(C)2024 STUDIOCANAL FILMS LTD. – KINOSHITA GROUP CO., LTD. All Rights Reserved.日本語吹き替え版には、前作「パディントン2」から7年ぶり、3作品にわたりパディントンの声を担当してきた俳優の松坂桃李が続投。「この時を待っていました。あの、モフモフでマーマレード好き、青いダッフルコートと赤い帽子がよく似合う、あのパディントンに会えることを誰よりも楽しみにしていました」と、声を弾ませる。
また、俳優の吉田羊がシリーズに初参加し、パディントンたちがペルーで出会う、“老グマホーム”の院長・クラリッサを演じている。以前から「パディントン」の大ファンだったそうで、「快諾のお返事をするのに時間はかかりませんでした」と大喜び。そんなふたりに、アフレコの舞台裏から長年愛される「パディントン」の魅力、パディントンと同じくらい気持ちを前向きにする方法を聞いた。(取材・文/内田涼、撮影/間庭裕基)
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松坂桃李「パート1の頃の鮮度を保つことを意識しました」

松坂:はい。1番最初の「
パディントン」から数えると9年の時が流れていて。当時、演出の方とも話し合って、
パディントンの声は少し高めに設定したんですが、今回はそれが自分にとって枷(かせ)になる部分もあったんです。やはり、年齢的に高いキーが出にくくなるんですよね。ちょっと気を抜くと、地声に近くなってしまうこともあったので、
パディントンの紳士らしさを大切に、パート1の頃の鮮度を保つことを意識しました。

――いまや、松坂さんにとって、
パディントンは“相棒”ともいえる存在なのかなと思いますが、シリーズ3作品を通して、
パディントンの変化や成長をどのように見ていますか?
松坂:「
パディントン」「
パディントン2」の彼は、どちらかといえば受動的で、思わぬ出会いや環境の変化に“巻き込まれる”ことが多かったですよね。ロンドンにやってきて親切なブラウン家に出会ったり、陰謀に巻き込まれて刑務所に入れられたり。その都度
パディントンは、人々と真摯に向き合うことで、絆を結んでいった。
今回は、自分にとって1番大切な存在であるルーシーおばさんが行方不明になったと知って、自ら能動的に動くんです。ブラウン家のみんなを故郷のペルーに連れ出し、「僕の地元だから、任せてください!」って自信満々で。でも、実は間違いだらけで、そこがまた彼のかわいいところなんですけど、ある種の“男らしさ”みたいなものも垣間見えて、それが過去の2作品とは大きく違う点だと思います。
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吉田羊「目的のためなら手段を選ばず、全力。自分に似ている部分も」

――吉田さんが演じるクラリッサは、明るく優しい人物ですが、どこか怪しい面もあるキャラクターですね。
吉田:そうですね。「何か裏があるな」と思わせる人物なので、その怪しさをどうにじませるか意識し、アフレコに臨みました。朗らかで、ずっとニコニコしている。けれど、それが逆に怖いというか、その笑顔の奥にある彼女の企みを見せたり隠したりしながら演じました。(クラリッサ役の)
オリビア・コールマンさんの演技は、心のなかにいろんな感情が渦巻いていて、一挙手一投足から想像力をかき立てられました。先の読めないスリリングさがありますよね。
――とても人間らしいキャラクターだなと思います。
吉田:目的のためなら手段を選ばず、全力であるという点は、頼もしいし、自分に似ている部分も感じるので、そこは共感できる部分ではありますね。
(C)2024 STUDIOCANAL FILMS LTD. – KINOSHITA GROUP CO., LTD. All Rights Reserved.――吉田さんが歌唱する「Let’s Prepare for Paddington」も印象的です。過去には「
アナと雪の女王2」でイドゥナ役として、歌唱を披露されていましたが、今回はまた一味も二味も雰囲気が違いますよね。
吉田:ミュージカルさながら、セリフとセリフの合間に挟まれる楽曲なので、楽曲単体というよりは、セリフの延長線にあるものだと意識しました。お芝居するように、歌うような、そんな感覚です。そこは「
アナと雪の女王2」とは大きく違う点ですね。
●何かうまくいかない……気持ちを前向きにする方法は?


――原作誕生から60余年、製作された3本の映画は全て大成功をおさめる「
パディントン」の魅力は、どこにあると思いますか?
松坂:英国紳士な気持ちと、人に対する真摯な気持ち。その純粋な心というものが、すごく魅力的だなと思っています。彼の生きている姿を見ていると、こちらの心も浄化されるというか。映画を見終わると、優しい気持ちになるんですよね。それが魅力だなと思います。
吉田:温かい心の持ち主である
パディントンの寛容さが、隣人を理解し、異文化を許容するという大切なメッセージに結びついていると思いますね。私たちは違うもの同士ですから、だからこそ、お互いを受け入れ合って、許し合って、一緒に生きていこうって。それに今回は、血縁だけじゃない家族の在り方、家族だからこそ乗り越えられる力も描かれていて、それも魅力だと思います。


――それに、
パディントンはどんな逆境にあっても、とても前向きですよね。おふたりは壁にぶつかったとき、どんな風に気持ちを前向きに軌道修正していますか?
松坂:何かうまくいかないなと感じるときには、目先のゴールではなく、長い目で、もう少し先にある未来を想像するようにしています。そうすると、悩みやストレス、不安や恐怖心というものが、自然と消えていくんです。いまは満足できない状況でも「マイナスってわけじゃないしな」と、冷静に捉えることができますし。

吉田:私がネガティブ思考になるのは、人と自分を比較するときなんですよね。いまって、そういう違いがとても可視化されるじゃないですか。そんなときは、「あなた最高だよ、素敵だよ」と、自分で自分を褒めてあげるようにしているんです。そこに根拠はなくていいと思うんですよ。この世はだいたい勘違いで成り立っているので(笑)、常に自分は自分の味方でいてあげようと思っています。
「パディントン 消えた黄金郷の秘密」は、5月9日から全国公開。
【あらすじ】
(C)2024 STUDIOCANAL FILMS LTD. – KINOSHITA GROUP CO., LTD. All Rights Reserved.ロンドンに暮らすパディントンのもとに、故郷から一通の手紙が届く。育ての親・ルーシーおばさんの元気がないというのだ。パディントンはブラウン一家とペルーへ行くが、おばさんは失踪しており、里帰りは一転、彼女を探す冒険へと変わる。だが、都会暮らしで野生の勘を失ったパディントンは大ピンチに遭遇。果たしてパディントンは無事におばさんと再会できるのか――!? そして、そこには、ブラウン一家との家族の絆が試されるパディントンの秘密が待っていた。