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予備知識ゼロで「劇場版『オーバーロード』聖王国編」を見たら驚いた件【コラム/細野真宏の試写室日記】

2024年9月21日 07:00

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「劇場版『オーバーロード』聖王国編」
「劇場版『オーバーロード』聖王国編」
(C)丸山くがね・ KADOKAWA 刊/劇場版「オーバーロード」聖王国編製作委員会

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。

また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。

更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)


今週末2024年9月20日(金)から「オーバーロード」シリーズ初の完全新作劇場版となる「劇場版『オーバーロード』聖王国編」が公開されました(先週末13日(金)から全国51館のIMAXにて先行公開)。

私は、「オーバーロード」という作品の名前は何となく聞いたことがある程度でした。

それも、知ったのは、作品の中に登場する「アルベド」という女性キャラクターを日常でたびたび見かけたから。つまり、どんな作品なのかも全く知らない状態でした。

画像2(C)丸山くがね・ KADOKAWA 刊/劇場版「オーバーロード」聖王国編製作委員会

果たして、そんな状態で「劇場版『オーバーロード』聖王国編」を見て理解できるのか……心配ではありましたが、何はともあれ見てみました。

正直なところ最初は、「一見さんにはハードルが高いのかな」と思っていました。

ところが、見続けていくと、キャラクターらの魅力や深みが増していき、どんどん引き込まれていく自分を感じるようになっていたのです!

画像3(C)丸山くがね・ KADOKAWA 刊/劇場版「オーバーロード」聖王国編製作委員会
画像4(C)丸山くがね・ KADOKAWA 刊/劇場版「オーバーロード」聖王国編製作委員会

作品の大きなイメージは、どことなく「ソードアート・オンライン」のような印象でしょうか。

作品の成り立ちの共通点としては、どちらも「ライトノベル」が原作となっていて、テレビアニメ化されている点があります。

ソードアート・オンライン」シリーズは割とシリアス路線が続くのに対して、「オーバーロード」はシリアスときどきギャグのような印象。個人的には「オーバーロード」の方が好きなのかもしれません。

そして、「オーバーロード」は以下のように、すでに第4期までテレビアニメ化が進んでいました。

【第1期】2015年7月〜9月
【第2期】2018年1月〜4月
【第3期】2018年7月〜10月
【第4期】2022年7月〜9月

本作で注目すべきは、「テレビアニメの先行公開」や「テレビアニメの総集編」としての上映ではなく、「完全新作劇場版」である点です。

このところ「テレビアニメの先行公開」や「テレビアニメの総集編」が増え続けている印象があったので、映画のための「完全新作劇場版」は歓迎すべき作品です。

とは言え、最近では「完全新作劇場版」だけでなく、「テレビアニメの先行公開」や「テレビアニメの総集編」もヒットするなど市民権を得ている状況があります。

画像5(C)丸山くがね・ KADOKAWA 刊/劇場版「オーバーロード」聖王国編製作委員会

今のアニメーション映画のビジネスモデルはどのようになっているのでしょうか?

まず、アニメーション作品が市民権を得ると、アニメーション作品に対する眼の肥えた視聴者が増えてくるので、制作陣はそれに応えるべく力を入れる構造があります。

そのため、制作費は上がる傾向にあり、新たなビジネスモデルの構築が重要になるのです。

同時に、制作陣が手間暇をかけて作り上げたテレビアニメ作品は、劇場クオリティーになっているものも少なくなく、その結果として「テレビアニメの先行公開」や「テレビアニメの総集編」という新たなビジネスモデルが生まれつつあるのです。

そして、本作のような135分に及ぶ新作の大作映画は制作費だけで4億円から5億円規模でコストがかかります。

画像6(C)丸山くがね・ KADOKAWA 刊/劇場版「オーバーロード」聖王国編製作委員会

これは、リクープするには、かなり高いハードルでしたが、ここに来て「日本のアニメーションの強さ」が新たなビジネスモデルを生み出してきています。

それは、「配信」ビジネスなのです。

もちろん「配信」はかつてもありましたが、今や日本のアニメーション作品は世界規模でパワーを持っています。

そのため、製作段階において、世界規模で「配信権」の先売りができるようになってきていて、劇場公開前にすでにリクープができるように変わってきているのです!

その結果、おそらく本作も劇場公開、放送、商品化などでの収益が、そのまま利益となってくるような新たなフェーズに入りつつあります。

このような構造が定着すれば、本作のように力の入った本作的な映画作品が生まれやすくなり、ファンや映画業界などに喜ばしい状況になるわけです。

画像7(C)丸山くがね・ KADOKAWA 刊/劇場版「オーバーロード」聖王国編製作委員会

本作は、予備知識ゼロで見ても面白かったことに驚きましたが、「あれ、ここで終わるのか」という終わり方にも少し驚きました。

もちろん1本の映画としては十分にまとまっていたので問題はないのですが、まだまだ続きがあるような感じだったのです。

そこで「続編もある?」と漠然と思っていましたが、本作「聖王国編」は、「テレビアニメ版の第4期の7話と8話の間に当たるエピソード」ということなので、必ずしも映画として続編があるわけではなさそうです。

画像8(C)丸山くがね・ KADOKAWA 刊/劇場版「オーバーロード」聖王国編製作委員会

いずれにしても本作を機にテレビアニメ版の需要も上がることになるでしょうし、映画から入る人も増え、「オーバーロード」という作品の認知度はこれから上がっていくと思われます。

実は、2017年に「オーバーロード」もテレビアニメ第1期の「劇場版総集編」を前編、後編として、映画館で公開しています。

ただ、その時点では2017年2月「【前編】劇場版総集編 オーバーロード 不死者の王」は興行収入3900万円、3月「【後編】劇場版総集編 オーバーロード 漆黒の英雄」は興行収入3200万円で終わっています。

果たして、新たなビジネスモデルが進む中、本作の興行収入がどこまで伸びるのか大いに注目したいと思います!

執筆者紹介

細野真宏 (ほその・まさひろ)

X(Twitter)

経済のニュースをわかりやすく解説した「経済のニュースがよくわかる本『日本経済編』」(小学館)が経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」(日販調べ)を記録。

首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」(扶桑社新書) はAmazon.co.jpの年間ベストセラーランキング新書部門1位を獲得。映画と興行収入の関係を解説した「『ONE PIECE』と『相棒』でわかる!細野真宏の世界一わかりやすい投資講座」(文春新書)など累計800万部突破。エンタメ業界に造詣も深く「年間300本以上の試写を見る」を10年以上続けている。

発売以来15年連続で完売を記録している『家計ノート2025』(小学館)がバージョンアップし遂に発売! 2025年版では「全世代の年金額を初公開し、老後資金問題」を徹底解説!

Twitter:@masahi_hosono



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