「パリでアメリを観たことがありますか?」 オリンピック開幕で「アメリ」23年ぶり再上映 新作は「モンテ・クリスト伯」が話題【パリ発コラム】
2024年7月28日 08:00
いよいよオリンピック開幕で、良くも悪くもふだんとはまったく異なる顔を見せているパリの街(しばらく前から地上の交通は通行止めだらけで麻痺し、パリジャンは文句たらたら)。客商売は書入れ時とばかりに、夏返上でお店を開けるところが多い。
さらにかつてのポスターを応用した新バージョンには、わざわざ英語で「パリでアメリを観たことがありますか?」というキャッチフレーズが入っている。バカンスでパリから逃げ出すフランス人よりも観光客に的を絞ってアピールしようという狙いだろうか。
そもそも本作がフランスで大ヒットした後、国内ではバックラッシュ的に批判の声が起こった。おもな理由は、本作の描くレトロなパリと白人社会、絵葉書的な映像が現在のリアルな社会を反映していないこと、すなわち反動的で、「昔は良かった」的な右翼思想であるというもの。もっとも、この極端な解釈にジャン=ピエール・ジュネ監督自身、いたく驚き、傷ついたようで、「本作でリアルなパリを描いたつもりはないし、自分はそもそもリアリスティックな映画を作ることに興味がない。絵葉書的な映像はただ、自分の好みのスタイルだからだ」と語っている。ちなみに白人社会という意見も、たとえばモロッコ人俳優のジャメル・ドゥブーズが印象的な役柄で登場していることを思い出せば、的外れと言えるだろう。ちなみに批判派は左翼系のマスコミが多いのだが、彼らはふだん、ブルジョワばかりが登場する作家主義系映画を褒め称える傾向にあるのだから、たんに出る釘を叩いていると思われても仕方がないかもしれない。
ともあれ、「古き良きパリの情緒」や「クレーム・ブリュレ」に惹かれる国外の観客に、本作がアピールするのは納得できる。制作から23年を経た今日、再リリースがどんな反響を得るか見守りたい。
新作では、現在ボックスオフィスを独走しているマチュー・ドゥラポルトとアレクサンドル・ドゥ・ラ・パテリエール監督コンビによる、「Le Comte de Monte-Cristo(モンテ・クリスト伯)」が話題だ。公開3週で350万人を越す動員を集め、ロングランヒット中。これまで何度も映画化されているアレクサンドル・デュマの有名な原作を、ピエール・ニネ主演で映画化した本作は、製作費43万ユーロ(約73億円)と、フランスのコスチューム映画としてはかなりのバジェットである。ちなみにリュック・ベッソンの「ジャンヌ・ダルク」(1999)が59万ユーロ、最近映画化された「三銃士:ダルタニャン」(2023)と「三銃士:ミレディー」(2023)がそれぞれ36万ユーロだった。
2カ月半の撮影がもたらすダイナミックな映像と豪華なセット、ニネが見せるカリスマ的な魅力、彼を囲むフランス映画界の若手実力派を総動員した魅力的な俳優陣(アナイス・ドゥムースティエ、バスティヤン・ブイヨン、アナマリア・バルトロメイ、バシリ・シュナイダー、ジュリアン・ドゥ・サン=ジャン、さらにコメディ・フランセーズのロラン・ラフィットとイタリアのピエルフランチェスコ・ファビノが脇を固める)により、古典文学を現代的な魅力を持つエンターテインメントとして蘇らせたのが、若手観客層も取り込みこの数字に結びついたと思われる。
ニネは本作の成功により、フランス映画界を負って立つ顔となった。今日のフランス映画を代表する一作として、こちらも海外の観光客にとって興味深いのでは? (佐藤久理子)
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文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
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