「鬼平犯科帳 血闘」は時代劇に“新たな希望”を灯すことができるのか?【コラム/細野真宏の試写室日記】
2024年5月10日 08:00
®映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)
今週末2024年5月10日(金)から「鬼平犯科帳 血闘」が公開されます。この作品は【池波正太郎生誕100年】を記念し、「世界に時代劇を届ける」といった大きな志のもとで作られた映画です。
1923年に生まれ、1990年に亡くなった池波正太郎。「池波正太郎の時代小説3大シリーズ」として、「鬼平犯科帳」「仕掛人・藤枝梅安」「剣客商売」があります。このうち「鬼平犯科帳」「仕掛人・藤枝梅安」を【池波正太郎生誕100年】を記念して映画化するというプロジェクトが、2021年3月12日に帝国ホテルで発表されました。
この映画化プロジェクトは、2023年2月に第1弾の「仕掛人・藤枝梅安」、続いて2023年4月に「仕掛人・藤枝梅安2」、さらに、2024年5月に「鬼平犯科帳 血闘」を公開していくというもの。つまり「鬼平犯科帳 血闘」が【池波正太郎生誕100年】映画化プロジェクトのトリを飾ることになります。
本作の幹事会社は「日本映画放送」です。この会社は「時代劇専門チャンネル」という、「24時間365日、時代劇を放送する」といった専門性に特化したチャンネルを運営しています。
また、「日本映画放送」は、「時代劇専門チャンネル」だけではなく「日本映画専門チャンネル」も運営している会社です。
ちなみに、「日本映画放送」の株主は、「フジテレビ、ソニー、東宝、関西テレビ、J:COM、スカパーJSAT、フジランド」となっていて、フジテレビが筆頭株主です。
それも関係してか、本作はフジテレビ自体は出資をしていないものの、製作委員会は「日本映画放送、NTTドコモ、REMOW、クオラス、関西テレビ、松竹、BSフジ、アシスト、東海テレビ、文藝春秋」といった感じで、フジテレビと関係の強い会社が多く名を連ねています。
そもそも本プロジェクトは、「日本が誇る時代劇を積極的に世界に発信する」という大きな野心を持ったものでした。
現時点では、世界的規模で成功といった話は聞かない状態ですが、日本においては見通しが良い結果を出しつつあります。
例えば、「日本映画放送」の株主であるJ:COMでは、近年「時代劇コンテンツの配信」を強化してきています。
そもそも時代劇は制作に手間がかかるので、制作費が高額になる。そのため、新作の時代劇の作品はどんどん減少しつつあるのです。
その一方で、これまでに作られた良質な時代劇は少なからずあるため、それらを多く集めて配信に力を入れているのです。
その結果、2024年1月の段階で、前年と比較して60才以上の利用者が74%も増加したのです!
ちなみに、J:COMの配信サービス「J:COM STREAM(見放題)」における「年代別視聴割合」は、全ジャンルの場合では「60代:24%、70代:20%」となっています。(2024年1月時点)
ところが、時代劇の場合では、「60代:32%、70代:48%」と、60才以上が実に8割を占めているのです!
日本は世界的に見て突出した少子高齢化の国ですが、まさに、その人口構成を上手く取り込むことに成功したと言えます。
もともとJ:COMはテレビ放送がメインでしたが、時代に合わせて配信も行なっています。世の中には「シニア層は配信に疎い」といったイメージがありますが、シニア層も興味のある分野については“キチンと配信にも対応している”ことが分かるのです。
そして、本作「鬼平犯科帳 血闘」に合わせて製作されたテレビスペシャル版の「鬼平犯科帳 本所・桜屋敷」が2024年1月に「時代劇専門チャンネル」で放送されると、「チャンネル歴代1位」となる視聴率を叩き出したのです!(※2016年6月以降のJ:COM調査)
本作の大きな見どころの1つとしては、主人公「長谷川平蔵」を松本幸四郎(10代目)が演じていることがあります。
というのも、松本幸四郎(10代目)の祖父である松本白鸚が「鬼平犯科帳」の初代「長谷川平蔵」を演じていて、叔父(おじ)の中村吉右衛門が4代目「長谷川平蔵」を演じていたりと、まさに満を持して、という貫禄があるのです。
しかも、本作では、若かりし頃の主人公「長谷川平蔵」を、松本幸四郎(10代目)の長男である市川染五郎が演じているのも作品の説得力を増す要素となっています。
さて、私が本作「鬼平犯科帳 血闘」並びに「仕掛人・藤枝梅安」と「仕掛人・藤枝梅安2」の3本を見た感想としては、「選び抜かれた作品を映画化している」ということです。
そのため、抜群の安定感があり、見て「ハズレ」とはならないと言えると思います。
正直なところ、私は時代劇に特別の興味があるのか、と問われれば「YES」とは言えない面があります。
とは言え、日本という国を特徴づける、世界に誇れるコンテンツだという認識はあります。
このような時代劇という重要なコンテンツの灯を絶やさないためにも、あらゆる年代が劇場で体感し、新たな希望を生み出す作品となってほしいと願います。
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