【考察】「スター・ウォーズ アコライト」に影響を与える日本映画とは? 人気SFシリーズと黒澤明作品の関係性に迫る
2024年6月29日 15:00
人気SF映画シリーズの新たなオリジナルドラマシリーズ「スター・ウォーズ アコライト」が、ディズニープラスで配信中だ。「スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス」の約100年前を舞台に、ジェダイ黄金期に忍び寄る“闇”の脅威を描く本作は、世界同時配信されるや、初日だけで480万回、配信開始5日間で1100万回の視聴回数を記録。2024年にディズニープラスで配信されたシリーズ作品の初回エピソードとして、最高成績を収めた。
平和であるはずの時代に、突如発生したジェダイ殺害事件を発端にストーリーが動き出すという、これまでの「スター・ウォーズ」になかったサスペンス要素も高く評価されている本作。監督を務めたレスリー・ヘッドランドが、影響を受けた作品として挙げるのが、黒澤明監督の名作「羅生門」だ。ある事件を異なる複数の証言から描いた映画史に残る傑作は、これまでも数多くの作品に、その表現技法が取り入られている。
ジェダイは善なのか、悪なのか。「スター・ウォーズ アコライト」もまた、それぞれ立場が違うキャラクターたちの視点によって、ジェダイの見え方が異なる描き方がなされている。
「私たちはサムライ映画や、武侠映画に強く影響を受けましたが、特に『羅生門』のように、ひとつの物語が別の視点で描かれる映画に影響を受けました。本作がほかの『スター・ウォーズ』シリーズと違うのは、そのような特別な方法でストーリーが語られているということです。主人公のメイを追うジェダイの視点も、追われるメイの視点も十分に理解できるようになっています」(ヘッドランド監督)
「スター・ウォーズ」の生みの親であるジョージ・ルーカスもまた、黒澤作品に強く影響を受けている。例えば、主人公であるルーク・スカイウォーカーの人物像や、彼がヨーダの教えの下で修行する姿などは、黒澤監督のデビュー作である「姿三四郎」からのエッセンスが見てとれるほか、歴史の“目撃者”でもある人気ドロイドコンビ、C-3POとR2-D2が、「隠し砦の三悪人」の太平と又七をモデルにしていることも、よく知られている。
そして、銀河を巻き込む光と闇の戦いの“原点”に迫る「スター・ウォーズ アコライト」は、「羅生門」に影響を受けた多角的な語り口で、ジェダイが守る平和の真偽や、これまで悪とされてきたキャラクターたちの本質について、問題提起し、視聴者の心に訴えかけるドラマ性が追求されている。
「一見、不道徳でモラルがないとか、悪い人だと思われるようなキャラクターでも、実は、弱さや人間らしさがあるということを見てほしいんです。悪役と言われる人のほとんどが、悪役になろうとしてなったのではなく、多くの苦しみと戦っていて、脅威や劣等感を感じたりして、それが彼らの行動に繋がったんだと思うんです」(ヘッドランド監督)
最愛の妻や子どもたちを思うがあまり、ダークサイドに堕ちてしまったアナキン・スカイウォーカーの物語が映画で描かれたように、「スター・ウォーズ」は悪役キャラクターの内面も描いてきた。ジェダイは本当に正義の守護者”なのか、それとも――。闇のキャラクターたちが抱える弱さや、人間らしさも描き出す「スター・ウォーズ アコライト」の今後の展開に注目だ。
「スター・ウォーズ アコライト」は、ディズニープラスで配信中。
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