【「フレディ・マーキュリー The Show Must Go On」評論】フレディ・マーキュリーの生涯を立体的に紐解くドキュメンタリー作品
2024年3月2日 23:00

昨年末の第74回紅白歌合戦出場、2月のクイーン+アダム・ランバートの来日ドーム5公演、1981年のライブ映画「QUEEN ROCK MONTREAL」のIMAXでの6日間限定上映と、英ロックバンド、クイーンの話題が事欠かない。そんな中、故フレディ・マーキュリー(91年没)をフォーカスしたドキュメンタリー映画「フレディ・マーキュリー The Show Must Go On」が2月16日に公開された。全国32館規模で始まった上映は、映画を鑑賞した人のSNS等で評判が拡散され上映期間延長、上映館拡大と音楽ドキュメンタリー映画としては異例のヒット作品となっている。果たして何がこの映画を惹き付けているのだろうか?
本作では在りし日のフレディ・マーキュリーのインタビュー映像が随所に挿入されている。MVやライブ映像等で見慣れたフレディの、素の表情を垣間見ることが出来るのだ。特筆すべきは、稀代の名曲「ボヘミアン・ラプソディ」について語るシーン。5つのパートで構成されている交響曲のようなあの楽曲、元々は3つの曲を書くつもりが完成できず、最後はヤケクソでひとつの曲にまとめたというエピソードは知的好奇心を刺激してくれ、クイーン・ファンならずとも興味深い。
さらに同曲のオペラ・パートの歌詞に登場する“Beelzebub(ベルゼベブ)”はサタニズム(悪魔主義)の影響か?という問いに「単に言葉の響きが好きなだけ!」と茶目っ気たっぷりにはぐらかす表情は、ステージで見せる完全主義者のフレディと真逆で、そのギャップが楽しめる。
監督のフィンレイ・ボールドは98年生まれ、本作を完成させた時点で25歳。生前のフレディを体験していない世代だ。それゆえフレディ・マーキュリーを客観的かつ立体的に捉えている。本人やメンバーが語る内側からのコメントに加え、フレディの実妹やデビュー直後から身近で関わってきた4人の関係者が、外側からみたフレディを証言していく。アート・ディレクションやマーケティング・ディレクターとしての側面、発声方法、創作スタイル、プライベートの表情、ライブエイドでみせた圧巻のパフォーマンス、生涯のパートナーだったメアリー・オースティンや、LGBT的指向についてと様々な角度からの証言が集められフレディを浮き彫りにしていく。
特にエイズ罹患から亡くなるまでのくだりは涙なしでは見られない。それぞれのコメント内容に合わせクイーンのアーカイブ映像や写真をテンポ良く繋いでいく監督の編集手腕は良質なDJミックスのよう。上映時間の49分はちょうど音楽アルバム1枚分に相当する。まさにアルバム1枚を聴き終えた充実感を楽しめる作品となっている。
(C)Entertain Me Productions Ltd 2023.

PR
©2025 Disney and its related entities
関連ニュース






映画.com注目特集をチェック

“ベスト主演映画”TOP5を発表!
【出演123本の中から、1位はどの作品?】そして最新作は、生きる力をくれる“集大成的一作”
提供:キノフィルムズ

ワン・バトル・アフター・アナザー
【個人的・下半期で最も観たい映画を実際に観たら…】期待ぶち抜けの異常な面白さでとんでもなかった
提供:ワーナー・ブラザース映画

96%高評価の“前代未聞の心理戦”
【スパイによる究極のスパイ狩り】目を逸らせない超一級サスペンス
提供:パルコ

映画.com編集長が推したい一本
【ただの映画ではない…】むしろ“最前列”で観るべき奇跡体験!この伝説を人生に刻め!
提供:ポニーキャニオン

酸素残量はわずか10分、生存確率0%…
【“地球で最も危険な仕事”の驚がくの実話】SNSで話題、極限状況を描いた超高評価作
提供:キノフィルムズ

めちゃくちゃ笑って、すっげぇ楽しかった超刺激作
【これ良かった】激チャラ大学生が襲いかかってきて、なぜか勝手に死んでいきます(涙)
提供:ライツキューブ

なんだこのかっこいい映画は…!?
「マトリックス」「アバター」など数々の傑作は、このシリーズがなければ生まれなかった――
提供:ディズニー

宝島
【超異例の「宝島」現象】こんなにも早く、心の底から“観てほしい”と感じた映画は初めてかもしれない。
提供:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント