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妻夫木聡の親友・宮島真一さんが沖縄で映画館を経営する理由【インタビュー】

2025年9月22日 12:00

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宮島真一さん(左)と妻夫木聡
宮島真一さん(左)と妻夫木聡

沖縄県沖縄市コザに、多くの映画人たちから愛される映画館「シアタードーナツ・オキナワ」がある。代表を務めるのは、コザで生まれ育った宮島真一さん。地元FM局で帯番組のパーソナリティを務めたり、コザを紹介するテレビ番組のメインMCを担ってきた宮島さんが同館を開業させてから10年が経つ。

柔和な眼差しを注ぐ宮島さんは同館オープン直前の2015年3月、準備に追われながらもアポなしで訪れた筆者に「人と人がつながり、地域を元気にする“公民館”のような空間を作りたかった」と真摯に語ってくれた。あれから10年、コロナ禍も含めて幾度となく苦しい時期を乗り越えてきた宮島さんは「伝える」ことの大切さを再認識している。

常連客のオバァとゆんたく(おしゃべり)する宮島さん。彼女は週に2~3度来てはドーナツを3個食べる90歳。ドーナツは彼女にとって、”ぬちぐすい”(命の薬)だという
常連客のオバァとゆんたく(おしゃべり)する宮島さん。彼女は週に2~3度来てはドーナツを3個食べる90歳。ドーナツは彼女にとって、”ぬちぐすい”(命の薬)だという

宮島さんを「親友」と公言するのは、俳優・妻夫木聡。06年に公開された主演作「涙そうそう」はコザで撮影されたが、その際に妻夫木の方言指導を担当したのが宮島さんだった。以来20年、家族ぐるみの付き合いが今も続く。そんな親友・妻夫木が、戦後のアメリカ統治下の沖縄を舞台にした大作映画「宝島」(大友啓史監督)に主演し、再び「第二の故郷」沖縄へ帰ってきた。宮島さんは感無量の面持ちで話す。

「彼とは時々会いますし、電話で飲みながら話すこともありますが、互いの“成長確認”をする間柄になれたことが嬉しいですね。子どもができて親になり、より一層『生きること』と『仕事をすること』でどのような轍(わだち)を残していけるのか……と考えているタイミングで巡り合ったのが『宝島』だったのではないでしょうか。

彼はいつだって温かいし、熱くて涙もろい。家族ぐるみのお付き合いをしているなかで、わたしの子どもたちにも会うたび、愛情を注いでくれていると分かるコミュニケーションをしっかり取ってくれるんです」

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そして、あるエピソードを披露してくれた。

「ある日、僕が車を運転していたとき、交差点でちょっと危ないことがあったんです。何も起こらずに無事だったんですが、妻夫木さんが『今のでもし真にぃ(宮島さん)が死んだら、俺が責任もって家族を養わないといけないな』と口にしたんです。『勝手に人を殺すな』とも思ったんですが(笑)、そういうことをふっと言えちゃうやつなんです。なかなか言えないことですよね?

この20年間で彼は色々な映画に出演し、たくさん評価されたし、悔しい思いもいっぱいしてきたと思う。映画って、ある人生を見せてくれる、そして学ばせてくれるもの。彼が映画に携わることで人間的に成長していって、その間に僕自身は映画館を建てて、映画の魅力を届ける側になりました。作る側と届ける側で、どのような未来を創造していこうか……。その目線は、多分同じところを見ていると思うので、長い付き合いにつながっているんじゃないかな。

お互いに、映画が好きなんですよね。これに尽きるのですが、ただ好きなだけじゃなくて、どう届けるのか、どう伝えるのかという、“伝える難しさ”はこの先もずっと考えていかなければならない。そこに互いに向き合っているからこそ、友情にもつながっているんでしょうね」

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そんな宮島さんが、「伝える」ことの意義について改めて考えるきっかけになった出来事を話してくれた。同館では職場体験学習として中学生を受け入れているそうで、映画を観賞したうえで劇中に登場する職業や沖縄の歴史を知ってもらう学びの場を提供している。その中で、「「『宝島』にも出て来る宮森小学校への墜落事故について、同じ地域に住む中学生と話をしたところ『知らなかった』と言われた」ことに強い衝撃を受けたという。

「なぜそういう出来事があったのかというと、シアタードーナツで上映していた『勝ちゃん 沖縄の戦後』というドキュメンタリー映画がきっかけでした。主人公・山城義勝さん(1944年生まれ)は沖縄戦直前に生まれ、戦果アギヤーとコザ暴動を体験し、米兵相手にタクシー運転手として荒稼ぎし、沖縄ヤクザの経験もある81歳の現役の漁師さん。要は、『宝島』と重なる出来事をリアルに体験しているんです。

この映画を観た中学生から、上記の発言がありました。学校教育や平和学習で触れているはずなのに、フックになっていないんでしょうね。『どう伝えるか』は大人や保護者としての責任であり、その役割を担う映画という存在は本当に大きいと思います。だから、『宝島』と一緒に『勝ちゃん』も観ろ!と勧めたいですね」

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「伝える」という行為を、「宝島」では妻夫木や大友啓史監督は、丁寧に誠実に実践してきた。それでも誤解を招いてしまうことはあり、「伝える」ことがいかに難しいかを2人は体感し、悩んだ時期もあったはずだ。そんな時、宮島さんは妻夫木にこう語りかけたという。

「私は彼の想いを知っているつもりですし、なぐさめるつもりはありませんでした。思わず、妻夫木聡に『ようこそ宝島へ』と言っちゃったんです。グスク(妻夫木の役名)という存在があなたの中で生き続けているように、映画の撮影が終わっても『伝える』という作業が終わらないということを体感したと思います。彼も『そうだよね』と言っていました」

話題が「宝島」に及んだことで、宮島さんに作品の感想を聞いてみた。なかでも、見どころのひとつといえるクライマックスのコザ騒動のシーンについて。

「想像することしかできませんが、あの熱量を知らない人にとっては『まさかこんなことがあっただなんて…』と驚くでしょうし、本当にすごいシーンになっていました。僕の父親もコザ騒動の現場へ行っていたんですよ。父は当時、テレビ局勤務で技術スタッフだったのですが、現場が自宅近くで『騒々しい』『空が赤く染まっている』と駆けつけたら、あんなことになっていたと。

父はカメラ好きだったので現場で撮影をしていたら、ミリタリーポリスに『撮影するんじゃない!』と銃口を突きつけられて、カメラを取り上げられたそうなんです。当時の話も聞いていますし(報道の)写真も見ていますが、『宝島』のコザ騒動のシーンは思っていた以上に長尺ですごいと思いました。さらっと描写されると思っていましたから。作り話ではなく、こんなことが本当にあったんだということを知ってもらううえで良かったと思います」

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また、コザで暮らす宮島さんにしか語れない思いもあるはずだ。同作の原作者・真藤順丈氏がどのような思いでこの史実に向き合い、取材を重ねて小説としても、エンタテインメントとしても濃密な作品に仕上げていったかも知っているのだろう。だからこそ、「コザで暮らし、その歴史や沖縄の爪痕をどう伝えるかという点でもどかしさや難しさを感じてきました。でもこうして小説や映画として作ってくれる存在が日本人の中にいることが、すごく嬉しいし、どう思われようが誇りに思います」と言葉に力を込めた。

「映画も小説も腐らない文化財ですから、それをどう伝えていくかが我々の責任であり仕事だと思っています」と語る宮島さんだが、実は「シアタードーナツ・オキナワ」が存続の危機にあると明かしてくれた。

「道路拡張工事が入るみたいで、来年には立ち退きになるかもしれないんです。次のシアタードーナツ作りのためにも妻夫木くんにはずっと売れ続けて欲しいですね。良かったら、金貸してくれないかな。『宝くじ買え』って言われそうだけど(笑)」

(取材・文/大塚史貴)

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