ソフィア・コッポラ「プリシラ」音楽へのこだわり 1950~70年代のエッセンスを取り込みフェニックスが担当
2024年4月12日 20:00
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大スター、エルヴィス・プレスリーと恋に落ちた少女プリシラがたどる魅惑と波乱の日々を、プリシラの視点で描いたソフィア・コッポラ監督の最新作「プリシラ」が公開された。
昨年のベネチア国際映画祭にてケイリー・スピーニーが最優秀女優賞を受賞、全米ではA24が配給した本作は、シャネルやヴァレンティノが彩る甘美なシンデレラストーリーのなかに、ソフィア・コッポラがこれまで描き続けてきた人間の孤独や疎外感といったビターなエッセンスを潜ませ、そのファッション性と話題性で多くの女性客を魅了し、「ロスト・イン・トランスレーション」(03)、「マリー・アントワネット」(06)に次ぐ大ヒットとなった。
そして常に高く評価されるソフィア・コッポラ作品のサウンドトラックだが、本作の音楽は、監督の夫トーマス・マーズ率いるポップロックバンド、フェニックスが担当。2010年アルバム「Wolfgang Amadeus Phoenix」をリリース、グラミー賞最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバム賞を受賞するなど世界的に活躍する彼らが、50年代、60年代、70年代のエッセンスを自分たちのサウンドに落としこみ、スタイリッシュな音楽を創作した。なお、本作中にエルヴィス・プレスリー自身が歌う楽曲は使われていない。
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今回、それぞれが好きな楽曲を持ち寄り、作品に合いそうな音をみつけていったというソフィア・コッポラ監督は、「まず話しあったのは、プリシラがはじめてエルヴィスに出会った時にかかっていて、劇中でプリシラのテーマ曲となったフランキー・アヴァロンの『ヴィーナス』のことでした」と説明。「フェニックスはさまざまなアレンジで『ヴィーナス』を演奏し、どれも素晴らしい出来でした」と振り返る。
また本作冒頭で流れるのが、ラモーンズの「ベイビー・アイ・ラヴ・ユー」。これはフィル・スペクターが送り出し、大ヒット曲「ビー・マイ・ベイビー」で知られるザ・ロネッツによる1964年のナンバーをカバーした曲で「当時の曲のように聞こえますが、録音されたのはずっと後。時代の橋渡しをするような、面白いアイデアです」。
そのほか、ブレンダ・リー、リトル・ディッパーズ、ザ・ライチャス・ブラザーズなど時代を反映する曲が並ぶが、一方スペクトラムの「How You Satisfy Me」や、米ボルチモアのエレクトロニック・アーティスト、ダン・ディーコンの「The Crystal Cat」などエレクトロニックなサウンドも採用し「映画では、当時の音楽も最近の音楽も使っています。すべてが相まった結果、少女時代を思わせるようなエネルギーが映画に吹き込まれました」と説明する。
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映画の最後では、ドリー・パートンが切ない傷心を歌う名曲「オールウェイズ・ラヴ・ユー」が流れる。ソフィア・コッポラは「この曲を使いたかった理由のひとつは、映画の終わりは女性の声で締めくりたいと考えていたことです。ドリーの歌の感傷が、プリシラのエルヴィスへの愛を感じながらも別れるという決断を完璧に表現していたということもあります。夢のグレースランドを出て、自分自身の人生を歩む時が来たのです」と明かす。
プリシラとエルヴィスは1973年に離婚するが、手を取りあって離婚の法廷を後にする姿が目撃されており、車で走り去る彼女に向かって、エルヴィスはこの曲を口ずさんだという思い出の曲でもある。プリシラの前向きな別れの選択にともなう感情だけでなく、ソフィア・コッポラの思いも感じ取れる、「オールウェイズ・ラヴ・ユー」の歌詞にもぜひ注目だ。「プリシラ」は全国で公開中。
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