ジブリ配給「しわ」、ルイス・ブニュエルの伝記、パキスタン初の手描きアニメなど手掛ける 第3回新潟国際アニメーション映画祭審査員長マヌエル・クリストバルがトーク
2025年3月20日 08:00

新潟市で開催中の第3回新潟国際アニメーション映画祭で「審査員トーク」が3月19日新潟日報メディアシップで行われ、映画祭審査員長マヌエル・クリストバルが自身のキャリアを語った。
映画プロデューサー、セビリア・ヨーロッパ映画祭ディレクター。AMPAS(アカデミー賞主催団体)およびスペイン映画アカデミー会員。ゴヤ賞を5回、アヌシー国際アニメーション映画祭の審査員賞を2回受賞。WIA(女性アニメーション協会)メンターでもあるクリストバル氏は、スタジオジブリが唯一配給したスペイン映画「しわ」など、これまでに11本の映画をプロデュースしている。

グラフィックノベルの制作など、初期からの自身キャリアを振り返り、プロデューサーとして作品を世に出すためには「物語が何より大事」だという信念があるというクリストバル。これまでで1番うれしかった褒め言葉は、通常アニメーションを見ない人からの「アニメーションだということを忘れてしまった」という感想だったそう。「そういう時こそ、成功した実感が湧きます」とナラティブに重きを置いている。

スタジオジブリが配給した「しわ」は、自ら高畑勲監督にアポイントを取り、日本語の字幕を付けて作品を売り込んだ。「最終的にジブリが配給権を買ってくれ、私のキャリアの中の大きな誇りになっています。美しい手紙も書いてくださいました」と振り返り、原作となったグラフィックノベルについて紹介する。

「私はアニメーションを作っているというよりも、映画作品を作っていて、それをアニメーションという素晴らしい手段を使って完成させると捉えます。実験的なもの、アートハウス、ファミリー層向けと、アニメーションでは実写よりも新鮮で、多岐にわたる表現ができると考えています」と、表現手段の一つとしてのアニメーションに惹かれている。

そして、作品に合ったディレクターを選ぶことの重要性、また、日本同様スペインでも原作の評価が高いものは、資金集めが容易であると話す。そして、自身の印象深い仕事の一つとして、ルイス・ブニュエルについてのアニメーション映画「Bunuel in the Labyrinth of the Turtles」を紹介する。フランスで「黄金時代」が公開できなくなり、制作資金を失い、もし宝くじが当たったらポルトガルの近くのスペインの貧困地域のドキュメンタリーを作りたいと望み、本当に宝くじが当たり、当選金を基にドキュメンタリー映画を制作するという時代に焦点を当てた物語だ。グラフィックノベルが原作で、サルバドール・シモ(Salvador Simo)に監督を依頼した。

プロデューサー、監督、脚本家を軸としてチームを作り、「良い脚本家は、アニメーション専門の脚本でなくとも活躍できる」「若手とベテランのミックスでチームを構成することが重要」「面白いプロジェクトがあれば、素晴らしい方たちが自然に集まってくる」と映画製作でのチーム作りの重要性を強調した。

次に、パキスタン史上初の手描き長編アニメーションで、日本では「ひろしまアニメーションシーズン2024」で上映された「ガラス職人」を紹介する。監督のウスマン・リアズについて「ものすごくこだわりが強い方。女性、男性関係なく、良い監督はこだわりが強いです。彼は物心ついた頃から、ずっと絵を描いており、いろんなアニメを見ていたそうです。特に、ジブリ映画に恋をしたようです」と話し、リアズは監督のみならずアニメーターとしても才能があり、音楽家としても活躍。21歳の時にTEDカンファレンスに選ばれ、世界中を旅したという多才な人物だ。

下積みを経ることなく、自身で長編アニメーション映画を作りたいと、スタジオを立ち上げ、プロとして仕事ができる人材集めも一から行った。文化的な壁もあり、多くの苦労があったそうだが、そのスタッフの平均年齢は25歳くらい、半数は女性だという。アニメーション産業が確立されていない国の、経験のない監督による前代未聞のプロジェクトということで、クリストバル自身もリスクをとって、本プロジェクトに参加。クラウドファンディングも使い、世界からの協賛を得て完成させ、昨年アヌシー国際アニメーション映画祭でプレミア上映されたと報告した。

そのほか、ディレクターを務めるセビリア・ヨーロッパ映画祭の特色も紹介。また、スペイン語圏であるラテンアメリカでの映画製作についてなど、主にプロフェッショナルな参加者から多くの質問が寄せられていた。
第3回新潟国際アニメーション映画祭は3月20日まで開催、チケットは好評発売中。最新情報は随時公式サイト(https://niaff.net)で告知している。
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