第3回新潟国際アニメーション映画祭 ディレクター陣が語る今年の見どころ、前回までの振り返りと新たな取り組み
2025年3月9日 10:00

3月15日から、長編アニメ映画のコンペティション部門を持つアジア最大の祭典「第3回新潟国際アニメーション映画祭」が新潟市内で開催される。
2023年開催の第1回は、コンペティション部門の審査員長を押井守監督が務め、村上春樹小説を原作とした「めくらやなぎと眠る女」(ピエール・フォルデス監督)がグランプリを受賞。第2回ではアイルランドのスタジオ、カートゥーン・サルーンのノラ・トゥーミー氏を審査員長に迎え、高畑勲監督の長編全作品上映、「機動戦士ガンダム」シリーズの富野由悠季監督の来場と、新潟から世界へアニメーション文化を発信する映画祭として国内外からの注目を集めている。
世界のアニメーションのトレンドを先取りした作品が集まり、世界から多くの映画人も参加し、初回を大きく上回る延べ2万4000人が参加と、大きな成長を遂げた本映画祭、フェスティバル・ディレクターの井上伸一郎氏、プログラム・ディレクターを務める数土直志氏に、前回までの振り返りも含め、今回の新たな取り組み、作品ラインナップの特徴や見どころを聞いた。

第3回となる今年は「コンペティション部門、レトロスペクティブ部門に加え、新潟出身クリエイターの特集上映やストップモーションアニメの特集、CGアニメの歴史検証的な特集など、多岐に渡って充実した上映作品を揃え、ゲストのトークセッションも増やしました」と主な見どころを紹介する井上氏。
一方で、第1回からの課題としては「行政からの支援がほとんど得られなかった」という状況を明かし、前回の第2回を振り返り「第1回より新潟県外からのゲストが増えました、さらに増やしていきたい」と意気込む。

国内外のアニメファンや製作者の交流の場としての機能を強化すべく、今回初の取り組みとして、上映会場の一つでもある新潟日報メディアシップの20階展望フロアにある「そらの広場」に映画祭公認の交流拠点「NIIGATA SKY BAR」を開設する。国内外のアニメ関係者やジャーナリスト、アニメファンが自由に集い、リラックスしながらお互いに情報交換できる場所となる。「この第3回では1、2回目と比べても、かなり多くのゲスト登壇者が参加してくださる予定で、それにともなって観客も増加が望まれます」と展望を語る。

プログラム・ディレクターを務める数土氏は「第3回の特徴として、監督の来日が多いのがうれしい驚きです。コンペティション選出作品12作品のうち10作品で監督が新潟を訪れます。作り手である監督が来たいと思える映画祭になったのでしょう」と分析する。
今年のコンペティション部門は、第1回、第2回を大きく上回る28の国・地域から69作品の応募があり、すでに日本で公開され話題を集めた「化け猫あんずちゃん」「ルックバック」のほか、14カ国(共同製作含む)から12作品が選出された。幅広い国と地域、そして表現、技法の作品の応募があったと選考を振り返る。

数土:「コンペティションの応募は第1回に比べると3倍にもなります。映画祭が認められてきたなと感じています。実際、選考にあたっては、選べる本数の制限もあり、泣く泣く断念した作品も多いです。コンペティション作品では北米・東西ヨーロッパ、アジア、ラテンアメリカと多様です。『オリビアと雲』という作品はドミニカ共和国からですし、コンペティション以外でもヨルダンの『サリーム』という作品があります。
応募作品はCGが多く、昨今注目されているAIを使ったものもありましたが、結果的にはCGだけでなく、手描き、コマ撮り、切り絵、ロトスコープなども多く、こちらも多様になりました。コマ撮り作品には特に秀作が多く、こうした時代だからこそ、ぬくもりを感じる作品が作られて、観る人もそれに惹かれるのかなと思います」

今年は、レトロスペクティブとして、世界的にも高い評価を受ける今敏監督の作品を特集する。
数土:「2010年の没後14年が経ちますが、日本を代表する映画監督して世界での今敏の評価は高まる一方です。日本を代表するアニメーション監督として第1回より常に意識してきました。むしろやっと実現したとの気持ちです。若くして亡くなられたこともあり長編映画4本、テレビシリーズ1タイトルと寡作な監督ですが、今回はスタッフ参加した作品も積極的に紹介しています。さらに今さんと共に作品を作ってきたアニメーター、美術、脚本、プロデューサーをゲストに4つのトークをおこないます。時間もたっぷりと取っていますし、興味深いお話をうかがえると思います」

毎年好評のオールナイト企画は「日本のアニメCGの転換点」と題し、アニメーション映像の魅力を際立たせるCG技術に着目した作品を上映する。日米が協力し最先端のスタッフと技術を注ぎ込んだ超大作「FINAL FANTASY」の上映について数土氏は、「日本の映画祭でCGが個別のテーマで取り上げられることが少ないと感じていました。アニメCGもすでに長い歴史があり、その変化を追いたいと、日本のアニメCGを変えた、歴史の転換点にあった重要作品を並べて紹介したいというアイディアを考えました。そうした点で『FINAL FANTASY』は、21世紀初頭、日本だけでなく世界、アニメーションだけでなくゲーム映像、様々な領域で大きなインパクトを与えて、その後の流れに影響した作品だと思います。その映像を今一度振り返ろうと思ったのです」と企画意図を説明する。

また、今回は「ガンダム」シリーズとともに歩み、日本を代表するアニメ雑誌となった「月刊ニュータイプ」の元副編集長で、KADOKAWA上級顧問エグゼクティブ・フェローを務めた井上氏による、「月刊ニュータイプ」40周年トークも開催予定だ。「ニュータイプの40年の歴史の中で、誌面でとりあげた劇場アニメ映画について、それぞれのトピックを深く語りたい」と井上氏。こちらは編集者の視点からの裏話にも期待できそうだ。

多くの著名なマンガ家、アニメ・クリエーターを輩出している新潟の地で国際アニメーション映画祭を開催することに大きな意義がある、と主催陣は考えている。
「2回の開催を通し、普段会えない海外のアニメ関係者とお会いでき、新潟の街のみなさんが温かくアニメ関係者を迎えてくださいました」(井上)、「アニメーション映画の多様性と豊かさを、新潟で広く示すことができたことがよかったです。特に世界の独立系の長編アニメーションを紹介するというコンセプトが、多くの人からよいアイディアと言われたのがうれしいです。新潟という土地がそれを気持ちよく受け入れてくれたこともありがたい気持ちでいっぱいです」(数土)と、開催地へ感謝の意を表し、第3回の成功と今後さらなる映画祭の発展を誓った。
第3回新潟国際アニメーション映画祭、チケットは好評発売中。最新情報は随時公式サイト(https://niaff.net)で告知する。
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