【インタビュー】小松菜奈×松田龍平、初共演で大きく変化した互いの印象

2024年5月31日 13:00


取材に応じた小松菜奈(右)と松田龍平
取材に応じた小松菜奈(右)と松田龍平

小松菜奈松田龍平が主演した「わたくしどもは。」が、5月31日から新宿シネマカリテほか全国で順次公開となる。かつて佐渡島・金山跡地を舞台に、何かしらの理由で戸籍を奪われ、過酷な労働に従事した“無宿人”という存在があった。その多くが数年で亡くなったというが、同所に眠る“無宿人の墓”から着想を得た本作は、富名哲也監督のオリジナル脚本となる。

清掃員のキイ(大竹しのぶ)に助けられた女(小松)には過去の記憶がなかった。名前を思い出せない彼女はミドリと名付けられ、清掃員として一緒に働き始めることになる。そんな中、ミドリは構内で暮らす男・アオ(松田)と出会う。そして男もまた名前と過去の記憶がなかった。日々の暮らしの中、ミドリと男は互いに惹かれ合っていくが、やがてアオと親密な様子を見せるムラサキ(石橋静河)の存在を知り、心乱されるようになる……。

新潟県の佐渡島でロケが行われた本作は、あの世とこの世との狭間にある幻想的な世界観が印象的な作品だが、この作品に小松菜奈松田龍平はどのようにして挑んだのか。初共演となるふたりが撮影の日々を振り返った。(取材・文/壬生智裕)

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――全編、富名監督による独自の作家性が貫かれていて、見た後にいろいろな意見が出るような映画だと思いました。完成した映画を観てどのような感想を持たれましたか?

松田:確かに物語として分かりやすい映画ではないんですけど、観終わった後になんだか心地が良かったんですよね。後からじわじわ来るというか。撮影には脚本を読んで感じた雰囲気みたいなものだけを持っていって、自分なりのイメージで演じてみたから、映画を観た後はすぐ言葉が出ないような感じで。死後の世界を想像させてくれる余白のようなものがあったから心地よかったのかもしれないです。

小松:観る方に解釈をゆだねる作品だなと思いました。言葉はなく、表情やダンス、肉体などで表現していて。多くを語らず、そっと静かに見せる作品だなと。風の音だったり、鳥のさえずりの音だったりと、佐渡島の自然をちゃんと取り入れていて。目を閉じたくなる時がありました。映画を観ているんだけど、でも音も聞きたいというか。そこに自分もいる感覚というか、自分の魂もそこに行っている感じがして。映画を観ていてすべてが分かるというよりも、それぞれが違う見方があるのって面白いなと思います。

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――独特なセリフ回しも印象的でしたが。

小松;一人称が“わたくし”とかでしたからね。

松田:急にセリフが“わたくし”になってガラッとイメージが変わって、最初は戸惑っていたよね。この感じで合っているのかなって?

小松:龍平さんに聞いてましたよね。

松田:俺も分からないけど、たぶん合ってると思うよって(笑)。

小松:最初の台本はひとりひとりのバックボーンが見えるような構成になっていたんです。それがどんどんブラッシュアップされていって。だんだんと表情で語るとか、肉体で語るとかいろんな表現方法に変わっていって、そこで喋り方も変わっていきました。ただ“わたくしは”というのも、普段は使わない言葉なので。自分に落とし込むのが大変というか、難しかった。でも現世と来世の狭間のお話なので。ある意味、記憶もないから、言葉もリセットされたのかもしれない。わたしたちはその世界を見たことがないから、もしかしたらそういう風に喋っているのかもしれないし。何が正解なのかは分からないのですが、そういう意味では、それがいい違和感につながっていくのかなと思いました。

松田:でも、“わたくしは”ってなんだか響きが良いよね。

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――お芝居の相性はどうでしたか?

松田:つまらないギャグにも笑って答えてくれて。優しかったです、小松さん。

小松:そう思ってたんですね(笑)。龍平さんの間が面白いんですよ。だから思わずツッコみたくなるんです。

――今回、おふたりは初共演だと思いますが、松田さんと共演と聞いた時はどう思いました?

小松:この台本を読んだときに、アオという役の無機質さがピッタリだなと。もうこれは龍平さんしかいないと思うぐらい。ただ、もっと静かな方なのかなって思ったんです。クールなイメージがあって。

松田:(笑)。

小松:でも全然違いましたね。ものすごくフランクだし、(片岡)千之助くんとも一緒に遊びに行っていたりとか。お兄さん的な感じで、優しいなと思っていました。ドンといてくれているので、安心感もありました。

――逆に小松さんとの共演は?

松田:ほんと雰囲気のある方で、佐渡島の自然に溶け込んでましたね。ミドリのイメージにピッタリだと思って。初めは心配だって言ってましたけど“わたくしは”の感じが馴染んでいて、もう“わたくしは”のミドリ以外ありえないよなってぐらいで(笑)。

小松:適当ですね(笑)。

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――現場はどんな感じだったんですか?

小松:和やかでしたよね。

松田:緩やかな現場でした。佐渡島に住んでる方たちに協力してもらって撮影していたんですけど、美味しいご飯屋さんだったり、古民家の雰囲気を活かしたおしゃれなお店があったり。海も山もすぐそばで、良いところでした。

――佐渡島での撮影はいかがでしたか?

小松:独特な感じがありましたね。どこか寂しさが漂っているというか。それを地元の方に言ったら、ちょっとさみしいところがあるのも、日本海だからかもねとおっしゃっていて。歴史的にもいろいろとあった場所ですが、それと同時に大自然の神秘というような場所もたくさんありましたし、ご飯も美味しかった。地元の方もすごく穏やかな方ばかりで、ボーッとできる場所だなと思いました。

松田:普段はまったくジョギングしないんですけど、佐渡島は走り甲斐があるな、と思って。空いてる時間はけっこうジョギングしてみたりしましたね。海沿いを走るのは気持ちがよかったです。潮の匂いを感じながら音楽を聞きながら。まぁ、どっちかと言ったら短距離派なんでマラソンは苦手なんですけどね。

小松:わたしは長距離派ですね(笑)。

松田:そうなんですね。最近また走ってるって言ってましたもんね。

小松:走ってますね。佐渡島では散歩はしていました。いろんなところに自転車に乗って出かけたりしていました。

松田:あと、レンタサイクルがあったから(片岡)千之助と一緒に自転車に乗って山の反対側の海まで行って。ワーッと叫びながら坂を降りたり、けっこう青春な感じもやりました。

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――地元の人たちとの交流はあったんですか?

小松:皆さん、前に出る感じではないんですけど、すごく応援してくださっていました。

松田:富名監督の前の作品が佐渡市で撮った映画なんですけど、それに出ていた女の子のお母さんが、佐渡島の島おこしというか、盛り上げ隊長なんですけど。

小松:その女の子はこの映画でも、(キイと暮らす少女役の)アカという役で出演していますよね。

松田:昔の別荘地を改装して、みんなが楽しめる場所にする計画を立てていたり。佐渡島に新しい風を吹かしていて、行動力がすごいなって。

小松:けっこういろんなプロジェクトをやっているんですよね。

松田:佐渡島はゆっくり出来るし、金山とか、綺麗な入江もあって、良い所なんです。仕事が落ち着いたら今度は家族と遊びに行こうと思っています。

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