黒沢清監督の心に刻まれた蓮實重彦の“言葉”とは? 「トウキョウソナタ」がアジア・フィルム・アワードで上映
2024年3月18日 16:00
アジア全域版アカデミー賞「第17回アジア・フィルム・アワード」のセレクション上映「トウキョウソナタ」が3月9日、香港のPremiere Elementsで行われ、黒沢清監督がトークイベントに登壇した。
日本人監督としては初となる「アジア・フィルム・アワード」審査委員長を務めた黒沢監督。2008年に公開された「トウキョウソナタ」は、東京のごく普通の家庭の崩壊と再生を描いたホームドラマ。第61回カンヌ映画祭では、ある視点部門審査員賞を受賞し、09年の第3回「アジア・フィルム・アワード」では作品賞と脚本賞を獲得。黒沢監督は当時のことも振り返りつつ、場内の観客に感謝を伝えていた。
トークでは“映画との出合い”について触れる場面も。「昔から映画が大好きで、好きな映画を真似して、趣味として色んな映画を撮りました。これが自分の映画製作のスタートです」と話しつつ、「ただし、大学は映画の専門大学ではありませんでした。たまたま映画の授業が一つありまして、そこで映画を教えていたのが、映画評論家の蓮實重彦さんです。当時、私は蓮實先生のことを全然知らなかったのですが、その時に蓮實先生に教わったことは、私のすべての基礎となり、多大な影響を与えてくれました」と“恩師”への思いを吐露し、心に残っている格言を披露した。
「最も影響を受けたのは『映画というのは、人間が人生をかけて、追求するに値するもの』という言葉です。『映画は、見ることも、人と話すことも、それについて書くことや撮ることもよい。だが、単に暇だから、趣味でやってよいというレベルのものではない。また、職業にするという点も関係がない。とにかく人生をかけて、映画というものは何なのかを追求し続ける。その価値が十分にある』」
また、観客からは役所広司とのコラボレーションについての質問があった。黒沢監督は「同年代の男性キャラクターを登場させることが多いため、役所さんがそのような役柄に自然と馴染み、共演が続いている」と語りつつ、「トウキョウソナタ」オファー時の秘話を明かした。
黒沢監督「役所さんは『トウキョウソナタ』以前、武士や総理大臣、良き父親といった役柄を演じていましたが、私はそれらの役柄には特に興味がなかったんです。しかし、今回は泥棒役だと伝えると、役所さんは大喜びですぐに快諾してくれました」
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