ジェイソン・ブラム流“ホラー映画の作り方”は? 「ゴジラ-1.0」との共通点を明かす

2024年2月9日 08:00


ジェイソン・ブラム
ジェイソン・ブラム

世界的な人気を博すホラーゲームを、ホラー映画の旗手として知られる映画スタジオ、ブラムハウス・プロダクションズが映画化した「ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ」(2月9日公開)。夜間警備員が廃墟レストランで体験する恐怖を描いた今作の製作・脚本には、ゲームの原作者であるスコット・カーソンが参加。北米および各国で10月27日から公開され初登場No.1を獲得した後、全世界での累計興収2億8800万ドルという特大ヒットを飛ばし、ブラムハウス製作作品史上最高記録を樹立した。

本作だけでなく、「パラノーマル・アクティビティ」や「インシディアス」シリーズなどこれまでブラムハウスが製作してきたホラー映画は数多くのヒットを記録してきた。

なぜブラムハウスのホラー映画はそれほどまでに人々を惹きつけるのだろうか。

ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ」の日本公開に合わせ初来日したブラムハウス・プロダクションズの創設者、ジェイソン・ブラムに語ってもらった(取材・文/ISO)。


【「ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ」あらすじ】

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弟が謎の失踪を遂げ、事件の悲しい記憶から立ち直れずにいる青年マイク。妹アビーの親代わりとして生計を立てるため必死に仕事を探す彼は、廃墟となったレストラン「フレディ・ファズベアーズ・ピザ」の夜間警備員として働くことに。「モニターを監視するだけ」という簡単な仕事のはずだったが、妹を連れて深夜勤務に就いたマイクは、かつてそのレストランの人気者だった機械仕掛けのマスコットたちが眼を怪しく光らせながら自ら動き出す姿を目撃。マスコットたちはかわいらしい姿から一転して凶暴化し、マイクや廃墟の侵入者を襲い始める。


●狙ったのは万人受けではなく、ゲームファンを喜ばせること

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――原作ゲームは未プレイなのですが、アニマトロニクスの出来が素晴らしく大変楽しく拝見しました。今回大人気ゲームを映画化するにあたり、ゲームファンとそれ以外の観客を共に満足させるため、どのようにバランスを考慮して製作されたのでしょうか?

通常映画スタジオが人気の本やビデオゲームを映像化する場合、万人受けするように作られます。ですが今回我々はゲームの生みの親であるスコットと組み、ゲームのファンに向けて映画を作るというハリウッドでは珍しい選択をしました。ゲームを知らずに楽しんでくれたというのはとても嬉しい感想ですが、本作はあなたに向けて作った映画ではないのです。

その結果、本作はアメリカ国内だけでなく世界中で公開され、受け入れられました。幸運なことにゲームファンと、ビデオゲームや原作に馴染みのない人たちがクロスオーバーして大変盛り上がりを見せてくれたんです。でも本来それは我々が意図したことではありませんでした。

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――本作は大人が楽しめつつ、子供が人生で初めて観る“ゲートウェイ・ホラー”として適した作品であるように感じました。同様の感想を「M3GAN ミーガン」や「ブラック・フォン」でも抱いたのですが、幅広い世代が楽しめる作品を作ることでホラーのファン層を拡大することを狙っているのでしょうか?

そうですね。「ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ」と「M3GAN ミーガン」は新しい世代を引き入れることを意図しており、我々もまさに“ゲートウェイ・ホラー”と呼んでいます。ただ「ブラック・フォン」はそこには含まれていません。あの作品はR指定ですから。お子様には見せないようにお願いしますよ(笑)。

※編集部注:本国では「ブラック・フォン」はR指定(17歳以上向けの作品)。日本ではPG12指定となっている。

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――ホラー映画はゴア描写を売りにする作品が多いですが、今作や「M3GAN ミーガン」をはじめ、ブラムハウス作品ではあまりそのような印象は受けませんね。

我々も「ハロウィン」や「パージ」などゴア描写のあるホラーは幾つかありますが、我々の作品は決して「グロい」だけではありません。ただ、ホラーを撮ったことがなかったり、ホラーへの理解の薄い監督は「ホラー=グロいもの」と考えている節があります。ですが本来は「ホラー=恐怖を感じさせるもの」なのです。「ハロウィン」や「パージ」はゴア描写より、暴力を介して恐怖を表現しています。

と言いつつ実はブラムハウスでも一度グロさを売りにしたホラーを作ったのですが、上手くいかなかったんですよね。だからそういう映画はもう作らないようにしています。

●ブラムハウスのホラー映画と「ゴジラ-1.0」の共通点とは…

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――本作が「主人公のトラウマの克服」に焦点を置いているように、ブラムハウスのホラーは人間の内面を丁寧に描いていて、共感しやすい作品が多いですよね。

思うに、ホラーが一番上手くいくのは中心にホームドラマがある時なんです。私が去年最も気に入った映画の一つである「ゴジラ-1.0」でも、その中心にあったのは男性と女性、そして子供という3人の物語でした。彼らが作る小さなホームドラマは我々を魅了し、物語に説得力を生み出しました。そこで海から怪獣が出る展開があっても馬鹿げたように感じません。なぜなら観客は小さなホームドラマにより、映画の世界に引き込まれているからなんですよね。

ですから我々が手掛けるすべての作品においても、「ゴジラ-1.0」のような説得力のあるホームドラマが中心となるよう努力しています。

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――ホラー映画は熱狂的ファンがいる一方、全く受け付けない人もいる特殊なジャンルですよね。ブラムさんにとってホラー映画とはどういう存在なのでしょうか?

私がホラー映画を愛しているのは、個人的にも大好きな独立系映画のプロデュースからキャリアをスタートさせたからなんです。通常の独立系映画というのはなかなか人に観てもらえず不満を抱えていたのですが、その中でホラー映画であれば幅広い客層に観てもらえました。私にとってホラー映画は、社会的なメッセージや独創的な物語を伝える手段でもあるのです。

なので我々は制作に入る前に「脚本の中にある怖い要素をすべて抜いた際に、 ちゃんと真っ当な物語が展開されるのか」という検証を行うんです。その答えがイエスであれば制作を進めるというプロセスを取っています。

●低予算・高収益の映画製作の秘訣は監督と脚本選びにアリ?

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――ブラムハウスといえば低予算で高収益を叩き出す理想的なビジネスモデルで知られています。低予算と高収益の両方を満たせるプロジェクトをどのように狙い、立ち上げているのでしょうか。

例えば「バービー」のように高予算の作品でも収益を上げることは可能です。ただ我々にとって高予算の映画というのは、あまり興味を惹かれないので選択肢に入らないんです。ではどのような流れで作品を選ぶかというと、まず始めに監督を探します。その際に新人監督は殆ど選びません。成功と失敗、両方を経験していて、自分の実力を証明したいと考えている、というのが私が監督を選ぶ基準です。そして我々が探し出した監督が脚本を持っていれば、それを読みながら自問します。「怖いか?独創的か?我々は好きか?」と。その3つの問いがすべて「イエス」であればその監督に挑戦し、映画制作に取り掛かります。たとえそれで失敗しても会社が潰れる心配はない、というのも低予算映画の素晴らしいところですね。

――現在注目している、または一緒に仕事をしたい監督はいますか?

ザ・ハント」(2020)や「メア・オブ・イーストタウン」(2021)のクレイグ・ゾベル監督とはまた一緒に仕事がしたいですね。あとは本作を手掛けたエマ・タミ監督とも。まだ仕事をしたことのない監督であれば「TALK TO ME トーク・トゥ・ミー」(2023)のフィリッポウ兄弟。以前少しお話はしたんですが、是非彼らと作品を作りたいです。あとは「ゴジラ-1.0」の山崎監督ですね。来週お会いするので。

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――よっぽど「ゴジラ-1.0」が気に入られたんですね。

噂には聞いていたけど、これほど好きになるとは思ってもいませんでしたね。私が「ゴジラ-1.0」を好きな最大の理由は「普通に考えたらそんなに面白くなるはずがない…のに面白い」というところにあります。ゴジラ映画はこれまで29本作られていて、とっくに内容も知っているじゃないですか。海の中から大きな怪獣が現れて襲ってくる、という分かりきった物語をあれほど素晴らしく撮ったことに感銘を受けたんです。すごく刺激を貰いましたよ。私が作っていれば良かったのですが(笑)。

――では次回はブラムハウス産のゴジラを期待しています。

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