【「ジョン・レノン 失われた週末」評論】愛人関係にポール&リンダとの接触やUFO目撃談。ビートルズ後のジョン・レノン、驚きの私生活
2024年5月12日 09:00

何とも複雑な感情を想起させる映画です。「え! ジョン・レノンがこの女子と?」という驚きがまずあって、ほどなく「2人ともラブラブで幸せそうだなあ」という共感が続きます。2人はジョンの本妻であるオノ・ヨーコの目を盗んで密会しているわけではなく、オノ・ヨーコの指令のもとに公然と同居生活をしているのです。
年代としては、1973年から75年あたり。ジョンは33〜35歳でアルバム的には「マインド・ゲームス」「心の壁、愛の橋」「ロックン・ロール」がリリースされた時期です。
ビートルズに関するドキュメンタリー映画はたくさんありますが、ビートルズ解散後の案件はあまり多くありません。しかも音楽中心ではなく、私生活にフォーカスしている点がとてもレア。体裁としては、中国系移民の2世であるメイ・パンの自叙伝のようなスタイルです。彼女の撮った写真、彼女が写っている写真、彼女自身の語りで進行しますが、映画の主題は圧倒的にジョン・レノン。本編で使われている写真や映像は、プライベートなものばかりで珍しい上に、構成やストーリーテリングがとても巧みで、商業的価値も高い一本です。
白眉はやはり「真夜中を突っ走れ(Whatever Get You Thru the Night)」でのエルトン・ジョンとのコラボレーションでしょうか。エルトンのステージにゲストで参加したのが、ジョン・レノン最後のステージとなったことが語られます。また、ポール&リンダ・マッカートニーと、LAで軽くセッションしていたというのも感慨深い。この映画を見る限り、70年代前半のLAは完全にロックンロールのメッカですね。ドラッグのメッカでもあったかな。
デビッド・ボウイも少しだけ登場します。彼には「チャイナ・ガール」というヒット曲がありますが、あれはメイ・パンのことを歌った曲だということで間違いないかなと、この映画を見て思いました(諸説あるでしょうが)。あと、ジョンが「UFOを目撃した」と大真面目に披露するシークエンスもありました。時代ですねえ。
それにしても、「はい、お楽しみはそこまでよ」とばかりにジョンをメイ・パンから引き剥がし、自分との復縁を力技で遂行するオノ・ヨーコの神通力には感服します。まるで妖怪レベルです。ジョンもメイ・パンも、ヨーコの手の平の上でくるくる踊っていただけなのか……。
個人的には、ジュリアン・レノンとメイ・パンの仲睦まじい交流がツボでした。ジュリアンもメイ・パンも、どちらかと言えば、ジョン・レノンの華やかさに隠れた裏側のキャラみたいな扱いでしたからね。この映画で見せる2人の楽しそうな表情には、癒しと救いを覚えます。全編を通じて、驚きとともに切なさも感じる映画ですが、鑑賞後の不思議な爽快感は、この2人の特別な関係が醸し出すオーラでしょう。とにかく、久しぶりにジョン・レノンのアルバムが聞きたくなりますよ。
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