ハンセン病療養所、患者の強制退去を巡るドキュメント 日・台・仏合作「大風之島」台北映画賞で最高賞、日本人が最優秀編集賞
2025年7月13日 12:00

台湾・日本・フランスの国際共同製作の長編ドキュメンタリー「大風之島」(邦題未定)が、第27回台北映画賞にて、グランプリ(百万元大賞)、最優秀ドキュメンタリー映画賞、最優秀編集賞(秦岳志)の3部門を受賞、最優秀編集賞を日本人が受賞するのは史上初の快挙となった。
「大風之島」は台湾にあるハンセン病療養所・楽生療養院の取り壊しと、患者の強制退去を巡る20年の闘いを描いた長編ドキュメンタリー映画。本作は企画段階ではカンヌ国際映画祭の一環として開催されたカンヌ・フィルム・マーケットのドキュメンタリー部門、カンヌ・ドックス2023で大賞を受賞し、台湾・日本・フランスの国際共同製作となった。監督の許雅婷は本作が長編ドキュメンタリー映画デビュー作となる。
1988年に創立された「中時晚報電影獎」を前身とする台北映画祭「台北電影奨」(Taipei Film Awards)は台湾の映画製作者を対象とした台湾映画を代表する映画賞で、「最優秀長編映画賞」「最優秀ドキュメンタリー映画賞」「最優秀短編映画賞」「最優秀アニメーション映画賞」の4部門にノミネートされた作品は本映画賞の最高賞となるグランプリ(百万元大賞)の対象となる。今年は香港の映画監督、張之亮(ジェイコブ・チャン)が審査員長を務めた。

本作のグランプリ(百万元大賞)授賞については「楽生療養院の入所者たちが運命に抗い続けてきた長い闘いの過程を、静かでありながら力強い姿勢で記録している。歴史的なトラウマを見つめる集団が、時代の非情さに自らの力で立ち向かう姿を描いた。単なるドキュメンタリーではなく、台湾の土地に刻まれた記憶そのものである」と評された。
許監督は「20年前、初めて樂生療養院に足を踏み入れ、入所者の皆さんから話を聞きました。彼らがいかに隔離の壁を乗り越え、世間と向き合い、差別や偏見から解放されていったのか──その物語は、世界中の人々に知ってもらう価値のあるものです。私にこの声を届ける機会をくださった皆さんに感謝します」と受賞の喜びを語った。

日本人としては初となる、最優秀編集賞を受賞した秦岳志(代表編集作:佐藤真監督「エドワード・サイード OUT OF PLACE」(2005)、小林茂監督「風の波紋」(2015)、小森はるか監督「息の跡」(2017)、原一男監督「水俣曼荼羅」(2021)、戸田ひかる監督「マイ・ラブ 日本編」(2021)は「台湾語も中国語も分からない私がこの作品に参加できたのは、監督の許雅婷、編集助手のPennyをはじめとする編集チーム全員のおかげです」と感謝の言葉を述べた。「大風之島」は2026年に日本公開予定。
とても長い道のりでした。私の隣には、ベテランから若手のプロフェッショナルたちだけでなく、数千人のハンセン病患者が共にいてくれました。そして、世界中にいる何万人ものハンセン病患者も共に歩んでくれました。審査員の皆さん、私たちに初めの一歩となる資金を与えてくださって、本当にありがとうございます。
台湾の公民運動の中でも最も象徴的な、草の根から生まれた楽生療養院の抗争。その二十年にわたる闘いと、世代を越えて継承されてきた記憶が、二時間の映画として結実しました。日本統治時代に建てられたハンセン病療養院には、今なお歴史のしがらみと深い感情が刻まれており、その存在自体が私たちに語りかけてきます。本作を支えてくださったすべての人と出来事に、心より感謝申し上げます。また、本作が台湾・日本・フランスの共同製作という形で完成できたことは、国境を越えた連帯の証でもあり、大きな意義を感じています。
まずは何より、この賞を、この映画の出演者のみなさんと分かち合いたいと思います。とてもチャーミングで人間くささに溢れる彼らに、ぜひこの映画で出会ってください。そして台湾語も中国語も分からない私がこの作品に参加できたのは、監督の許雅婷、編集助手のPennyをはじめとする編集チーム全員のおかげです。この賞を編集チーム全員で共有したいと思います。それから、これまで長年に渡って、インディペンデント映画の編集というとても不安定な仕事をずっと理解し応援してきてくれた妻のかおりさんにも改めて感謝の気持ちを伝えたいです。
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