「ナポレオン」と「ポトフ」から見る夫婦関係 二村ヒトシと映画.com編集部がトーク
2023年12月26日 19:00
TOKYO FMほか全国38のFM局のオーディオコンテンツプラットフォームで、スマートフォンアプリとウェブサイトで楽しめるサービス「AuDee(オーディー)」 と映画.comのコラボ新番組「映画と愛とオトナノハナシ at 半蔵門」。作家でAV監督の二村ヒトシと映画.com編集部エビタニが映画トークを繰り広げる。
今回はリドリー・スコット監督が「ジョーカー」のホアキン・フェニックスを主演に迎え、フランスの英雄ナポレオン・ボナパルトの人物像を新解釈で描いた歴史スペクタクル「ナポレオン」を中心に、公開中のフランス映画「ポトフ 美食家と料理人」(トラン・アン・ユン監督)も併せ、それぞれの作品で描かれる夫婦関係について語った。
「素晴らしい反戦映画。偉大なナポレオンが(そのイメージが)下がって、戦争のいやらしさを描いている」とエビタニ。二村は「ああいうだめな人をやらせるといいですね。弱者男性の悪の側面が出てくる『ジョーカー』など」「不思議なことに全く飽きませんでした。寝なかったし。見ている人を引っ張る力がある」と、158分の大作であり、主演のホアキン・フェニックスの熱演と巨匠リドリー・スコットの手腕を評価する。
本作はApple TV+製作、近年の賞レース絡みの新作は本編の上映時間が長い傾向にあることをエビタニが指摘し、「配信会社が作っているので、興行収入にこだわらないのかも。劇場の回転数に影響されないので、長くても許容されるのかな」とコメントすると、二村は「リドリー・スコットにはこんなこと言う気はありませんが、アダルトビデオがDVDになってからどんどん長くなっていき、昔は60分、90分で2~3回セックスをするという流れでしたが、今は1日で4時間、その中で5回くらいそういうシーンを入れろ。と。だからAVの監督の編集がどんどん下手になっていくんです…」と、映像監督の立場で配信作が増えたことへの弊害をぼやいていた。
天才的と言われたナポレオンの戦争術を描く一方で、妻・ジョゼフィーヌとの夫婦関係も色濃く映し出される。「出演者も多く、お金もたくさんかけてるのに、話しているのがナポレオンか奥さんばかり」とエビタニ。二村は「歴史上大事をなしたと言われている人の、戦争と夫婦の問題を交互に描いている」「戦争はお金のためにやること。戦争の図面を動かす人、そういう人が家に帰れば奥さんともめている。それが面白い」と評する。
ナポレオンに見初められ、子連れで再婚、ナポレオンと結婚後も浮気を繰り返しながら、皇后として優雅な生活を手に入れるもナポレオンとの子を授かれなかったことから離婚することになり悲しむ妻ジョゼフィーヌ。戦争の指揮をとることは抜群にうまいが、妻を愛しながらも満足させられないナポレオン。
エビタニと二村は夫婦の奇妙な絆を「完全なる共依存」とバッサリ。歴史的な背景や立場からからナポレオン夫妻の心情を想像しあう。そして、同じフランスの夫婦を描いた作品として、二村は「ポトフ 美食家と料理人」を挙げ、「料理界のナポレオンと呼ばれた人の話。『ナポレオン』を見た人に見てほしい。『ナポレオン』は面白かったけれど、夢も希望もない。映画としては『ポトフ』の方が感動した」と感想を述べる。
そして、「ナポレオン夫妻はろくなことをしていないが、『ポトフ』のふたりは周りを幸せにし、子どもがいなくてもその才能は続いていく」と絶賛し、「料理がとにかくおいしそうに映っている映画。男はメニューを考えたり、おいしいものを食べる。実際に手を動かすのは女性。でも男女差別にはなっていないし、男女対等で同じことをしなければならない、という今風のフェミニズムではない。『ナポレオン』は外で戦争をしている男と家にいる妻だった。そこも対照的」と見どころを紹介。エビタニも「ずっとおなかがすく映画。夫婦も重い共依存ではない。彼らはお互いが(自分の領域で)立っていられる」と健全なカップルの在り方を描いている作品として、鑑賞を薦めた。
トーク全編はAuDee(https://audee.jp/voice/show/55260)で聞くことができる(無料配信中)。次回は現在ヒット中のアニメ映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」を取り上げる。
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