映画とは芸術かビジネスか? 北村有起哉、内田英治監督オリジナル新作「逆火」で映画監督を夢見る助監督役
2025年2月27日 08:00
「ミッドナイトスワン」で第44回日本アカデミー賞最優秀作品賞に輝いた内田監督の最新作は、現代社会の抱える問題や矛盾を、映画の製作現場という舞台を通して人間の表と裏をあぶり出していくヒューマンサスペンス。主演の北村が内田監督作に出演するのは、「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」「誰よりもつよく抱きしめて」に続き3度目となる。
「映画とは芸術か、ビジネスか?」。貧困をテーマにした作品など、社会派といわれる映画は多く存在する。そういった作品は、大きな映画祭で絶賛される。だが、その映画を作っている人々は、本当に貧困問題に寄り添っているのだろうか? 内田監督は、映画の製作現場を舞台にした今作を通じ、きれいごとを語りながらも成功するために魂を売り、真実に向き合うことをやめてしまった大人たちに道徳観を問い質す。
映画監督を夢見る助監督の野島の次の仕事は、貧困のヤングケアラーでありながらも成功した ARISA の自伝小説の映画化であった。ところが周辺で話を聞くうちに、小説で書かれている美談とは程遠い “ある疑惑”が浮かび上がる。この女は悲劇のヒロインか、それとも犯罪者なのか? 名声を気にする監督、大ごとにしたくないプロデューサーといった撮影を中断したくない面々が、真実を追求する野島に圧力をかけてくる。やがて疑惑の火は、家族をも巻き込み野島の日常は崩れ始める…。
主演の北村と内田監督のコメント全文は、以下の通り。

それでも明日はやってくるように、それでも明日もどこかで映画の撮影や、演劇やバレエやオペラの稽古があって、テレビではドラマやバラエティや歌番組の収録がある。世界中で紛争が途切れることがないのに。だからこそかもしれないが、それらを楽しみにしてくれる人達がいる。希望を持たせるように、あるいは期待を裏切らないように、がっかりさせないように。そこに携わる作り手の人達はそれぞれが同じ方向を向いて頑張っているつもりだ。同じ目的で同じ方向を向いているはずだと。芸術とか芸能とかの立ち位置は時代とともに移り変わっていく。では、このうねりの速い今の時代ではどうすればいいのか?立ち止まることを恐れていないか?僕は願う。時代に沿った優しい作品や、時代に抗った厳しい作品を両方とも楽しんでくれる人達がこれからも増えてほしい。しみじみとそんなことを感じています。

演技はもちろん大切だが、それ以上に人と人の縁が映画をつなぐ力になる。ずっとそういう思いがあります。今回はその縁を感じた俳優たちと、日常に潜むすれ違いをテーマにした映画を作りたい。小規模で自由な発想のもとで。そう思いついて撮影した作品が今作「逆火」でございます。変化する社会の中で、日常を生きる人々の感情の表裏を描いた作品で、主演は念願の北村有起哉にお願いしました。圧倒的なリアリティと奥深い内面的演技力を持ってらっしゃる俳優で、撮影中もカメラの横でその芝居に釘付けになりました。こういった形の映画を、インディーズスタイルで取り組めたことに感謝でございます。「演技」と「物語の視点」に改めて重きをおいて作りました。機会があればぜひ劇場へ足を運んでください。
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