【ネタバレあり】奇妙で難解な「憐れみの3章」見どころは? 二村ヒトシと映画.com編集部がトーク
2024年10月24日 21:00
TOKYO FMほか全国38のFM局のオーディオコンテンツプラットフォームで、スマートフォンアプリとウェブサイトで楽しめるサービス「AuDee(オーディー)」 と映画.comのコラボ新番組「映画と愛とオトナノハナシ at 半蔵門」。作家でAV監督の二村ヒトシと映画.com編集部エビタニが映画トークを繰り広げる。
今回はヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンがタッグを組み、愛と支配をめぐる3つの物語で構成したアンソロジー「憐れみの3章」を取り上げる。
選択肢を奪われながらも自分の人生を取り戻そうと奮闘する男、海難事故から生還したものの別人のようになってしまった妻に恐怖心を抱く警察官、卓越した教祖になることが定められた特別な人物を必死で探す女が繰り広げる3つの奇想天外な物語を、不穏さを漂わせながらもユーモラスに描き出す。
本作について「難解なので、(ここで)話したかった」という二村。「話の3つが錯綜したり、前後していなくてよかった。パラレルワールド感があった」「登場人物は皆同じで、同じことが気になって神経症になりかけてる人が3夜連続で見た夢のよう」と評し、ランティモス監督の作品を「ギリシア神話のように気持ち悪いし面白いから好き。気持ち悪くなかったことがない」と独特の表現で褒める。
エビタニは「前作の『哀れなるものたち』はわかりやすかったけれど、今回は『ロブスター』『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』などかつての作風に戻った感じ」と今作と同じ脚本家が携わった過去作を挙げながら「(今作は)そこにある世界観が異質。今の普通の世の中とは違うけれど、そこにいる人たちのことは、わかるというか共感できる。それが“嫌な方”の感情の理解というか。そして誰に感情移入するかも重要」と感想を述べた。
権力のある雇い主からの命令という建前があれば非道なことも実行してしまう主人公を描く第1話に「主人公と雇い主の関係には、同性愛や父子関係の雰囲気がある。自分の中のいちばん大事なものを支配されているよう」と二村。墜落事故から生還したパートナーの変化とその愛を試すような夫婦を描く第2話には「妊娠のメタファーだと思った。その後の第3章のエマ・ストーンの役には子どもがいたし」とエビタニ。信仰について描く第3話は「あの共同体を我々と違うとみなしていいのか」と二村が問いを投げかけるなど、特殊な異世界を描いているようでありながら、一般的な現実世界と地続きの物語であると二人の考察は盛り上がる。
そして、「みなさんの感想や解釈を聞きたい。それを監督も楽しみに作っているように感じる」(二村)、「ランティモス版『世にも奇妙な物語』という感じ。誰が一番自分に近いと感じるのかも聞いてみたい」(エビタニ)と、奇妙で難解な本作の魅力にどっぷりと浸かれる本作の鑑賞を薦めた。
トーク全編はAuDee(https://audee.jp/voice/show/55260)で聞くことができる(無料配信中)。次回はトッド・フィリップス監督と主演のホアキン・フェニックスが再タッグを組んだ「ジョーカー フォリ・ア・ドゥ」を取り上げる。