上質音響&35㎜で上映! トム・ヨークの歌声、ポール・トーマス・アンダーソンの新MVに酔いしれる「ザ・スマイル」2ndアルバム試聴イベント
2024年1月27日 14:00
レディオヘッドのトム・ヨーク、ジョニー・グリーンウッド、サンズ・オブ・ケメットのトム・スキナーによるバンド、ザ・スマイル(THE SMILE)の2ndアルバム「Wall Of Eyes」の発売を記念し、ポール・トーマス・アンダーソン監督が手掛けたミュージックビデオを世界各地の映画館で上映するイベント「Wall Of Eyes, On Film」が、1月22日、25日の2日間限定で109シネマズプレミアム新宿で開催された。このほど、映画.com記者がイベントをレポートする。
109シネマズプレミアム新宿といえば、昨年4月のオープン前より故・坂本龍一さんが音響監修を務めたことで話題を集め、優れた音環境と上質な空間で映画を楽しめる劇場として、多くの映画、音楽ファンに支持されているスポットだ。ここは映画を愛する坂本さんたっての希望で、35ミリフィルムを上映できるシアター8が設けられている。
「Wall Of Eyes, On Film」は、新作アルバムとアンダーソン監督のコラボレーションを讃える企画として1月18日から25日にかけて、シドニーからブエノスアイレスまで世界16カ所の映画館で行われた。日本の会場がこの109シネマズプレミアム新宿、シアター8での開催となったことは、アーティストにとっても、ファンにとっても喜ばしいことだろう。
始めに上映されたのは、「Friend Of A Friend」のアビーロードスタジオ内でのレコーディング風景だ。パフォーマンス中とは異なる、スタジオ内での仕事の模様、メンバーの表情が映し出される。しかし……メンバーが楽器を手にするシーンでも、オーケストラの録音風景になっても無音なのだ。これは上映事故ではないかと、一瞬心配になったがそうではなかった。このサイレント映像を見ることで、一体どんな音が奏でられているのか……と観客の期待が一層高められたタイミングで、アルバム「Wall Of Eyes」全曲試聴が始まった。
1曲ごとに、アートワークを担当しているスタンリー・ドンウッドの絵画を基にしたアニメーションが展開する。柔らかな線、どこか有機的で温かみのある画がスクリーンいっぱいに広がる。「Friend Of A Friend」を始めとした新曲群は、円熟味を増すトム・ヨークの歌声と、立体的で安定感あるギター、鍵盤、リズムの間で響くゴージャスなストリングスにふくよかなアレンジも相まって、目と耳、それぞれから親密さと夢うつつのような味わいを感じ、いつまでもこの空間にとどまっていたくなるような心地よさだった。
そして、本イベントでポール・トーマス・アンダーソンによる「Friend Of A Friend」のMVが初披露となった。この作品は、学校の講堂のような場所で子どもたちの前でライブを行うというものだ。一般的なライブ会場とは異なる場でも、意気揚々と純粋に自分たちの音楽を奏でるザ・スマイル、初めて聴く楽曲に対峙する、子どもたちのうそ偽りのない表情を捉えるカメラ。そして、フィルムならではの深みのある映像を、上質な音響と大スクリーンで堪能できた貴重な時間であった。
そのほか、レディオヘッド、ザ・スマイル関連のMVが上映された。既に公開されているザ・スマイル「Wall Of Eyes」、トム・ヨークの「ANIMA」など過去の作品にさかのぼって連続して鑑賞することで、アンダーソン監督がトム・ヨークの身体性に着目してユニークな演出をしていることなど新たな発見があった。
今回の企画のために、レディオヘッド「Daydreaming」の35ミリフィルムを提供したのは、レディオヘッド、ザ・スマイルの大ファンで、両バンドのカバーバンドとしても活動する大谷泰子さん。2016年に大谷さんはロンドンでジョニー・グリーンウッドのライブ「JUNUN」を鑑賞した際に、レコーディングの模様をアンダーソン監督が記録したドキュメンタリー「JUNUN」の日本での劇場公開を交渉し、実現させたのだ。
その際に託され大谷さんが保管していたレディオヘッド「Daydreaming」MVのフィルムを今回の上映で使用した。「7年半ぶりに上映できてうれしい。素晴らしい音響だった」と喜びのコメント。大谷さんと共に活動する山川靖彦さんは「落ち込んだときに聴く人も多いと言われますが、ダークな世界観だけでなく、素晴らしいクリエイティブとともに人間的な部分も見える」と、カリスマ的人気を誇るトム・ヨークの魅力について語ってくれた。
コアなファンたちの熱気で本イベントは大盛況のうちに終了。会場では音源のほか限定グッズも販売され、グッズとともに記念撮影する人たちの姿も見られた。ザ・スマイル2ndアルバム「Wall Of Eyes」はCD、LP、デジタル/ストリーミング配信で発売中(https://www.beatink.com/)。2024年、新しい年の始まりを豊かな音で祝福するような本作にぜひとも浸ってほしい。
執筆者紹介
松村果奈 (まつむらかな)
映画.com編集部員。2011年入社。
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