「ブニュエルの最高傑作並みの作風だ」とピカソを仰天させた、ネリー・カプラン特集上映開催
2025年9月10日 12:00

映画作家ネリー・カプランの傑作4作品を一挙公開する特集上映「ネリーに気をつけろ!ネリー・カプラン レトロスペクティヴ」が、12月26日から全国順次開催される。ポスタービジュアルと特報映像(https://youtu.be/O7dqTUBRFtU)、各作品のメイン画像が公開された。
1931年、アルゼンチンに生を受けたネリー・カプランは、フィルムアーキビストの国際会議のアルゼンチン代表としてフランスを訪れる。まもなく彼女は、フランス映画の名匠アベル・ガンスの知己を得、その映画制作に協力。やがてガンスと袂を分かったカプランは、シュルレアリスム小説家、批評家、ドキュメンタリー作家などのキャリアを経て、長編劇映画作家の道を歩みはじめる。デビュー作「海賊のフィアンセ」(69)はベネチア国際映画祭でプレミア上映され、パブロ・ピカソをして「芸術の域まで高められた尊大さ……ルイス・ブニュエルの最高傑作並みの作風だ」と言わしめた。

以降、「パパ・プティ・バトー」(71)、「シビルの部屋」(76、日本公開は77年)、「シャルルとリュシー」(79)を発表。1983年にはドキュメンタリー「アベル・ガンスと彼のナポレオン」を監督し、翌年のカンヌ映画祭・ある視点部門で上映。1991年に長編劇映画第5作であり、最後の監督作「愛の喜びは」が公開。1994年、ボストン美術館、シカゴ美術館、ワシントン・ナショナル・ギャラリーが、カプランのレトロスペクティヴを開催。2019年、ニューヨークのQuad Cinemaがカプランのレトロスペクティヴを開催し、「海賊のフィアンセ」レストア版ほか7作品が上映され、その同時代性が再発見された。また、ペンネーム「ベレン(Belen)」でのシュルレアリスム小説の執筆など、著作も多数ある。2020年に死去した。
デビュー作以来、カプランは保守的な価値観に「抵抗」「反抗」する女性たちを描きつづけたが、当時、彼女が監督したフィルムが正当な評価を受けていたとは言いがたい。原題や内容とは無縁の「情欲的」な公開題が付され、商業的には「ポルノ映画」として消費されることもしばしばだったが、カプランが描く家父長制社会の権力勾配を大胆に転覆せしめる奔放さは、現代的な文脈で再評価されることだろう。

上映作品ラインナップは、「ママと娼婦」などで知られるベルナデット・ラフォンが主演し、カプランが「現代の魔女の物語」と語る長編監督デビュー作「海賊のフィアンセ」、ギャング一味に誘拐された令嬢クッキーが千変万化の“顔芸”で躍動する「パパ・プティ・バトー」、エリック・ロメールに先駆けて“アレ”を画面に捉えたスラップスティック・ロードムービー「シャルルとリュシー」、とある南国の孤島を舞台に、裕福な三世代の女たちが文学者の男を手玉に取って翻弄する「愛の喜びは」の4作品だ。
12月26日から、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほかにて全国順次公開。
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