(笑)。
本当に三宅監督と共鳴しあっているので、頻繁にディスカッションをしなくても、モニターを通してお互いを感じ取っていて。そういう中で今回もお芝居をさせていただいています。
助監督だった頃の自分が、草彅さんの演技について言及するまでに至っていなかったということはありますが、草彅さんを見続けている立場として、作品のたびに変わり続けていますし、成長し続けていると感じます。
ありがとうございます。嬉しいです! それはカンテレさんのドラマで育てていただいているからですよ。作品ごとに学ぶことがあって、演じたキャラクターたちが発するセリフが、僕のアイデンティティーになっている。いい役をいただき素敵な脚本にめぐり合えていることにも感謝していますし、いまでもセリフを覚えているほどです。“運がいい”という言葉だけでは表せないほど本当にいろんなご縁があって、毎回共演者の方たちにも恵まれて、充実した時間を過ごしているから、ここまでやってこれている。
(C)カンテレ今作の草彅さんの演技で特にハッとされられたのは、樹のなにげない普通の表情。喜怒哀楽はあるけれど、激しく表に出すキャラクターではない中で、見えない心の機微が込められているのを感じてすごいなと思いました。
今回の世界観、僕はすごく好きです。前回の「戦争シリーズ」のような激しい作品も好きですが、いまの心境的にはこういうドラマをぜひ皆さんに見ていただきたいなという思いがあって。いわば今の自分の“推しドラマ”ですね。優しい中にも、ミステリーの伏線があり、ちょっとドキドキする。甘いだけじゃなくて、ピリッとコショウが効いたブラックペッパーみたいで、そこがいい。
僕は監督として草彅さんの新しい一面を引き出すというよりも、本当に俳優として信頼していますし、努力を惜しまず挑戦し続けてくれる。それが草彅さん自身の変化であり、進化につながっていると思います。今後もご一緒できるよう、こちらも努力していきたいですね。
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