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虐待を受けていた少女は、なぜマリリン・モンローになるための努力ができたのか――最新ドキュメンタリー映画から考える【二村ヒトシコラム】

2025年6月19日 21:00

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画像1(C)2023-FRENCH CONNECTION FILMS

作家でAV監督の二村ヒトシさんが、恋愛、セックスを描く映画を読み解くコラムです。今回は、ハリウッドの永遠不滅のスターの人生をとらえたドキュメンタリー「マリリン・モンロー 私の愛しかた」。女優を夢見ていた少女時代から、スターとなっても典型的なセクシーブロンドのイメージから抜けだせずにいた苦悩、スキャンダラスな私生活、そして謎多き死――複雑なマリリンの人生を二村さんが考えます。

※今回のコラムは本作のネタバレとなる記述があります。

本名ノーマ・ジーンという一人の少女が、「どうやって」マリリン・モンローになったのか(なれたのか)についても描かれてはいます。ですが、この映画の主題はノーマが「なぜ」マリリン・モンローになるための努力ができたのか(また、マリリン・モンローになれるような演技の能力や性的な魅力が「なぜ」そなわったのか)を、考えることだと僕は解釈しました。

ドキュメンタリー映画なので、もちろん、ここで描かれたことが真実なのかどうかはわからなくて、いちおう事実と思われる断片を材料として恣意的に構成され、監督の主観が綴られるわけです。

画像2(C)2023-FRENCH CONNECTION FILMS

冒頭で「ノーマ・ジーンは生まれてすぐに、よその家に預けられて育った。その家で幼児のころから皿洗いや床磨きをさせられ、つまり虐待されて育った」という説がまず語られ、そのマリリン・モンロー伝説の一つというか俗説を広めたらしいアメリカの有名な雑誌の表紙が大写しになり、すると突然その預けられた家の実子(いまではお婆さん)が登場して「そんなことは全然ありませんでしたよ。誰がそんなこと言いふらしてるんですか」と言います。

そこからあとは、まあまあ伝説に忠実に、マリリン・モンロー(1926年生、1962年逝)だけじゃなく他の様々な有名芸能人もそうであったとよく言われる、画面には映ってないところで問題行動をいっぱいしてたとか、アルコール依存症や薬物依存はざらだったとか、親がちょっと変わってる人だったとか、性的に魅力的な芸能人が子どものころ性的虐待を受けていたとか、大人になって有名になってからも虐待や搾取をされがちだったとか、恋愛や結婚でトラブルを起こしがちだとか、現代の芸能スキャンダルが大好きな我々にとっては既視感ありまくる(ということは、つまり「ありふれた事実」である)できごとが、かのマリリン・モンローに起きていたことが語られます。

▼関係者の尊厳を考えない「わかりやすい」演出には疑問

超有名人は大変です。死んだあとまでいろいろ言われることが大変なのかどうか僕はまだ生きているのでよくわかりませんし、僕だって知りたいことは知りたいですが、ただ、死んでしまった超有名人にも、死んでしまった無名の人にも、尊厳はある。

たとえばですね、ノーマ・ジーンの実の祖母はノーマが生まれたことを最初は喜んだ。しかし自分の娘が産んだノーマの、父親である男には他に家庭があって、そいつがノーマを認知しなかったことを知った祖母は赤ちゃんのノーマを(男をではなく、ノーマを)殺そうとしたんだそうです。その後、祖母は精神病院に入院させられ、そのまま亡くなります。というエピソードが語られるとき、この映画ではホラー映画じみたBGMがかかるんです。

画像3(C)2023-FRENCH CONNECTION FILMS

まあね、かけたくなる気持ちはわからんでもないですよ。でも、やっぱりそういう「わかりやすい」演出は、関係者全員の尊厳のことを考えてないんじゃないのかなと僕は思います。事実だけをもっと淡々と、ただ置いていってほしかった。感想というものは映画を作る側じゃなく、観ている側がいだくものなんじゃないのかな。あんまり感想を先取りされたくない。

しかしそれはまあ演出上の瑕瑾(かきん)であって、この映画を観て僕がマリリン・モンローについて初めて知って「へー」と思って感心したり感動したこと、いだいた感想も、いくつもあります。

▼この映画で初めて知った、マリリンの近くにいた女性の存在

ノーマ・ジーンはマリリン・モンローになれて、たくさん映画に出るようになってスターになってからも、ずっと精神は不安定だった(それはそうでしょうよ)。そんな彼女のかたわらにはある時期ずっと、個人的な女性の演技指導者がぴったり寄り添っていたんだそうです。その女性はレズビアンであり、マリリンとプライベートで寝てもいた。そういう女性が撮影現場に常にいたら、当時のハリウッドの監督は男性ばっかりですから、いや男とか女とか同性愛とか関係なく、なんにせよ監督はやりにくかったでしょうね。

画像4(C)2023-FRENCH CONNECTION FILMS

一方でマリリンは、たくさんの男性たち(そのへんのあんちゃんから、映画業界の権力者たち、大リーグの一流選手、著名な作家、最終的には司法長官まで)とも恋愛や結婚や不倫や離婚をくりかえします。チャップリンの息子とも恋愛をしました。 僕がすごいなと思ったのは、そのコネを利用してマリリン・モンローは喜劇王チャーリー・チャップリン本人のところに「大衆から嫌われないキャラクターとは?」の心得(こころえ)を学びに行ったというエピソードです。

▼終生「愛されたい女」だったマリリン・モンロー

マリリン・モンローは努力の人でした。そして成功し、栄光をつかみ、あっという間に死んでしまいました。死因は薬物のオーバードーズによる事故ですが、自殺説も、殺されたという説もあります。この映画ではやくざによる謀殺説が支持されてます。

彼女は終生「愛されたい女」でした。さまざまな男たちから、一部の女たちから、そして世界中から愛されました。権力者たちは彼女を、彼らなりに愛しながら支配しようとして、彼女を殴ったり搾取したりしました。

画像5(C)2023-FRENCH CONNECTION FILMS

彼女のほうから「愛そうとする」努力は、どうにも上手くいきませんでした。ですが彼女のパワーの前では「愛されたがるよりも、愛することのほうが良い」という紋切り型のきれいごとは、かすんでしまいますよ。もしも彼女が幸せではなかったのだとしてもです。

マリリン・モンローの成功と栄光と悪評、そしてそれを築いた努力と幸運(だったのか悲運だったのか)は、彼女の才能によるものだとは言いたくないなと僕はこの映画を観て思いました。僕はむしろ、彼女が成功したのは彼女の「症状」だったと言いたくなりました。

ですが、彼女が特別おかしな人だったと言いたいわけでもないのです。彼女だけではなく、あらゆる人の人生のいろいろ、仕事や恋愛のいろいろは「その人の症状」なのだろうと僕は思うので。まじめさや、努力ができてしまうというのも症状です。

画像6(C)2023-FRENCH CONNECTION FILMS

過剰な魅力というものも症状のひとつだというのは、発達心理学の専門家がしばしば言うことです。この映画にも二人の女性の心理学者が登場し、一人はノーマ・ジーンが少女のころ、身近な大人の男性から性的虐待を受けていた事実を指摘します。そのことは、マリリンが出演した映画を観る現代の我々が忘れてはならないことでしょう。同意なき性行為は絶対にダメです。子どもはセックスに同意することは、できません。

そして、この映画の最後を締めくくってくれるのはもう一人の女性心理学者です。彼女は社会も分析し、解説します。あの「道徳」や「正しさ」が行きすぎていて性的な欲望が閉塞していた時代に、マリリン・モンローという女神が出現してくれたおかげで、人々は「エッチそうな美しい女性は、見る人を元気にさせる」と思い出せたのだということを。

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