「おいハンサム!!」から考える“深夜ドラマの映画化”成功の採算ラインは?【コラム/細野真宏の試写室日記】
2024年6月22日 08:00
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映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)
今週末2024年6月21日(金)から「映画 おいハンサム!!」が公開されました。宣伝でもうたわれているように「まさかの映画化!」と言える作品だと思います。
というのも、いわゆるゴールデンタイムの連ドラではなく、フジテレビ系列の「土ドラ」という「土曜の深夜にやっている連ドラ枠」の作品の映画化だからです。
日本の地上波は、例えばフジテレビ系列で言うと、関西テレビが制作のドラマ枠というのもゴールデンタイムなどに存在するように、東京と大阪の2つの局が大きな勢力を持っています。
そんな中、この深夜の「土ドラ」は東海テレビが制作を担当しているのです。
この枠は2016年からあるようですが、私が認識するようになったのは、2022年に入ってからとなります。
それまでのタイトルを見てみると、何となく知っている作品もありますが、結果的にスルーしていた状況だったと言えます。
ところが、2022年の1月8日~2月26日の間に放送されていた作品については違いました。
ながら見状態ではありましたが、そのドラマは会話のテンポや雰囲気が楽し気で、気づけば、ついつい見入ってしまっていたのです。
それが「おいハンサム!!」だったのです!
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その際に「誰が作っているんだろう?」と興味を持ちました。エンドロールを見ると、監督・脚本を担当しているのが山口雅俊。
その時点で「なるほどな~」と納得しました。
というのも、私が初めて山口雅俊監督を認識したのは、2012年に試写で「闇金ウシジマくん」を見た時でした。
同作は「それほど予算はかかっていなさそうなのに、割とセンスのある作りだな」と思い、資料を見ると、企画・プロデュース、脚本、監督の欄に「山口雅俊」という名前がありました。
その際に「どんな人なんだろう?」と、プロフィールを見てみると、フジテレビで連ドラのプロデューサーを担当し続け、2005年にフジテレビから独立。株式会社ヒントを設立しています。
2022年放送の「おいハンサム!!」については、当初は、たまたまテレビをつけていたら見る程度でしたが、だんだん惹かれていきました。そして、全8話の後半の方では、進んでテレビをつけるようになっていました。
その後も「おいハンサム!!」がきっかけで、割と「土ドラ」を見るようになっていきました。特に、発達障がいを描いた百田夏菜子主演の「僕の大好きな妻!」や、原田泰造主演の「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!」あたりは秀作だと思います。
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このように、東京と大阪のテレビ局だけでなく、地方のテレビ局もドラマ界などに一石を投じているのは心強いことです。
しかも、「おいハンサム!!」は、深夜枠であるにもかかわらず、東京ドラマアウォード2022にて「ミステリと言う勿れ」と共に「作品賞〈連続ドラマ部門〉」で優秀賞を受賞するなどしているのです!
このような流れがあったため、当然のことながら2024年4月6日~5月25日に放送された「おいハンサム!!2」はリアルタイムで見ていました。
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そして今回は「おいハンサム!!2」の情報解禁とともに「映画化」も発表されました。どうやら山口雅俊監督は、2022年放送の「おいハンサム!!」の撮影中に映画化の構想を持っていたようです。
そのため、「おいハンサム!!2」より以前に、映画の脚本執筆から着手。映画版の時系列に合うように「おいハンサム!!2」の物語を整えていったとのことです。
さらに、「おいハンサム!!2」を撮り終えてから、改めて映画の脚本を全面的にブラッシュアップするという念の入れようです。
主演の吉田鋼太郎が「この監督は撮影がくどい!」と文句を言っているのを見かけましたが、セリフも映像もこだわり続けるのが山口雅俊監督の持ち味と言えるのでしょう。
その結果、かなりテンポも雰囲気も良い「絶妙な名作」が生まれたわけです。
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おそらく、この作品のことは「全く知らない」という人が多いでしょう。
ただ、とりあえず騙されたと思って、「軽い気持ち」で見てみてください。きっと、この独特な世界感にハマる人が多いと思います。
「おいハンサム!!」の大きな軸は「恋」と「家族」と「ゴハン」の3つとなっています。この作品の面白さの背景には、キャスティングの上手さもあるでしょう。
特に3姉妹は、長女・伊藤由香は木南晴夏、次女・伊藤里香は佐久間由衣、三女・伊藤美香は武田玲奈。
正直なところ、映画ではそこまで活躍している印象は薄かったのですが、本シリーズで演じるキャラクターは、まさに「当たり役」。それぞれの個性が存分に発揮できていると思います!
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さて、ここからは本作を経済的な意味で考察してみようと思います。
まず、55分(CMなどを抜くと、実質46分)の深夜ドラマの場合は、1話当たりの制作費は2500万円程度が相場になっています。
「映画 おいハンサム!!」においては、連ドラSeason2と連続で作っているので、セットやスタッフもそのまま連続で稼働できるため制作費が抑えられる面があるのです。
そのため「映画 おいハンサム!!」の制作費は1億円程度で、宣伝費などのP&A費が1.5億円程度だと想定されます。つまり製作費は2.5億円程度。
これをベースに試算すると、2次利用を考えずに、興行収入だけで回収できるラインは興行収入6億円超ということになります。
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おそらく本シリーズは、少なくとも連ドラではまだ続くと思いますが、それが今回のように映画もセットで作られるのかどうかは、本作の興行収入にかかっていると言えそうです。
そのため、何とか興行収入5億円には到達してほしいところですが、どうなるのか――大いに注目したいと思います!
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