第97回アカデミー賞は「エミリア・ペレス」がキャンセルされ「ANORA アノーラ」が棚ぼたの5冠。AIの予想は当たった?【映画.com編集長コラム】
2025年3月3日 17:00

2025年3月3日(日本時間)、第97回アカデミー賞授賞式が行われました。今年のテレビ生中継は、WOWOWからNHK-BSにバトンタッチ。午前8時からおよそ5時間にわたって放映されました。
今年のオスカーレースは、過去に例を見ない、非常に今どきな展開が最後に待っていました。それは、大本命の「エミリア・ペレス」が、主演俳優のSNSでの炎上によってレースの先頭から転げ落ち、二番手候補だった「ANORA アノーラ」が棚ぼた式に5冠を手にするという結果になったことです。
ノミネート上位作品の、ノミネート数と実際の受賞数をリストアップしてみましょう。


オスカーのノミネート発表は1月23日(現地時間)で、「エミリア・ペレス」の主演俳優でトランスジェンダー女優のカルラ・ソフィア・ガスコンのSNSが炎上したのは、その翌週1月28日あたりの出来事です。2024年5月のカンヌ映画祭から賞レースのトップ集団につけ、2025年1月5日のゴールデングローブ賞でも作品賞(コメディ/ミュージカル部門)を受賞し、オスカーに向かって先頭を快走しながら、最後の1カ月で、つまり第4コーナーを回ってゴール目前まできて騎手が落馬したような印象です。
こんなことってあるんですね。主演俳優が炎上したことにより、作品そのものがキャンセルされてしまった事例として、とても興味深いです。助演女優賞(ゾーイ・サルダナ)と、主題歌賞の2部門でオスカーを獲得できたのは同作品にとって不幸中の幸いですが、この2部門は、主演俳優からの精神的な距離が比較的遠いからという投票者の忖度があったからでしょう。

いずれにせよ、若干の後味の悪さを伴う結末であったことは間違いありません。一方で、この機に乗じて棚ぼた的に5部門を受賞した「ANORA アノーラ」は、単なるラッキーというわけでは決してなくて、ゴールデングローブ賞でもきっちり5部門でノミネートを受けていたので、対抗馬あるいはNo.2としてのポジションをしっかり確保していたからこその栄冠だと思います。
ところで、授賞式が始まる直前に、AIにこの授賞式の結果を予想してもらいました。
「2025年のアカデミー賞では、どの作品/俳優が受賞すると思いますか?」
当初は『ブルータリスト』のエイドリアン・ブロディが有力視されていましたが、最近の予想では『名もなき者』でボブ・ディランを演じたティモシー・シャラメが受賞する可能性が高まっています。しかし、エイドリアン・ブロディの演技も依然として高く評価されています。
ラトビアのアニメーション作品『Flow』が最有力とされています。この作品は独自の感性と技術で高い評価を受けています。
以上です。ほんと驚きますよね。主要部門、ほぼ的中させていますよ。まあ、それほど今年の結果は予想通りだったということかも。
Photo by Gilbert Flores/Penske Media via Getty Imagesちなみに、Chat GPTのほかにもいくつか質問してみましたが、Gemini、Claude3.7は、2024年の結果を示しつつ、今年のオスカーの予想はナシ。DeepSeekは「デューン 砂の惑星PART2」が本命で、「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」が対抗というちょっと残念なアンサー。年度がまたがっちゃった。チャイナ製のAIは、オスカーレースには興味がないのかも知れません。いずれにせよ、ハリウッド作品についてのリサーチは、ChatGPT一択だということが分かりました。
執筆者紹介
駒井尚文 (こまいなおふみ)
1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。
Twitter:@komainaofumi
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