講談社、ハリウッド拠点の制作会社「Kodansha Studios」を設立へ 「ノマドランド」クロエ・ジャオが最高クリエイティブ責任者に
2025年11月4日 21:00

講談社は11月4日、ハリウッドを拠点とする新会社「Kodansha Studios」の設立を発表した。ハリウッドに制作会社を設立することは、同社初の試み。最高クリエイティブ責任者(Chief Creative Officer)には、第93回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演女優賞を受賞した「ノマドランド」のクロエ・ジャオ監督が就任した。
同日、都内で会見が行われ、同社の代表取締役社長・野間省伸氏、ジャオ監督、数多くの映画やテレビドラマを手掛け、本スタジオのCOOを務めるプロデューサーのニコラス・ゴンダ氏が登壇した。

会見冒頭では、野間氏が「このたび講談社は、ロサンゼルスを拠点にKodansha Studiosという、ハリウッドを中心に映画を制作する会社を設立いたしました。そのパートナーとして、こちらにいらっしゃいますアカデミー賞受賞監督のクロエ・ジャオさんとニコラス・ゴンダさんらによる制作会社Book of Shadowsと提携しました。今後、さまざまな日本のIPをハリウッド映画などの形で広めていきたいと思っていますのでご期待ください」と挨拶した。
続いて、Kodansha Studios 最高クリエイティブ責任者に就任することとなったジャオ監督が「本当にワクワクしていて、今日はとても嬉しい機会です。わたしは子どもの頃から深く日本の漫画やアニメを愛してきました。ですから本当にこのような機会をいただけて光栄です」、ゴンダ氏も「特に講談社さんのように、100年以上の長い伝統、そして素晴らしいクリエイティビティを育み、保ってきた会社とご一緒させていただけることを心から光栄に思っております」と語った。

改めてKodansha Studios設立への思いを尋ねられた野間氏は「講談社は、長年にわたってさまざまな物語を創出してきました。近年は海外へのIP提供にも力を入れているところでございます。いま世界的に日本のエンターテインメント・コンテンツの人気があるという状況もありますし、日本としてもコンテンツの輸出を世界に広めていこうといった追い風もございます。そういった中で、わたくしどももハリウッドをはじめ、海外からの実写映画化のお話をいただいてはいたのですが、やはりさまざまな課題が多い、というのが実情でございます」と日本のIPをめぐる現状を説明。
その上で今後どうするべきか、という答えとして、Kodansha Studiosが設立される運びとなったことを明かした。
「これまでは日本のIP、原作の権利を海外の企業にお渡しして、そこから企画・制作・プロモーションなどをすべてお任せするような形でしたが、今回、我々が制作会社を設立することによって、そういったところに深く関与していって。日本のIPを、そして日本のクリエイターを世界に広めていく。またこういった海外の素晴らしいクリエイターの方々とコラボレーションをして、ある種、化学反応を起こして新しいコンテンツを作っていく。そういったことを目指したいと考えております」(野間氏)

野間氏とジャオ監督が米・ロサンゼルスで会ったのは、2年半ほど前のこと。漫画、アニメという共通項で、両者はすぐに意気投合したという。
「もちろん彼女が、アカデミー賞で監督賞を受賞した著名な監督であることは存じ上げておりましたし、日本の漫画が大好きだということも存じ上げておりましたが、実際にお話をしてみますと、本当に漫画が大好きで。中国にいた子ども時代からずっと漫画を読んでいたこともあり、漫画に対する愛情、深い造詣を持っている人だなと感じました」(野間氏)。
その場でジャオ監督から「アニメもぜひつくりたい」という話が飛び出したといい、野間氏も「実写とアニメ、両方とも一緒に作ればいい」と提案したそう。「彼女からは『それはimpossible(不可能)なこと』だと言われたのですが、講談社は英語で“Inspire Impossible Stories”というスローガンを掲げていることもあって、“We're here to make impossible stories”と言ったら、彼女が大層喜んでくれて。そこから仲良くなっていきました」と振り返る。野間氏は、ゴンダ氏とも食事をしたり、ゲームをしたりと親しく付き合いをするに至り、「非常に良い信頼関係を築けているのではないかと思っております」と付け加えた。
ジャオ監督は、Kodansha Studiosに望むものについて、3つのポイントを掲げた。
「まず1つ目は東と西の懸け橋となること。異文化間の理解を促進するということ。わたし自身、子ども時代からそれを成し遂げたいという思いがありました。そして2つ目は、Kodansha Studiosに“庭”として機能してほしいということです。映画作家として、ストーリーテラーとして、わたしがいつも望むものは安心できる場所です。作家、作品、アイデアがそこから発展して、そして外からの変革や情勢に左右されることなく守られる場所として機能させてほしい。つまり、日本の作家と海外のクリエイターたちが共に植物を強く育て上げ、そこから巣立つことを助けられるような役割を担うことを期待しています。最後に3つ目は、野間社長と知り合った時に、彼の勇敢さに非常に魅せられたのです。不可能なことに果敢に挑んでいく。ですからわたしは彼に“Mr. Impossible”というあだ名をつけたのです。その精神をKodansha Studiosに取り入れて。果敢に取り組んでいきたいという思いがあります」(ジャオ監督)

ジャオ監督は、日本のコンテンツについて聞かれ、「まさにこのわたしの血と肉をつくったと言えます。漫画だけではありません。小説、アニメ、同人誌といったすべてに影響を受けました」と特別な思いを明かす。
「わたしは孤独な子どもでした。漫画の中のキャラクターが友達だったのです。それはわたしだけではなく、世界の多くの人に共通する思いだと思います。例えば漫画のシリーズ、作品がずっと続いていく中で、わたしもその漫画のキャラクターとともに成長していったのです。わたし自身、今はストーリーテラーとして仕事をしていますが、もともとは漫画家を目指していたのです。ただ絵を描くのがあまりうまくなかったということで断念しました」(ジャオ監督)
日本IPのハリウッド実写化に挑戦していくことについて、ジャオ監督は「きっとハリウッドも深く影響を受けるのではないかと感じています。ある意味ハリウッドはこれまで違う文化のIPを勝手に解釈して扱ってきたわけです。でもこれからは、作家なり、元々のアイデアに耳を傾け、コラボレーションをして、作家を尊重して、より作家性に近いものをつくるというのは、ハリウッドにとっても健全な形ではないかと感じるからです」と期待を寄せる。
その言葉を受けて、野間氏は「今、クロエが話していた通り、ハリウッドの実写作品に関しては、クロエやニックたちがやっているBook of Shadowsの皆さんという非常に力強いパートナーを得られました。その中で我々としては、これまであまり知られていなかった日本の数多くのIPを、より多く世界に広めていくということをまず目指したいと思っています。また日本の漫画家、作家といったクリエイターと、海外の監督や俳優に限らず、さまざまなクリエイターが出会うこと、コラボレーションすることによって、新しいコンテンツ、新しい表現方法が生まれてくることを期待しています」と今後の展望を語った。
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